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礼堂と冬月の不完全な作戦〜愛は勘違い編〜  作者: A gyousya
殺されたロックミュージシャン ボウについて
39/59

ep.39『Light My Fire』

昔話も終わり、礼堂が今後の動きについて話す。

礼堂:「今後の話ですが、やはり川端を追うしかないと思います。犯人にしろ、そうじゃないにしろ、川端に接触しなければこれ以上事件に近づけません。ただ……」


礼堂がそう切り出した途端、冬月が遠慮なく口を挟む。


冬月:「ただ、あくまで川端とは事件に関してのコンタクトは取れないんだよな。」


礼堂:「そうだ。」


その言葉に、不満げな表情を浮かべた富士田がテーブルに肘をつきながら、少し低い声で言う。


富士田:「そうなの? 俺は一応社長と話せるけど。」


対面に座る秀治は軽く身を乗り出し、意見を述べる。


秀治:「川端に関しては特に犯人としての有力な情報はないんだよね? 元々バンドのファンだったんだし、人脈もあるだろうし、なんなら仲間にした方がいい面もあると思うんだけど。」


礼堂はテーブルに並べた資料を軽く指しながら、秀治の言葉に応じた。


礼堂:「実は、オフ会の日に川端を尾行してみたんです。彼が誰かとの電話の中で『普通のオフ会だった』と言っているのを聞いてしまって……どうしてもそれが引っかかる。もし犯人側だったら、そこを利用して確実に対策される可能性がある。」


そのやり取りを聞きながら、野田は椅子にもたれかかり、頷く。


野田:「なるほどな。まぁ二人がそう言うなら、その方がいいだろう。俺たちは出来ることであれば何でも手伝うよ。なぁ、紗和ちゃん。」


紗和は背筋を伸ばし、はきはきとした口調で返事をした。


紗和:「はい! もともと私が発端でこんな流れになってしまったので、何でも言ってもらえれば手伝います!」


礼堂は紗和と野田を交互に見ながら決意を込めた表情で頷く。


礼堂:「分かりました。じゃあ紗和さんと野田さんは、バンドメンバーやボウさんの周辺の人たちに、それとなく当時の話を聞いてもらえますか? 川端に関しては、冬月、富士田、秀治さん、それから俺で追ってみます。」

礼堂がそう言うと、一同は顔を合わせながら頷いた。


テーブルの中央には、誰かが頼んだカクテルやソフトドリンクが置かれていたが、誰もほとんど手をつけていない。バーの店内は静かで、低音のジャズがかすかに流れている。


礼堂が改めて全員を見回す。


礼堂:「じゃあ、方向性は決まりですね。みんな、よろしくお願いします。」


野田はグラスを指先で回しながら、「おう」と短く同意。紗和はうなずいて「任せてください」と言葉を添える。冬月と富士田、秀治もそれぞれ視線を交わし合ってから頷いた。


こうして、バー「夜魔」での話し合いは終わりを迎え、事件へ更に踏み込むための新たな一歩が決まったのだった。


夜の街は少し肌寒く、街灯が作る影がアスファルトの上に伸びていた。礼堂、冬月、そして富士田の三人はバー「夜魔」を出て、それぞれの自宅へ向かうために同じ道を歩いている。会話の中心は、先ほど決定した「川端を追う」件についてだ。


冬月:「礼堂〜、なんで紗和さん川端班じゃないんだよ〜! 富士田と紗和さんチェンジしてよ!」


冗談めかした口調で冬月が言うと、富士田が思わず眉をひそめる。


富士田:「いや俺は一番変われないだろ!!」


冬月は口をとがらせながら、肩をすくめてみせる。


冬月:「まぁそうか。じゃあ秀治さんとチェンジでもいいや。」


すると、礼堂が苦笑いしながら二人を横目に見る。


礼堂:「いやいや、川端は俺らでなんとかしよう。あの二人には色々話してもらったし、紗和さんはボウさん周辺の人たちから情報を集める役目があるんだ。」


冬月は足元のアスファルトを軽く蹴りながら、不満そうな表情を続ける。


冬月:「ちぇっ! しょうがねーな〜。でもどうやって川端を追うんだよ?」


礼堂はポケットからメモを取り出し、先ほどの作戦を思い出すように見返す。


礼堂:「富士田には継続して川端を追ってもらう。その中で、川端の過去について調べてほしいんだ。なんか気になることがあるって言ってただろ?」


富士田は背筋を伸ばし、小さくうなずく。


富士田:「うん。分かった。調べてみるよ。詳しいとこまで分かれば、何か手がかりになるかもしれないし。」


冬月は微妙に悔しそうな表情を浮かべながら、ため息混じりに言った。


冬月:「まぁ、川端のことはいいよ……。俺らでバッチリ決めてやろうぜ!」


礼堂は三人の足並みをそろえるように歩速を落として、周囲の人気のない通りを見回す。


礼堂:「よし、それじゃ今日のところはこんな感じで。何か動きがあったら、また集まろう。」


三人は夜の街を抜けながら、それぞれの役割を確認し合う。

そうして、夜の冷たい風に吹かれながらも、三人は足を止めずに帰宅の道を進んでいく。これからの調査を思えば道のりはまだ長いが、それぞれが目的を見据え、静かな決意を新たにしていた。

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