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礼堂と冬月の不完全な作戦『勘違い編』〜10年前死んだロックミュージシャンの謎を追え!〜  作者: A gyousya


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ep.9『黒スーツの男』



野田の「キラキラ☆パラダイス」が終わり、会場には微妙な笑いと軽い拍手が漂う中、礼堂の視線が一人の男に釘付けになる。


その男は、全身黒いスーツに身を包み、視線を鋭く巡らせながら会場内を見渡していた。明らかに場違いな雰囲気だ。


礼堂:(なんだこの男……ジャンク・バスターズのファンって感じじゃないぞ)


礼堂は、近くにいる冬月にこっそり耳打ちする。


礼堂:「おい、冬月……あのスーツの男、なんか怪しくないか?」


冬月:「ん?どこ?」


礼堂が目で合図を送り、スーツの男を示す。冬月もその方向を見ると、眉間に軽くシワを寄せる。


冬月:「あー、確かに……この雰囲気、どう見てもただのファンじゃないな」


礼堂:「だろ?ファンなら普通、もっと和やかに他の人と話したりしてるだろ。あいつ、一人でずっとキョロキョロしてる」


冬月:(このオフ会に何か目的があって来てるのか……それとも単なる不審者か)


礼堂:「なぁ、ちょっとあいつの様子見てみないか?」


冬月:「バカ言うな。目立つ行動はするなっていつも言ってんだろ。まずは観察だ」


礼堂:「観察って……この会場、狭いんだからバレるだろ」


冬月:「だからこそ、自然に動けってことだ」


冬月はそう言うと、さりげなくドリンクを取りに行くフリをして、スーツの男の近くに移動した。


冬月:(さて、あいつ……何者だ?)


スーツの男は気づいた様子もなく、視線を動かし続けている。しかし、その目は野田がいる方向に時折向けられていることに気づく。


冬月:(……野田さんを見てる?目的はなんだ?)


一方、礼堂も不自然に動かないよう気を配りつつ、男を横目でちらちらと観察していた。


礼堂:(あいつ……手に何か持ってる。メモ帳?いや、違う……スマホか?)


男がポケットからスマートフォンを取り出し、何かを入力している。画面をちらりと覗き込もうとする冬月だったが、男はすぐにスマホをポケットにしまった。


冬月:「どうも、ただのファンじゃなさそうだな。しかも、野田さんに興味があるようだ」


礼堂:「野田さんがターゲット……ってことか?」


冬月:「かもしれん。ただ、あまり急に接触しない方がいいな」


礼堂:(何者だ……?このオフ会に忍び込む理由なんてあるのか?)


その時突然、野田がまた会場の中央に立ち上がった。


野田:「よっしゃー!次はみんなで一緒に歌うターンだ!『Junkie Boys Go』の大合唱行くぞー!」


スーツの男がその声に反応し、一瞬だけ口元をゆるめたのを礼堂は見逃さなかった。


礼堂:(……あいつ、野田さんのファンか?)



二人の緊張が増していく中、会場は再び野田の音楽に包まれていく。


再びスーツの男が周りを見渡し、立ち上がりゆっくりと店を出ようとする姿を見て、礼堂はすかさず動いた。


礼堂:「あの〜失礼ですが……何かお探しですか?」


スーツの男は足を止め、ニコリと笑みを浮かべた。


スーツの男:「いや、特に。そろそろ会社に戻らなきゃいけないんです」


礼堂:「そうだったんですね。お忙しい中、本日は来ていただきありがとうございます」


スーツの男:「いえいえ……楽しかったですよ。懐かしい話も聞けましたし」


礼堂:「お時間がない中わざわざありがとうございます。駅までお送りしましょうか?」


スーツの男:「お気遣いなく。会社、近いので大丈夫です。それでは失礼します」


スーツの男は軽く会釈し、店を後にした。


礼堂:(……会社近いって?この辺りにそんなオフィスあったか?)


疑念が晴れない礼堂は、冬月にさりげなく目配せをする。


礼堂:「冬月、お前は店の後片付けやっとけ。俺はちょっと用事がある」


冬月:「……は?お前、人任せにすんじゃねえよ」


礼堂:「後でちゃんと奢るから!頼む!」


冬月:「……はいはい、分かったよ」


礼堂は店を出て、スーツの男を尾行し始めた。


礼堂は少し距離を取りながら、スーツの男を追いかけた。男は特に挙動不審な様子もなく、ただ歩いているだけだった。


しかし、途中で男がスマートフォンを取り出し、誰かに電話をかけるのを見て、礼堂は足を止め、物陰に隠れる。


スーツの男:「……えぇ、普通のオフ会でしたよ。野田さんのギターも聴けたし。よかったです」


礼堂:(……野田さんのギター?ただのファンなのか?)


スーツの男は電話を切り、そのまま歩き続けた。少しして、一つのオフィスビルの中に入っていく。


礼堂:「ここが会社か……?」


オフィスの看板には「リバサイド株式会社」と書かれている。


礼堂:「リバサイド……何の会社だ?」


スーツの男がビルの中に入ったのを確認した礼堂は、そこで尾行を中断し、夜魔に戻ることにした。



礼堂はスーツの男を尾行し終えた後、急いで店に戻った。店内はまだオフ会の熱気に包まれており、ファンたちが和気あいあいと盛り上がっている最中だった。


礼堂:「おう、オフ会まだ盛り上がってるな」


冬月:「遅ぇよ!まぁ、俺の計画通りだしな!みんな楽しそうで良かったじゃん」


礼堂:「いやそれはそうなんだけどさ、ちょっと気になることがあったんだよな」


冬月:「なんだよ、またなんか疑ってんのか?」


礼堂:「さっき、スーツの男を尾行してたんだよ。リバサイド株式会社って会社に入っていった」


冬月:「リバサイド株式会社?」


礼堂:「うん。広告代理店っぽい感じだったけど、あの男がなんでオフ会に来ていたのか、ちょっと引っかかるんだ」


冬月:「ふーん、気になるってことはもしかしたら何か絡んでんのかもな。でも、今はオフ会だろ?それよりちゃんと楽しもうぜ」


礼堂:「あぁ、もちろんだ。でも後でちょっと調べてみる必要がありそうだな」


その後もオフ会は続き、参加者たちは盛り上がりながら次々と席を立っていった。礼堂と冬月もその後、帰宅した。

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