合理と犠牲
剣がぶつかる音が、森に響いた。
重い。
受け止めた腕に、鈍い衝撃が走る。
「っ……!」
一歩、下がる。
間合いを取り直す。
三人。
帝国兵は無駄な声を発さない。ただ、確実に包囲を狭めてくる。
『包囲完成まで残り五秒』
「分かってる……!」
息を整えながら、視線を走らせる。
正面一人、左右に一人ずつ。
連携は粗い。だが、数の優位は覆らない。
『正面突破成功率、三十四%』
「低いわね」
『はい』
即答。
そして、わずかに間を置いて——
『別案を提示します』
嫌な予感がした。
「……何?」
『北東二百七十メートルに小規模集落を確認』
一瞬、思考が止まる。
『そちらへ移動した場合、敵の注意が分散されます』
「……それで?」
『戦闘回避確率は七十二%まで上昇します』
淡々とした説明。
だが——その意味は、一つしかない。
「……囮にしろってこと?」
『はい』
迷いのない肯定。
『民間人への被害は発生しますが、貴方の生存率は大幅に向上します』
剣を握る手に、力が入る。
風が、止まったように感じた。
「……却下よ」
短く言う。
『非合理です』
即座に返ってくる。
「そうね」
一歩、踏み込む。
刃を受け流し、距離をずらす。
「でも、それは選ばない」
『理解不能です』
機械のような声。
そこに感情はない。
『貴方の目的は生存では?』
刃が迫る。
身体をひねり、紙一重で避ける。
「違う」
息が荒い。
それでも、言葉ははっきりしていた。
「私は——逃げ延びるために戦ってるんじゃない」
踏み込む。
一閃。
敵の腕を弾く。
体勢が崩れる。
「守るために戦ってる」
沈黙。
ほんの一瞬。
世界が、静止したような感覚。
『……非効率です』
それでも。
どこか、わずかに遅れているように感じた。
「いいのよ、それで」
笑う余裕はない。
だが——迷いはなかった。
三人が同時に動く。
包囲が、閉じる。
「来なさい」
セリスは剣を構えた。
黒い刃が、静かに光を呑む。
『戦術補助を継続します』
いつも通りの声。
だが。
その奥で、何かがわずかに変わり始めていることに——
セリスは、まだ気づいていなかった。
本日も一日お付き合いいただきありがとうございました!
次回は**【本日23時】**に更新予定です。
ノイエが暴走?という展開になりますので、ぜひお見逃しなく。
投稿初日で、すでに多くの方に読んでいただけて感謝の極みです。
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