表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
礼堂と冬月の不完全な作戦〜愛は勘違い編〜  作者: A gyousya
川端宅へ潜入!?
44/59

ep.44『Day Tripper』

4人は夜の街を歩いて川端宅へ向かった。


静かな住宅街の一角にあるその家は、落ち着いた一軒家。玄関を入ると、すぐにヴィンテージな家具とシンプルな装飾が目に入る。川端は気取らない様子で靴を脱ぎながら、3人を中へと案内した。


川端:「一応、こんな感じかな。」


そう言って案内された一室は、床から天井までレコード棚で埋め尽くされた、まるで音楽図書館のような空間だった。


冬月:「え!!!すご!!!」

冬月が思わず声を上げる。視線は釘付けのまま、目の前にあるレコードの背表紙を一枚一枚確認する。


川端:「まぁ、頑張って色々集めたよ。」

川端がそう言うと、冬月はまるで少年のような瞳で頷いた。


一通り部屋を見終えたあと、川端は別の部屋の扉を開けた。そこは、ジャンクバスターズのグッズで埋め尽くされた空間だった。


壁にはボウの特大ポスターやライブ写真、ガラスケースにはピックやCD等整然と並べられている。


礼堂はボウのポスターを見ながら、独り言を呟く。

礼堂:「すげぇな。ってかこれ、野田さんの持ってる革ジャン着てる。さすがにかっこいいな!写真撮っとこ!」


川端が3人に対し説明する。

川端:「ここにジャンク・バスターズの物は保管してある。」


冬月:「えぐい!!これ、まじで全部当時のやつですか?」


冬月が目を輝かせながらまた声を上げた。


礼堂も無言でCDジャケットを手に取り、裏面をじっと見つめていた。


ふと、壁際の小さな机に置かれた引き出しに目が留まる。そこだけほんの少し、隙間が空いていた。


礼堂はさりげなく近づき、引き出しの中を確認した。中にあったのは、黒いUSBメモリ。


礼堂:「富士田、、、、ちょっと。」


礼堂は背を向けたまま、そっと富士田の方へだけ声を投げた。


富士田も引き出しの中を覗き、眉をひそめた。礼堂が小声で言う。


礼堂(小声):「これ、データ確認するぞ。お前ノートパソコン今持ってるよな?」


富士田(小声):「はぁぁあ?本気で言ってんの?いやリュックの中にはあるけど!」


礼堂(小声):「トイレで吐くフリして、データ入れてこい。俺が介抱役やるから。」


富士田:(小声)「いやいやいや!見つかったらクビなんですが、、、」


富士田はUSBをそっとポケットに入れ、急いで川端に謝りながらトイレへ向かう。

富士田:「し、しゃ、社長!すみません気持ち悪いので御手洗い借ります〜!!!!」

礼堂:「俺が介抱行くんで、2人は音楽談義しててください!」


そう言い礼堂も富士田の後を追う。


トイレの個室に入ると、リュックからノートパソコンを取り出し、焦りながら手早くUSBを挿し込む。


富士田(心の声):「バレたら終わるー!!!!」

一方リビングでは、冬月と川端が音楽談義をしている。礼堂がトイレからリビングに向かい様子を伺いに来ると、冬月が呆れながら問いかける。


冬月:「あいつ大丈夫か〜? 吐き癖あるからな〜。」


礼堂:「まぁ社長と飲みに行って家までお邪魔させてもらって、だいぶ気張ってたんだろう。。とりあえず、富士田は俺が見てるから大丈夫だよ。社長、本当すみません!」


川端:「いや、私は全然構わんが。」


礼堂は富士田の帰還を待ち、

やがて顔色が悪いふりをした富士田が戻ってきた。礼堂はすぐに近寄り、富士田の肩を支えながらUSBを受け取る。


礼堂(小声):「大丈夫だったか?」


富士田は礼堂にしか聞こえない声でそっと囁いた。


富士田(小声):「お、、、、おう、、なんとか、、。」


礼堂は頷き、軽く背中を叩いた。


その後、3人は川端に丁寧に礼を述べ、夜も更けてきたことを理由にその場をあとにした。


帰り道。

夜の風が頬に触れる中、3人は並んで歩いていた。


冬月:「なんだよ!お前らそんなことしてたのかよ!それ俺にも共有しろよな!!」


礼堂:「いやそんな暇なかったんだって!無理だろ普通に!」


富士田が2人の言い合いを呆れながら傍観する。


富士田:「けどまぁ、冬月が社長と話してくれたおかげでバレずにすんだよ。」


冬月:「まぁ、俺クラスになると共有しなくても手に取るように分かるよ!お前らの作戦なんてな!」


礼堂:「ならやっぱ共有いらないじゃんか!」

2人はしばらく言い合いをしていた。


そのまま3人で歩いていると、、

冬月がふと立ち止まり、道路の向こう側を見つめる。


反対側の歩道、わずかに灯る街灯の下を、ひとりの女性が歩いていた。

冬月:「あれ、、? あれって……?」


だが次の瞬間、女性は街灯の影に隠れてしまう。


冬月は目を細めながら、誰にも聞こえないような声でもう一度呟いた。


冬月:「、、、、、、、、さ、紗和さん?」


闇夜の中、彼の視線は、未だ明かされぬ謎の核心へと静かに向けられていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ