ep.62『Brass in Pocket』
夜の街灯が白く照らす中、女性はサングラス越しに二人を見据えていた。
沈黙の中、礼堂が話を切り出す。
礼堂:「突然驚かせてすみません。お話を聞かせて頂きたいのですが…。」
女性:「あなた達誰? いきなりなんなのよ。
あなた達と話すことなんかないけど。」
冬月:「いいですかお姉さん!
まず人と話す時はそのサングラスを取ってください。失礼ですよ。そしてその顔を僕に見せ――」
パシン!!ーー。
礼堂が冬月の頭を叩く。
礼堂:「お前は顔見たいだけだろ!!」
冬月:「いてっ!バカヤロウ!捜査に必要な情報だ!」
女性:「は? 失礼なのはどっちよ。いきなり押しかけてきて。」
礼堂:「本当すみません。あまりお時間を取らせてもあれなので単刀直入に聞きます。
あなた――ジャンク・バスターズの“ボウさん”と面識ありますよね?」
女性の動きが一瞬止まった。
その微細な反応を、礼堂は見逃さない。
女性:「……何それ? 知らないけど。私、急いでるので失礼させてもらうわ。」
女性が歩き出そうとしたその時、
サングラスがふっと外れ宙に舞う。
末吉:「ホイホイ作戦……成功かな?」
女性の後ろには、ニコっと笑いながらキャッチしたサングラスを掲げる末吉の姿。
礼堂:「えっ!」
冬月:「おー!」
一瞬の沈黙。
そして、二人の表情が“確信”へと変わる。
礼堂:(マジかよ……。)
冬月:(紗和さんに激似やんけ!)
女性は末吉を見て、明らかに動揺を見せた。
だがすぐに表情を引き締め、サングラスを奪い返して強い口調で言い放つ。
女性:「とにかく!! 私は何も知らないから!」
末吉:「さっき、“生き返った?”って言ってたよね?」
女性は下を俯き、唇を噛みしめながら苛立った表情を浮かべる。
礼堂は一歩踏み出し、覚悟を決めたように問いかけた。
礼堂:「川端さんに会いに行くんですよね?」
女性:「なっ……! あんた達、何者なの?」
礼堂:「とりあえず話だけでも聞かせて下さい。
聞かせてくれるまで行かせませんよ。」
女性はため息をつき、ゆっくりとカバンから携帯電話を取り出す。
無表情のまま、どこか冷たい声で言った。
女性:「分かったわ。その代わり、あの人にも来てもらうから。」
そして電話をかけ、短く事情を伝える。
女性:「……えぇ。はい。うん。分かったわ。じゃあね。」
電話を切ると、再び3人を見回した。
礼堂:「川端さん来るんですか?」
女性:「家に来てちょうだいって。……あなた達、名前は?」
冬月:「どうもお姉さん、冬月です。必ず覚えて帰ってくださいね!」
女性:「ムリ。」
礼堂:「礼儀の“礼”に、国会議事堂の“堂”と書いて“らいどう”って言います。」
女性:「ずいぶんお堅い名前ね。
女性をストーカーするなんて、あなた名前と真逆の行動してるわよ。」
末吉:「末吉です。どうぞよろしく。ふふ。」
女性:「ふふ。じゃないわよ。何そのコスプレ。」
礼堂と冬月は顔を見合わせ、同時に心の声が漏れる。
礼堂&冬月:(紗和さんと性格全然ちげぇ〜!真逆じゃねーか!)
そして同時に末吉の心の声も漏れる。
末吉:(...泣いていいかな?)
一瞬の沈黙のあと、冬月が改まったように問いかける。
冬月:「お姉さん、お名前は?」
女性は数秒黙り、わずかに視線を下げた。
夜風が髪を揺らし、彼女の瞳がわずかに光る。
やがて――
女性:「……霧島。霧島ルリよ。」
夜風が通り抜け、3人の間に沈黙が落ちる。
その瞬間、礼堂の心臓が小さく跳ねた。
“紗和に瓜二つの女――霧島ルリ”
捜査は次のステップへ動き出そうとしていた。
霧島ルリ(きりしま・るり)
•服装はシックで大人びており、サングラスをかけていることが多い。“紗和”を思わせる整った顔立ちをしているが、話す印象はまるで逆。
冷たい美しさと、他人を寄せつけない雰囲気を併せ持つ。




