ep.52『環七フィーバー』
翌日ーーー。
リビングには薄暗い昼の光がカーテン越しに差し込み、酒の残り香がまだ漂っている。
礼堂:「ふぁ〜、、あ、、ふぅ。」
ソファに体を沈めながら、礼堂はあくび混じりに声を漏らした。
野田:「礼堂くんおはよう。もう昼だけどな。」
礼堂は目をこすりながら周囲を見回す。見慣れない内装に軽く混乱した様子を見せた。
礼堂:「あっ、、、あれ?おはようございます!ここどこですか?」
野田はマグカップを片手に笑う。
野田:「マイホームだよ。」
礼堂:「なんで野田さんの家に?あれ?昨日夜魔で飲んでて、、、、あれ?、なんか酔いすぎて記憶がないですね、、。」
野田は深く椅子に腰を下ろし、肩をすくめた。
野田:「俺も記憶は曖昧だが、気づいたら3人で家にいたな。」
礼堂は慌てて立ち上がり、頭を下げる。
礼堂:「す、、、すみません!すぐに帰りますね!ご迷惑おかけしました!、、ん?3人ってあと誰ですか?」
野田は顎をしゃくって指差す。
野田:「そこで寝てるよ。君の相棒が。」
礼堂:「冬月か!申し訳ないです!俺らいい歳してホント情けない、、、、。」
野田は大笑いし、場の空気を軽くした。
野田:「いや、いいんだ。みんなこうなってるってことはきっと昨日は楽しかったんだろう。ハッハッハ!まぁゆっくりしていきな!」
その声に反応するように、ソファに突っ伏していた冬月が身じろぎした。
冬月:「ん、、、んん、、ふぁ〜!」
礼堂:「おい冬月〜。俺ら酔って野田さんの家まで来ちゃったぞ。迷惑になる前に帰ろう。もう手遅れだけど。」
冬月は頭を押さえ、苦笑する。
冬月:「いや〜。頭いて〜。でも俺はちゃんと記憶あるよ。」
礼堂:「それいつもの張り合いだろ?いいよそういうの。」
冬月:「いや今回はホントに記憶ある。珍しくお2人さんとも暴走してたからね。」
礼堂は眉をひそめる。
礼堂:「そっか。。。。え?まじ?」
冬月:「マジだよ。絶対ライブ成功させましょう!とか言って飲みまくってたからな。」
礼堂:「そうか。悪い全然覚えてないや。」
野田は苦笑して頭をかいた。
野田:「それはすまんかったな。」
冬月:「いえいえ。まぁ紗和さんは酔ってる2人見て引いてましたけどね。」
礼堂&野田:「まじか〜、、、、、。」
少し間が空いたところで、冬月が思い出したように口を開いた。
冬月:「ところで野田さん!昨日、ボウさんの着てた革ジャン見せてくれるって言ってましたよね?」
野田は目を丸くしたが、すぐに苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
野田:「冬月くん、そんなの覚えてないよ〜。
けどまぁ、せっかくだし見せてやるか!
……売るなよ!? ちょっと待ってろ、今クローゼット整理してくるからよ!」
冬月:「売りませんよ。夜魔さんじゃあるまいし!」
半ば強引に立ち上がった野田が、二人をクローゼットへと案内する。扉を開けると、革特有の匂いがふわっと漂った。
野田:「見ろ!これが俺のレザーコレクションだ!」
ハンガーに整然と並ぶジャケットの数々に、冬月は目を輝かせた。
冬月:「あっ!これですか!?ボウさんの革ジャン!! 川端アニキのポスターのボウさんも、これ着てたんだよな〜!
……ってあれ?
後ろにジャンク・バスターズのロゴパッチがある!カッコいい!カスタムしたんですかこれ?」
野田:「カッコいいだろ〜。でもそれは俺のお気に入りだ!ボウのはこっちだ。」
そう言って野田は、一着だけ丁寧にカバーをかけられたジャケットを取り出した。
ビニールをゆっくりと剥がし、まるで宝物のように両手で抱える。
礼堂&冬月:「うわ!これすげぇ!しかもかなり状態キレイだぞ!!」
野田は鼻を鳴らし、得意げに答える。
野田:「しっかり磨いてるからな!」
冬月は興奮気味に身を乗り出した。
冬月:「野田さん、これってあのライブで〜」
その横で、礼堂は黙って考え込んでいた。やがて顔を上げ、真剣な声で切り出す。
礼堂:「野田さん!!その……野田さんのお気に入りの方、ライブまで借りれませんか?」
野田:「は?どうしたんだ急に?それ、復活ライブで俺が着ようと思ってたんだが。」
礼堂:「いや、というのも末吉さんにこれを着てもらいたくて。メイクや演出で、できるだけボウさんに近づけたいんです。この革ジャンがあった方がイメージがぐっと伝わりますから!」
野田は一瞬言葉を失い、眉をひそめた。
野田:「……それなら、こっちの本物の方が良いんじゃねぇか?」
礼堂は首を横に振る。
礼堂:「いや、そっちは野田さんが着てください。野田さんがボウさんの魂を引き継いで、復活ライブを成功させるんです!」
野田は数秒黙り込み、視線を革ジャンに落とした。やがて小さく頷き、俯いたまま答えた。
野田:「……分かった。その代わり、ボウ本人かと思わせるくらいに頼んだぜ。」
礼堂:「野田さん、ありがとうございます!こちらももちろん丁寧に扱いますんで!」
野田:「よろしくな。それは俺の一番のお気に入りだから。」
冬月は興奮冷めやらぬ様子で、革ジャンを手に取りかけた。
冬月:「一旦俺、着てみていいですか?」
礼堂は即座に冬月の頭を小突いた。
礼堂:「バカか!ダメに決まってるだろ!」
場が和んだところで、礼堂は深々と頭を下げた。
礼堂:「それじゃあ野田さん。これ以上ご迷惑かけるわけにはいかないので、この辺で俺たちは失礼します。」
野田:「おぅ、そうか……また飲もうな!」
礼堂:「ぜひまたお願いします!お邪魔しました!」
冬月:「野田さん、ありがとうございました!」
二人はしっかりと別れの挨拶を済ませ、野田の家を後にした。外の空気に触れた瞬間、張り詰めていた緊張がふっと和らいでいった。
礼堂は歩きながら、ふっと口元に笑みを浮かべた。
冬月:「なぁ礼堂。何笑ってんだ?気持ち悪いぞ。」
礼堂:「え?バレたか。いやさ、これで話が聞けるかもしれない!あと2ヶ月で犯人捕まえなきゃいけないからな。でもだいぶ近づける可能性見えたよ。」
冬月は驚いて立ち止まる。
冬月:「え!?お前諦めてなかったの?」
礼堂:「当たり前だろ!!お前諦めてたのかよ?」
冬月:「いや〜。2ヶ月しかないしもう復活ライブやって終わりなのかと思ったよ。」
礼堂は足を止めず、真っ直ぐ前を向いた。
礼堂:「いやいや、俺達はちゃんと犯人探ししなきゃだろ。ちゃんとみんなに役割伝えたし。」
冬月:「あっ。ていうかさ、富士田配信お願いしたけどさ、結局アイツ盗聴もするんだろ?」
礼堂は思い出したように小さく頷いた。
礼堂:「あ〜。そうだな。あいつは配信兼捜索隊だ。あとで忘れないよう言っておくか!」
その後二人は冗談を交わしながら、それぞれの家路についた。




