ep.57『BAD FEELING』
数日後、昼下がりのオフィス。
富士田はデスクの下でスマホを握りしめ、落ち着かない様子で文字を打ち込んでいた。
そして数秒後、グループチャットにメッセージを送る。
富士田:【社長に動きがあった。】
スマホ画面を見ていた礼堂がすぐに反応する。
背筋を正しながら短く返信を打つ。
礼堂:【本当か?】
その直後、冬月から勢いのある返信が飛んでくる。
スマホを覗き込む礼堂の画面にメッセージが飛び交う。
冬月:【川端アニキなんだって!?】
少し間を置いて、富士田が続きを送る。
その指は汗で滑りそうになりながらも必死だった。
富士田:【誰かと会う約束してる。社員とか取引相手ではなさそう。】
礼堂の表情が険しくなる。
心臓の鼓動が速まるのを感じながら、即座に返信する。
礼堂:【今日集合できるか?】
それに被せるように冬月が送る。
冬月:【ウチこいよ!録音データ持ってな!】
富士田は眉をひそめ、文字を打つ。
富士田:【おれ冬月の家分からないぞ。】
冬月:【後で住所送っとくよ!】
礼堂は冷静にまとめるように返した。
礼堂:【何時に来れる?】
富士田は時計を確認しながら考え、すぐに答える。
富士田:【20時くらいかな。】
礼堂:【じゃあ20時半に冬月の家集合で!】
こうして、緊張感の走るやり取りはあっという間にまとまった。
それぞれのスマホ画面が暗転する頃には、もう夜の動きに備えて心の準備が始まっていた。
その夜、冬月宅ー。
カーテンは閉め切られ、テーブルの上にはPCと缶ビール、そして富士田が持ってきたUSBが並んでいた。
3人はソファに腰を下ろすと、すぐに本題へと入った。
礼堂:「富士田、よくやったな。」
冷静な声で礼堂が労うと、冬月がすかさず茶々を入れる。
にやけながら缶ビールを掲げて。
冬月:「すげーよ。何がすごいってクビになってないのがマジですげーよな。」
富士田は暗い表情を浮かべ、肩を落とす。
富士田:「ホントにな。無茶振りにも程があるよお前ら。」
礼堂:「盗聴データは持ってきたか?」
その言葉に、富士田は思わず眉をひそめ、小さな声でツッコむ。
富士田:「やめろその言い方。犯罪者みたいやろが。」
礼堂:「いやいやすまん。まぁ実際バレたらヤバいよなこれ。ははは!」
富士田は渋々ポケットからUSBを取り出す。
富士田:「はいこれ。データ。」
冬月が勢いよく受け取り、まるで儀式のように掲げる。
冬月:「よし!それではこれから、データ再生の儀を行う!まず、儀式を行う前に我を神として崇め、深めに一礼せよ!」
呆れた表情の礼堂がマウスを操作しながら、軽く頭を下げるフリをする。
礼堂:「神よ。ははぁ〜!」
画面が切り替わり、そのまま勝手に再生が始まる。
冬月:「またこれかよ!」
礼堂:「お前が始めたんだろ。」
富士田はため息をつきながら、缶ビールを一口飲む。
富士田:「お前らはホント変わらないなー。」
ーー盗聴データ再生。
スピーカーから川端の低い声が流れる。
川端:「えぇ。そうですね。こちらはなんとも。まぁ証拠なんて出てくるわけもない。」
礼堂と冬月は、驚きに目を見開き互いの顔を見合わせた。
川端:「えぇ。しかし事件を嗅ぎ回っている彼らがこれからどういう動きを見せるのか。こちらとしてもどう立ち回ればいいのか。また打ち合わせできたらと思います。来週の土曜日20時に会えますか?えぇ。そうですか。では21時でお願いします。家の近所に飲み屋があるのでそこで話しましょう。とりあえず家まで来ていただければ。はい。ではまた。」
無機質に再生される声。再び室内は静寂に包まれた。
礼堂は唾を飲み込み、ゆっくりと口を開いた。
礼堂:「おい、、。富士田。。これ。。」
冬月:「こんなもん。犯人確定じゃねーかよ!!」
富士田は苦々しい表情を浮かべる。
富士田:「俺も正直聞いたとき。驚いたしショック受けたよ。なんだかんだ社長って良い人だなって思ってたからさ。」
冬月:「ただ、おかしくね?『事件を嗅ぎ回ってる彼ら』ってあれ俺たちのことだよな?」
礼堂:「それは正直俺も思った。考えながら聞いてたよ。どこでバレたんだ?って。」
冬月は眉をひそめ、富士田を指さす。
冬月:「おい富士田!!お前まさか!魂売りやがったな!?」
富士田:「えぇ!!俺!?いやいや!俺言ってないから!マジで知らないよ!」
礼堂は腕を組み、冷静に言う。
礼堂:「あんなオフ会やったり、怪しんでるんだろたぶん。知らない間にチェックされてるかもな。」
冬月:「まぁ社長やってるし、頭も切れるだろうしな。」
礼堂は深く頷き、真剣な表情を浮かべる。
礼堂:「でもこっちとしては、かなり重要な証拠を掴んだよ。ありがとう富士田。」
富士田:「あぁ。なんかとても複雑な気分だ。」
礼堂:「来週の土曜日か。よし、これから作戦会議だ!」
富士田は腕を組んで唸りながら、不安げに問いかける。
富士田:「ひとついいか?仮に社長が犯人だとして、
それを暴いたら、クビどころか会社自体終わるんじゃないか?」
礼堂と冬月は顔を見合わせ、同時に声を漏らす。
礼堂 & 冬月:「お、、、おう。」
礼堂と冬月は会社崩壊を恐れる富士田を気遣いながら、作戦会議に明け暮れた。




