ep.33『サンダーロード』
ジャンク・バスターズ5年目(ボウ・紗和31才)
バンドは変わらぬ勢いでどのライブも満員御礼。
あらゆるメジャーレーベルから契約のオファーが舞い込む中、メンバーは曲作りや練習に追われる毎日を送っていた。
そんなある日、ジャンク・バスターズは練習後のミーティングで顔を合わせた。
ボウ:「メジャーレーベルからオファーが来てることは、みんなも知ってるよな。正直、俺……悩んでるんだ。」
野田:「悩むって、どのレーベルを選ぶかってこと?」
ボウ:「いや、それもあるけど……そもそもメジャーレーベルと契約するかどうか、それ自体を悩んでるんだよ。」
そう話すボウに、ベースの田村とドラムの横山が話に加わる。
田村:「でも、これからバンドをもっと大きくするには、メジャーレーベルに行くしかないんじゃないか?」
横山:「確かにな。コアなロックファンからの支持はあるけど、世間一般ではまだ無名だし。」
2人の言葉を聞きながら、ボウは深く考え込む。
ボウ:「……次のライブで、ファンのみんなに話してみるか。どんな反応があるか、聞いてみよう。」
野田:「いや、どうだろうな。ファンは大事だけど、これは俺たち自身の問題だろ。」
メンバーたちはさらに考え込む。部屋には、どこか重たい空気が漂った。
ふと、野田が口を開く。
野田:「まぁ!ボウちゃんの曲でここまで来たんだ!どんな選択をしても俺はボウちゃんに着いていくよ!」
田村・横山:「俺も!」
ボウは一瞬目を閉じ、深呼吸をした後、俯きながら静かに笑顔を作った。
ボウ:「……分かった。もうちょっと考えてみるよ。」
そう言ったボウは、場の重たい雰囲気を察し、冗談めかして話題を変える。
ボウ:「よし、考えすぎても良くないし、このまま飲みに行こうか!」
田村:「いいね、行こう!」
横山:「よし、付き合うぜ!」
野田:「仕方ねぇな!朝まで行くか!!」
ボウ:「野田っち……まだ夕方なんだけど。」
一同:「ハハハハハ!」
そしてライブ当日ーーー。
MCにて
ボウ:
「みんな、今日もありがとう!!今日はみんなに伝えたいことがある!
ホントおかげさまで、こうやって最近はライブも満員でやらせてもらって、充実した毎日を過ごしてるんだ。
そんな中で、これからバンドをもっと大きくしていかなきゃいけないなって思う!
もっともっと、このジャンク・バスターズの音楽を広めていきたいんだ!
もっと大きな会場で、もっと大勢のお客さんの前で、音楽を表現したい!
だからぜひ、もっとカッコいいバンドになって、世界を広げていきたい!」
観客1:
「ボウー!!やってやれー!」
観客2:
「俺たちはどこまででもついていくぜー!」
観客3:
「どんなところにいようが、俺たちのジャンク・バスターズに変わりはないぜ!!」
観客から次々と声援が飛ぶ。
ファンの熱い声に、ボウは思わず目元が潤む。
涙を拭い、覚悟を決めたような表情を浮かべ、力強く叫ぶ。
ボウ:「みんな、本当にありがとう!!
.....ただ、俺たちはメジャーレーベルにはいかない。このまま頂点まで突っ走る!!
その方が、ずっとカッコいいからね!みんな、しっかり着いてきてくれ!
メジャーの奴らにも、俺たちの音楽で勝負する!!」
会場は一瞬の静寂に包まれる。
しかし次の瞬間、誰よりも大きな声援と拍手が沸き起こり、熱気は最高潮に達した。
バンドメンバーは観客の熱意に応えるように、深々と頭を下げる。
その間、野田は静かに目を閉じ、心の中で呟く。
野田(心の中で):「ボウちゃん、そっちを選んだか。」
盛り上がりは最後まで続き、バンドはノンストップで全曲を披露し、最高の形でライブを締めくくった。
演奏後、控え室にて
ライブを終え、控え室で和気あいあいと盛り上がるメンバーたち。
その時、扉がノックされ、現れたのは紗和だった。
紗和:「観てたよ〜。お客さん、めちゃくちゃ盛り上がってたね!
過去1番の熱気だったんじゃない?」
野田:「紗和ちゃ〜ん!観てくれてたんだね!久しぶり!!」
田村:「紗和ちゃん、お疲れさま!」
横山:「紗和ちゃん、本当に久しぶりだね!」
バンドメンバーが次々と声をかける中、紗和は笑顔でそれに応えた。
すると、ボウが目を輝かせながら、紗和の方へ歩み寄る。
ボウ:「紗和!なんか感動しちゃったよ、俺!」
紗和:「ふふっ。私も。」
控え室には笑い声と温かな空気が広がる。
その後、メンバーは片付けを終え、充実感を胸に会場を後にした。
キャラクター紹介
田村
・「ジャンク・バスターズ」のベース。
・天然な性格で色々やらかしたりすることもあるが、メンバーから愛される存在。
横山
・「ジャンク・バスターズ」のドラム。
・しっかりものの性格で陰ながらバンドを支えている。時に大事な言葉をメンバーにかけたりする。