163話 攻防と油断
アイツの大声が部屋にこだまする。
その反響音が消える前に即座に全身に力を入れ、一歩踏み出した。
「特攻するっ!ドルイさんよろしくっ」
「おう、任されよ」
俺の全速力に遅れてドルイさんが追随してくる。
「ハッハッハァ!ガキぃ威勢がいいじゃぁねぇか!後ろの奴らが邪魔だ、眷属召喚するぜぇ!!」
ヤツの足元に大きな黒い魔法陣が描かれるとそこから筋骨隆々なゴリマッチョ盗賊団が50人ほど湧き出てくる。
むさいゴリマッチョがこんだけ現れるとちょっとげんなりするな。
「テメェら後ろの奴らを片付けろぉ!」
そう命令すると、武器を持った盗賊団は一斉に俺の後方に向かって走り出した。
俺の横を通り過ぎようとした盗賊に向かって拳を入れ、なるべく減らそうとしたが両サイド2人ずつしか倒せず、残りを後ろに逸らしてしまった。
「ごめん!残り頼んだっ!」
「おうッ」
ドルイさんは大きな盾と大剣を構え、盗賊団と戦闘し始める。
「了解!マサトも気ぃつけろよっ!」
後ろから追いついていた中衛のてっちゃんはそう言って迫り来る盗賊団にスピード特攻を仕掛けに行ってくれた。
俺は前に向き直り、ヤツに接近する。
「ガキぃ、あん時の続きやろうじゃねぇかぁ!」
目の前の巨体は戦闘態勢を取り、拳を構える。それに呼応するかのように俺も咄嗟に拳を上げた。
「いくぞっ」
俺は軸足で思いっきり地面を蹴り、近づく。ヤツにボクシングの右ストレートを放つとヤツはそれをカンッと左手に付けたナックルの甲で外側に弾いた後、巨大な右腕でストレートを放ってきた。
そのストレートを俺は左手で右方向にいなす。
ヤツの身体の左外側へ瞬時に周り、空いた顔面へと右フックをかましてやった。
当たる!
と思ったがヤツは咄嗟に膝を曲げて下に回避しながら、しゃがんだと同時に俺の空いた右腹部めがけて太い右足の強烈な中段蹴りを放ってきた。
俺はヤツの身体の重心移動を先に感知し、その蹴りが放たれた瞬間には右フックで放った腕を戻して、腕をグッと固め、防御態勢を取ることができている。
だが、俺の重心が少し後ろにあったせいで、その威力に耐えきれず、後方へ飛ばされる。
ガンッ
ヤツのナックルが俺の防具に当たり、鈍い音と共に俺は3メートルほど吹き飛ばされる。が、態勢を崩すことはなかったので難なく着地できたのだった。
「ガキぃ、まだまだ準備運動にもなってねぇぜぇ?」
「うるせぇ、こっちもだ」
いちいちウザいヤツだ、本当に。
「次はオレからいくぜぇぇ」
奴はニタニタしながらこちらへ向かって走り出す。
〜〜〜〜〜
「ごめん!残り頼んだっ!」
「了解!マサトも気ぃつけろよっ!」
俺は迫り来る盗賊団の間を紙一重で横切り、両手に持った毒ナイフを肌の出ている部分めがけて置いてくる。
この攻撃は威力なんて必要ない。切り傷さえ付ければ大丈夫。ははっ、楽勝だぜっ!
そう気を抜いた瞬間、前方、遠くにいたローブを着た盗賊から数発の魔法が飛んでくる。
やべっ!
一瞬、ヒヤッとするが咄嗟に特大回避、後方へジャンプした。
マジで油断大敵ってやつじゃん、これ。
そんなことを考えていると、ドガンッという轟音が鳴り響き、ローブを着た盗賊は消滅した。
「てっちゃん!今、油断してたでしょ!気をつけなよっ!ホント!」
トシのバーストの矢があの盗賊にとどめを刺してくれたみたいだ。
「お、おう!ありがとなっ!」
マサトに気ぃつけろとか言った手前ちょっと恥ずかった。まじ気ぃ引き締めなきゃな。
「どんどん来るよ!テツヤくんは中央から来る敵をよろしく!左はミーリャ!右は僕が行く!早く倒してマサトくんを援護しに行こうっ!」
ラクトさんの指示が飛び、俺とミーリャさんは再び戦闘態勢に入った。
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