表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/63

ep.56『Tonight, Tonight』

その日の夜、『夜魔』のテーブル席で礼堂と冬月はグラスを傾けていた。

店内はほどよく賑わっていたが、二人の周りだけ妙な緊張感が漂っている。


冬月:「早く来ないかなぁ〜!」

礼堂:「なぁ、富士田のやつちゃんと盗聴できてるかな?」


冬月はグラスの氷をカランと鳴らしながら、どこか軽い調子で答える。

冬月:「できてるできてる!問題ないだろ!」


礼堂:「全然興味ねぇのなお前。」


しばらく待っていると、入口のドアが開き、紗和が柔らかな笑顔で姿を現した。

店内の視線が一瞬そちらへ集まる。


紗和:「お疲れ様〜♪」


礼堂&冬月:「お疲れ様です!」


紗和は軽やかに歩み寄り、席に腰を下ろす。

紗和:「もう少ししたら来るみたいだからちょっと待っててね!」


冬月:「来るって他に誰が来るんだ?」


礼堂はにやりと口角を上げる。

礼堂:「ん〜?まぁ…特別ゲストだ!」


紗和:「ふふっ♪」


彼女の口元に浮かんだ微笑みは、どこか含みのある柔らかさを帯びていた。

礼堂も自然とつられて笑みを返し、二人だけで小さな秘密を共有したかのような空気が漂う。


その様子を横目で見ていた冬月は、グラスを持つ手をぎゅっと握り、眉をひそめて小声で毒づいた。


冬月:「何隠してんだよ!お前が紗和さんと何かを共有するのやめろ!!」


数分後、再び扉が開く。

そこに立っていたのは、ジャンク・バスターズの元メンバーである田村と横山だった。

二人は少し気恥ずかしそうにしながらも、懐かしい雰囲気を漂わせている。


紗和:「2人とも久しぶり〜♪」

田村:「久しぶりだね紗和ちゃん!」

横山:「紗和ちゃんお久しぶり。」


礼堂はすぐに立ち上がり、深々と頭を下げた。

礼堂:「お二方ともお忙しい中すみません。よくおいで下さいました。ありがとうございます!」


冬月は目を丸くしながら声を上げる。

冬月:「え!?ジャンク・バスターズの田村さんと横山さん!?」


田村:「君若いのによく分かるね〜!俺達地味なのに。」

横山:「ホントだね。街でも全然気づかれないぞ俺達。」


冬月:「いえいえそんなご謙遜を!ライブの映像よく見させてもらってましたから分かりますよ!」


紗和は悪戯っぽく笑みを浮かべ、冬月を見やった。

紗和:「冬月くんすごいわね〜♪私の顔は忘れてたのにね♪」


冬月は慌てて両手を振る。

冬月:「ははは!紗和さんまたまたご冗談を!

自分が紗和さんの圧倒的なビジュアルを忘れるなんて、そんなことあるわけがないですよぉ!」


紗和は小さく笑ってから、二人を紹介する。

紗和:「ふふふ♪こちらが礼堂くんと冬月くん。この間電話でも話したけど、あの日のことを詳しく聞かせてほしいって。」


礼堂は姿勢を正し、改めて真剣な表情で口を開く。

礼堂:「辛い記憶を思い出させてしまい申し訳ないですが、是非聞かせて頂きたいです!よろしくお願い致します!」


田村:「全然構わないよ。勿論思い出したくない記憶ではあるけれど、力になれるのなら是非。」


横山:「ボウと紗和ちゃんのためでもあるし、協力させてもらうよ。」


礼堂達は二人の言葉を一字一句逃さないよう、真剣にノートへ書き留めていった。

店内の喧噪とは対照的に、そのテーブルには張り詰めた空気が漂っていた。


横山:「..........それでさ、ライブ後打ち上げしようとしたんだけど、ボウが疲れてるから打ち上げはまた後日になったって話を聞いて、そしたらあんなことになってしまって。。。」


田村はグラスを見つめたまま、低い声で付け加える。

田村:「あの日打ち上げやってたらな。こうはなってなかったかもしれない。」


礼堂:「そうだったんですね。なかなか悔しいですね。」


田村は苦笑しながら肩をすくめる。

田村:「まぁでも、あの日は俺達も疲れてたし打ち上げやっててもみんなどうせすぐ寝てたよ。」


横山はグラスを揺らしながら、少し遠くを見つめるように言葉を落とした。

横山:「珍しいよな。ボウも野田っちも疲れて打ち上げしないなんて。本当にバンドが終わったんだなってのを感じたよ。」


その言葉に、場の空気が一瞬しんと静まり返る。

冬月は眉をひそめ、手元のグラスをじっと見つめながら呟いた。


冬月:「ボウさんも苦しかったのかな、、、。」


重い空気を和らげるように、田村が柔らかく笑って口を開いた。

田村:「でもな、ボウはなんか楽しそうだったけどな。あの日はずっと。キラキラしてたよ。」


横山も頷きながら続ける。

横山:「実はそれ俺も思ったよ。まぁでもあいつなりに気遣ってたんだろう。精一杯空元気振りまいてたんだな。」


礼堂は二人の言葉を噛みしめ、深く頷く。

礼堂:「そうだったんですね。」


紗和が軽くため息をつきながら、優しく場を締めるように微笑んだ。

紗和:「あの人結構繊細なとこあるしね〜。あら。なんかもういい時間ね。話も聞けたしもうそろそろお開きにしましょうか?」


礼堂は時計を見て、改めて時間の流れに気づく。

礼堂:「いや〜結構時間経ちましたね!田村さん横山さん!長い時間ありがとうございました!復活ライブの方もよろしくお願いします!」


田村は礼堂の言葉に力強く頷いた。

田村:「こちらこそありがとう!頑張ってね!」


横山は軽く笑みを浮かべてグラスを置いた。

横山:「頑張るのは俺達もだけどな!よろしくね!」


そう言って横山がグラスを飲み干すと、場の空気も自然と区切りがついたように落ち着いていく。

田村と横山は席を立ち、軽く手を振りながら出口へ向かう。


田村:「じゃあ、またライブのリハで会おう。」

横山:「準備、頑張ってくれよ。」


紗和も立ち上がり、2人を見送るように笑顔で軽く会釈する。

礼堂と冬月もそれに倣い、深々と頭を下げた。


礼堂は深呼吸をして、ぽつりと呟く。

礼堂:「……頑張ろう。」


冬月は頷きながら、店の天井を仰いだ。

冬月:「復活ライブに向けて、いよいよ本格的に動き出すんだな。」


こうしてその夜は、お開きとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ