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ep.55『人にやさしく』

後日ーー。

昼下がりの社内。

富士田は両手で大事そうに花瓶を抱え、落とさないよう細心の注意を払いながら社長室の前に立っていた。

深呼吸を一つ。ドアをノックしてから、緊張した面持ちで部屋へと足を踏み入れる。



富士田:「しゃ、、社長。おはようございます。」


川端:「おぉ富士田くんおはよう。

珍しいな。。どうしたんだ花瓶なんか持って。

何かいいことでもあったのか?」


富士田は喉がカラカラになるのを感じつつ、無理やり笑顔を作る。

手にした花瓶をそっと机の上に置きながら言葉を続ける。


富士田:「い、、、いえ。こちらジンチョウゲといいまして。『栄光』とか『勝利』といった意味があるみたいなんです。」


川端は花瓶に視線を落とし、少し目を細める。

その口調はいつも通り落ち着いていた。


川端:「なるほど。。。プロジェクトの願掛けか。」


富士田:「まぁ、私もデスクに飾りたいのですが、色々と物が置いてありまして。

この間お邪魔させて頂いたお礼も含め、是非飾って頂けたらと思いまして。」


川端:「そうか。律儀にすまないな。」


富士田:「いえ!必ずプロジェクト成功させましょう!」


川端:「そうだな。そういえば彼らは元気かな?…とはいってもあの時君が1番辛そうだったが。」


川端の一言に富士田の背筋がピンと伸びる。思わず声が大きくなる。


富士田:「その節はすみませんでした!

アイツらは変わらず元気です!

社長のコレクション見せて頂いて、とても喜んでましたよ!」


川端は小さく頷き、書類に目を移した。


川端:「なら良かった。」


富士田:「またプロジェクトの件で伺います。それでは仕事に戻ります。」


川端:「うん。よろしく頼む。」


社長室を出た瞬間、富士田は冷や汗を拭い、胸をなでおろした。

足早に廊下を進みながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。指先は緊張で震えていたが、素早く画面をタップする。


富士田:【とりあえず盗聴器仕掛けたよ。】


送信を終えるや否や、通知音が立て続けに鳴った。

礼堂と冬月とのグループチャットに既読がつき、すぐに返信が流れてくる。


冬月:【さすがは仕事人!】

礼堂:【でかした!!】


労いの言葉に、富士田は思わず背もたれに体を預けて安堵の息を漏らした。


礼堂:【どうやって仕掛けたんだ?】


富士田:【この間お邪魔させてもらった感謝の気持ちも込めて、花瓶を持ってったんだ。

その花瓶に細工して盗聴器を仕込んだ。細工できそうな花瓶探すのも一苦労だったよ。】


冬月:【感謝の気持ちが盗聴って、君は人の心がないんか?】


その返事を見た瞬間、富士田のこめかみがピクッと動く。

思わずに拳を強く握りながら返信する。


富士田:【じゃあ花瓶取り返してくるよ!】


送信ボタンを押した直後、スマホがブルッと震える

冬月:【うそうそ!ナイスプレー富士田!!】


まるで待ち構えていたかのように、冬月から即座に通知が飛び込んできた。


富士田:【録音機能もついてるから、確認しながら動きがあったら連絡する!】


礼堂:【分かった!ありがとう!】

冬月:【サンキュー!!】


画面に流れる文字を見つめながら、富士田はようやく肩の力を抜いた。

軽く深呼吸し、スマホをしまうと、何事もなかったかのように自分のデスクへと戻っていった。

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