ep.31『真っ直ぐな人』
ライブから数日後、紗和はライブハウスの仕事をしながらも、どこか気持ちが浮ついていた。
片付けの最中、ふとした瞬間に思い出すのは野田の言葉だった。
「ボウちゃんさ、紗和ちゃんのこと気になってるよ」
「……そんなはずないのに」
紗和は自分に言い聞かせるように首を振り、思考を断ち切る。
その日も仕事を終え、ライブハウスの入り口を施錠しようとしたそのとき。
ふいに背後から声をかけられる。
「紗和さん!」
驚いて振り返ると、そこにはボウの姿があった。
紗和: 「えっ、ボウさん!?どうしたんですか?」
ボウは少し照れたように後頭部を掻きながら、笑みを浮かべる。
ボウ: 「いや、今日近くでスタジオ練習しててさ。その帰りに寄ってみたんだ」
紗和は一瞬戸惑いながらも、すぐに微笑んで答える。
紗和: 「そっか、練習お疲れさまです。こんな遅い時間に……」
ボウ: 「うん、ありがと。紗和さん、これから帰るところだよね?家、遠いの?」
紗和: 「いえ、ここから歩いて15分くらいなので大丈夫です」
ボウは少し考えた後、軽く口を開く。
ボウ: 「……じゃあさ、少しだけ歩きながら話さない?この間はあまりゆっくり話せなかったし」
紗和は少し驚きつつも、その提案を断る理由が見つからなかった。
紗和: 「うん。いいですよ」
こうして二人は、夜の静かな街並みを並んで歩き始めた。
最初は仕事の話やライブの感想など、たわいもない会話を交わしていたが、徐々にボウが自分の夢について語り始める。
ボウ: 「俺さ、もっとたくさんの人に俺たちの音楽を届けたいんだ。もちろん、今応援してくれる人たちも大事にしながら……」
紗和は真剣な表情でその話を聞きながら、ふとした瞬間にボウの横顔に目を向ける。
その目は遠い未来を見据えるように輝いていた。
紗和(やっぱり……ほんと真っ直ぐな人ね)
その夜、紗和は初めてボウと長い時間を共有したことで、彼への興味がさらに深まるのを感じていた。
そして、そんな紗和の気持ちを知ってか知らずか、ボウもまた、自然な笑顔を浮かべていたのだった。
そして出会いから半年後。
紗和がライブハウスで働き始めて半年が経った。ボウとはライブ後のやり取りや、時折帰宅時に歩きながら会話を重ね、段々と距離が縮まっていた。
ある日のライブ終わり、観客が帰った後の静まり返った会場で、ボウがギターを片付けていると紗和が声をかける。
紗和: 「ボウさん、今日のライブもすごく素敵でした。」
ボウ: 「あ、紗和さん。ありがとう。でも、どうだったかな……今日はちょっと納得いかないところがあってさ」
紗和: 「え?全然そんな風には感じなかったけど……すごく感動しましたよ」
その言葉に、ボウは少し照れくさそうに笑った。
ボウ: 「そっか。そう言ってもらえると救われるな」
ふと、ボウが真剣な表情になる。
ボウ: 「紗和さんさ、半年間こうやって俺たちを支えてくれてるけど……なんでそんなに頑張ってくれるの?」
紗和は少し驚きながらも、真剣に答える。
紗和: 「私、ボウさんたちの音楽が本当に好きなんです。それに、ボウさんが一生懸命なのが伝わってきて、応援したくなるんですよ」
その言葉を聞いたボウは、しばらく何か考えている様子だったが、やがて小さく笑った。
ボウ: 「……紗和さん、俺さ、最近ずっと思ってたことがあるんだ」
紗和: 「え?」
ボウ: 「俺、紗和さんのことが好きだ。付き合ってくれないかな」
突然の告白に、紗和は驚いて目を見開いたが、次第にその顔に笑みが浮かぶ。
紗和: 「……わ、私も……ボウさんが好きです!
よろしくお願いします!!」
こうして2人の想いは重なり合い、恋人としての関係が始まった。




