ep.54『Every Breath You Take』
礼堂は2人と別れ、駐車場へ向かって歩いていた。
ランチ後の昼下がり、まだ街は明るく、人通りも多い。
すると突然、背後から声をかけられた。
「ちょっとそこの君、待つんだ。」
低く落ち着いた中年男性の声。
礼堂は不審がり、歩くスピードを少し上げた。
しかし声は段々と近づき、さらに大きくなる。
「君、通報するよ!」
礼堂は立ち止まり、仕方なく振り返る。
そこには白髪交じりでダンディな雰囲気を纏い、
休日のようなカジュアルな服装をした男が立っていた。
昼の光を受けて、笑みを浮かべながらこう言った。
男性:「まぁ、通報すると言っても……警察は俺なんだけどねぇ。ふっふっふ。」
ポケットから警察手帳を見せながらにやける男。その不自然な軽さに、礼堂はますます怪しみを募らせる。だが明らかに自分へ向けられた言葉だと分かり、無理にでも笑顔を返して応じた。
礼堂:「警察官の方ですか!!
いつも日本の平和のために頑張っていただきありがとうございます!応援してます!それでは私は仕事がありますので!」
そう言って身体を翻し、立ち去ろうとする。
だが、男は慌てることなくさらに声を張った。
男性:「よし!じゃあ君は逃亡ってことで公務執行妨害により逮捕だ!今から連行する!」
そう言うなり、礼堂の肩に手を置いてきた。
礼堂は心底慌てて、弁明を繰り返す。
礼堂:「ま、待ってください!!状況が掴めないのですが!?日本って歩いているだけで逮捕されるんでしたっけ?
いや〜、さすが日本の警備体制は世界一だな〜。
ただですね!
私は何も法に触れることはしていません!きっと何かの間違いですよ!」
男性:「警備なんかしてないよ〜。たまたまカフェでお茶してたらさ、ベラベラと盗聴だなんだって聞こえたからさ〜。テロリストかなぁ〜なんて。国家転覆は1番罪が重いからね〜。」
礼堂は引きつった笑顔で必死に言い訳を並べた。
礼堂:「い、いや〜!さっき同席してたメガネの男性がね!
俺全然アイツのこと知らないんですけどね!
なんかいきなり盗聴だとか、一大プロジェクトとかおかしなこと言いやがってですね!
最近は物騒な世の中なんでね!ああいうヤツとは関わらないのが一番ですよね!
なんだ〜、あれ警察の方が見ててくれたのか〜。
犯人分かったので、これは一安心ですね。
なんか俺まで日本救った気分ですよ!ある意味連携プレーですね!ハハハハ!!
いっそ俺も警察官にでもなろうかな〜!」
長い言い訳を言い終わった礼堂は、
引きつった笑顔のまま、やんわりと敬礼をする。
男性:「あれ?君偉そうにそのメガネ君に指示してたよね?
確実に首謀者だよね?」
ジロジロと礼堂を観察していた男が、不意に「あっ」と声を上げ、驚いた表情を見せる。
男性:「あれ!?君、、どこかで、、
あっあれだ!
ジャンク・バスターズのオフ会仕切ってたよね?」
その言葉に、礼堂も目を見開いた。
礼堂:「えっ!!あのオフ会にいたんですか!?」
男性:「おぉ!いたぞ!久しぶりに野田さんのギターも聴けたしな!あれは楽しかったよ!」
礼堂:「そうですか!それはご参加ありがとうございました!
ところで、、失礼ですが、お名前はなんとおっしゃるんですか?私は礼堂と申します!」
男性:「おぉ!悪かったな!名前も名乗らず!
俺は生麦といって、刑事をやってるんだ!」
礼堂:「刑事さんでしたか!でも刑事さんってもっとキッチリした服装じゃないんですか?」
生麦:「礼堂くんさぁ、それはドラマの見過ぎだよ。普段は刑事ってバレないような格好するのが基本だよ。」
礼堂:「そうなんですね!知らなかったです!」
生麦:「ところでさ、オフ会といいさっきの盗聴といい、何か良からぬことでもしてるのかい?礼堂くん。」
礼堂:「いえ、オフ会の件はジャンク・バスターズのファンとして、そしてさっきの会話は実際にやる訳ではなく、あのメガネ君が社長に文句があるからって、妄想で仕返しの方法を考えてただけなんです。ですから、あまりあの会話自体に意味はないですね。」
生麦:「、、、そうか。いや〜、実は俺もな、ジャンク・バスターズに熱狂していたファンの1人なんだ。
ボウの事件知ってんだろ?礼堂くんなんか知ってるじゃないかと思ってな。怪しいんだよ。ボウの事件扱ってる変なサイトもあるしよ。
この世にはな、解決されてない事件なんてごまんとあるが、個人的にこの事件だけは俺が刑事やってる間に解決してやりてぇんだ。ボウの為にも、ファンの為にもよ。」
礼堂はその言葉に心を揺さぶられ、真剣な顔になる。
一瞬の沈黙の後、何か閃いたように口を開いた。
礼堂:「ちなみになんですが、その当時の資料って、まだ残ってたりするんですか?」
生麦:「あぁ。しっかりと管理してるよ。
まぁただ、その情報だけでは犯人を炙り出すどころか、大したことは何も掴めなかった。」
礼堂は覚悟を決めたように背筋を伸ばし、胸の内を明かした。
礼堂:「生麦さんすみません。
俺、嘘をついていました。
実はですね、俺だけでなくさっき一緒にいたアイツらも含め、ボウの事件を追ってます。
2ヶ月後にジャンク・バスターズの復活ライブを行う予定なんですが、それまでに解決するつもりです。というか、解決できなければそこでもう事件を追うのは辞めるつもりです!」
生麦:「な、、なんだと!!復活ライブ!?ていうかなんで君達が事件追ってるんだ!?」
動揺する生麦。
だがすぐに冷静さを取り戻すと、名刺を差し出した。
生麦:「なるほど。まぁ色々と理由がありそうだな。
ほらこれっ、俺の名刺だ。
続きはまた今度署で聞こう。君達も何かしら掴んでるんだろうし、署に資料もある。復活ライブまでに事件解決しようじゃないか一緒に。連携プレーだ。」
礼堂:「ありがとうございます。これ私の名刺です。」
生麦:「署に来れるときは一報くれ。あと、この事件のことはあまり他言しないよう頼むよ。特に警察関係者には。もう終わった事件になってるからな。俺が勝手に動くだけだから。」
礼堂:「分かりました!生麦さんがいたらとても心強いです!」
生麦:「おうよ!ではまた!」
礼堂:「またよろしくお願いします!!!」
会話を終え、礼堂は駐車場の精算機に表示された料金を見て、肩を落とす。
礼堂:「都内はやっぱ高いな。。」
生麦刑事
•外見:白髪まじりの短髪で、無精ヒゲが少し残っている。スーツ姿の時もあるが、私服はラフなシャツやジャケットを好む。
•性格:一見すると冗談好きで軽い印象を与えるが、内心は非常に観察力が鋭く、刑事としての勘が冴えている。
•口調:軽妙でコミカルな言い回しを好み、わざと人を驚かせたり煙に巻くような発言をすることが多い。ただし核心に迫るときは一転して鋭い言葉を投げる。
・ジャンク・バスターズの大ファン。




