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噓かもしれない  作者: たかみや汐


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4帰らないかも

「羽奈、本当に帰らないのか」

「うん。寒いから」

「寒いからって、明日も明後日もずっとしばらく寒いって」

「そうかもね」


 羽奈は、楽しそうに答えた。


「どうしてそんな楽しそうにしてる?」

「私、楽しそう?」

「うん、楽しそうに見えるけど」

「そう」


 羽奈は、そう答えてスマホを操作している。遊汰は、次にどんな言葉を発しようか考えていた。







「羽奈、やっぱり帰らない?」

「帰らないって」

「おばさん、おじさん、心配しない?」

「心配しないよ」

「心配しない…」

「だって、お母さんは今日会社のイベントでお泊り。お父さんは、いない」


 遊汰は、羽奈の顔を訝しげにみた。


「父ね、離婚したから帰ってこないの。時々帰ってくるけど」

「あ、ごめん」


 二人は、しばらく沈黙した。羽奈は、スマホを操作していた手を止めていた。







「っていうのは、嘘かもしれないけど、今日泊まらせて」

「'かも’って…」

「本当か嘘かは、遊汰に任せる」

「任せられても…」

「うん、泊まるのはいい?」

「……」


 遊汰は、困惑した表情になった。


「いいじゃん」

「やっぱり、帰って」

「えー」

「俺、送るから」

「送らなくていいから」


 羽奈の足は、部屋のドアではなく遊汰のベッドに向かった。この部屋は、遊汰の部屋だった。


「どうしてそうなる?」


 遊汰の家に来た時、「遊汰の部屋が見たい」と言う羽奈な要望に、素直に従った結果だった。遊汰の母も家にいたにも関わらず、止めもせずこういう結果になった。


「寒いもん」


 羽奈は、既に遊汰の毛布にくるまっている。


「うーん」


 羽奈は、遊汰の毛布を背中に背負ったまま、「おばさーん、今日泊まっていいですか?」と、階下にいる遊汰の母に聞いている。



「羽奈さん、泊まっていいよ。間違えがあってもいいから。羽奈さんの親にも了解ずみだから」




「遊汰、聞こえた?おばさんも泊っていいって」


「はぁ…」


 遊汰は、ため息をついた。


「俺の親は何を思ってるんだが。絶対、羽奈のおばさんに了解も得てないだろうし。」


 羽奈は、遊汰のベッドで、毛布にくるまって寝ている。


「羽奈は、信用度高いよな」


 遊汰は、仕方なくカーペットが引いてある床に横になった。でも、何かを被らないと寒くて、遊汰はすぐ立ち上がった。







「何、してるの?」


 羽奈は、毛布を少し持ち上げベッドを軽く叩いた。


「羽奈、寝てたんじゃないの?」


 遊汰の声を無視して、ベッドをたたき続けた。


「俺に、こっちに来いって?」


 羽奈は、頷いた。


「持ち上げるのも、しんどいのだけど」

「行かないって」

「来ないの、寒いのに。来ないのだったら、これだけあげる」


 遊汰の手元に、何かが飛んで来た。部屋にあった小さめのバスタオル1枚だった。遊汰は、横になってこれ1枚を被り目を閉じてみた。




「やっぱり寒い。無理」


 この部屋は、暖かいといっても何もかけないのは、さすがに寒い。遊汰は、羽奈の方に行った。そして、毛布を引っ張った。羽奈は、寝ているはずなのに、毛布がなかなか遊汰の手元に来ない。


「羽奈、起きてるだろう?」

「ばれた」


 閉じていた羽奈の目が、一瞬できれいに開いた。


「一緒に寝よう」

「一緒に寝ようって、無理っだって」

「遠回しに言うの、面倒になってきた。寝よう」

「'寝よう'…何か、企んでるだろう?」

「企んでるけど、もういいじゃん。寝よう」

「予備の毛布がないか、聞いてくる」


 遊汰は、1階の降りて行った。





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