ep.3『Cigarettes and Alcohol!』
金曜日の夜、仕事を終えた冬月と礼堂は、仕事の疲れを癒すためにバー『夜魔』へ向かっていた。静かなバーの中で、二人はいつものように軽い酒を交わしながら話を始める。
冬月:「お疲れ、礼堂。」
礼堂:「お疲れ、冬月。リモートワーク、どうだった?」
冬月:「まあ、普通だな。でも、仕事が多すぎてちょっと疲れた。」
礼堂:「俺もだよ。あ、そういえば、最近ちょっと調べものしてたんだ。」
冬月:「調べもの?」
礼堂:「うん、あのボウの事件。」
礼堂:「調べてみたけど、証拠らしい証拠も情報も全然出てこないんだよ。」
冬月:「やっぱり10年前の事件だからな。そんな簡単に情報が出てくるわけないだろ。」
礼堂:「だよな。もう手がかりすらない感じだし、調べても意味ないんじゃないかと思って。あ〜。懸賞金〜。」
冬月:「まあ、情報が出てこないのは当たり前だよな。事件自体が結構昔だし。」
二人がそんな風に話していると、冬月の声が思いのほか大きく響き、ふと近くの席に座っていた店のオーナーである、
【夜魔一徹】が、吸っていたタバコの火を消し顔を上げた。
グラスを手にし、こちらを見ているその視線に気づいた二人は、一瞬間が空いた。
夜魔:「今なんて言った、、、、10年前のボウの事件だと?」
夜魔が冷たい視線を向けながら尋ねた。
その言葉に、冬月も礼堂も一瞬言葉を失う。夜魔はグラスをゆっくりと回しながら、徐々に口元に不敵な笑みを浮かべた。
夜魔:「……何なんだ?、その話。」
夜魔は少し楽しそうに言った。
冬月は少し顔を赤らめながら、慌てて言い訳をしようとするが、礼堂が軽くツッコミを入れた。
礼堂:「お前、声でかすぎだろ。おかげで夜魔さんに聞かれちまったじゃねーか。」
冬月:「あ、いや、そんなつもりじゃ……」
と恐縮するも、夜魔はまったく気にした様子もなく、ただ興味深そうにグラスを回している。
夜魔:「面白そうな話だな。」
夜魔は静かに言った。
冬月:「いや、あの、別に……全然しょうもない話っすよ!ははは!」
冬月はどうにか話を逸らそうとし、言葉を濁すが、夜魔はその態度に気づいたのか、もう一度不敵な笑みを浮かべて言った。
夜魔:「話を逸らそうとしても無駄だよ、冬月くん。
まぁ、その話、、極秘の情報がないわけじゃないけどな〜。」
夜魔はグラスを回しながら言った。
冬月は思わず息を飲み、礼堂もその言葉に反応を示す。
礼堂:「極秘の情報?」
礼堂が眉をひそめて尋ねると、夜魔は一瞬だけにやりとした笑みを浮かべ、冷たく言った。
夜魔:「まあ、でもどうかな。」
夜魔はグラスを口元に持っていきながら続けた。
夜魔:「ちなみにだが、懸賞金はいくらだ?」
その言葉に冬月と礼堂は驚きながら、視線を交わす。
冬月「懸賞金……?」
冬月が言いながらも、どう返すべきか迷っていた。
礼堂:「おいおい、夜魔さん、急にどうしたんすか?もし知ってるんならその情報をくださいよ。」
と礼堂は笑いながらも警戒を見せた。
夜魔はその問いには答えず、無邪気にグラスを飲み干すと、もう一度挑戦的に言った。
夜魔:「まあ実際、あんまり興味ないんだけどな、懸賞金の額なんか。ただ、とりあえず聞いておこうか。いくらだ?」
冬月はしばらく黙り込んでから、ようやく言葉を発する。
冬月:「1000万。」
夜魔はその額を聞いてから、とても満足そうにうなずいた。
夜魔:「1000万か……なるほどな。」
夜魔はその言葉の後、少し楽しそうに続けた。
夜魔:「まあ、俺は本当に興味ないんだよな。
1000万とかそういうの。金じゃねぇからこういうのは。」
冬月と礼堂は互いに目を合わせ、心の中で瞬時に会話を始める。
冬月(心の声):
「夜魔さん、ずっと懸賞金の話しかしてないな。」
礼堂(心の声):
「ほんとだな。ボウの事件の話もしたいのに、懸賞金ばっかりだ。」
冬月(心の声):
「これ、もしかしてボウのことすら知らないんじゃないか?」
礼堂(心の声):「ありえる。」
二人はその後も会話を続けながら、視線を夜魔に送り、改めてボウのことを知っているか試してみることにした。
冬月:
「てかさ、夜魔さん、ボウのこと知ってんすか?」
礼堂:
「音楽好きとか聞いたことないけど、どうなんすか?」
夜魔はグラスを置き、少し困ったように首をかしげると、答えに窮している様子を見せた。
少し間をおいて、どこか濁した声で続けた。
夜魔:「ん〜、あぁ〜、あれね。いや〜懐かしいね!
ボウちゃんね!うん!すげー好きだったわ!」
その答えに、冬月と礼堂は一瞬顔を見合わせ、すぐに察する。
冬月(心の声):「あ、こいつ、ボウのこと全然知らねぇな。」
礼堂(心の声):「ほらな。まったくピンと来てないじゃん。」
冬月(心の声):「なら、ちょっとカマかけてみるか。」
冬月が冷静に言った。
冬月:「じゃあ、簡単なクイズ。ボウがいたバンドは?」
夜魔は少しの間、考え込むような素振りを見せた後、にやりと笑って言った。
夜魔:「あぁ〜、あれね。懐かしいね。泣きそうだね。
『エモい』ってこういう時使うんだね。うん、俺すげ〜好きだったわ確か!」
冬月と礼堂は、その反応で確信する。夜魔はボウのことを全く知らない。バンドの名前すら思い出せていないことが明らかだった。
礼堂(心の声):「やっぱりな。」
冬月(心の声):「全然知らないじゃん、こいつ。」
二人は思わず顔を見合わせ、苦笑いを浮かべる。夜魔はその様子を見て、少し困った顔をしながら言った。
夜魔:「お前ら、何疑ってんだ?」
その時、カウンターにいる夜魔の店長、【末吉】がふと顔を上げて、にこやかに声をかけてきた。
末吉:「ボウってロックバンド『ジャンク・バスターズ』のボウかな?」
礼堂と冬月は驚き、目を見開いた後、思わず同時に声を出す。
礼堂&冬月「アンタが知ってるんかい!」
そして、二人は瞬時に心の中で会話を始める。
冬月(心の声):「え、マジか…末吉さん知ってたんだ。」
礼堂(心の声):「まさか末吉さんが知ってるとは思わなかったな。」
夜魔は目を見開き、得意げに言った。
夜魔:「あ〜!そうそう!ジャンク・バスターズ!ジャンバスね!」
そして、満足げな表情を浮かべて、腕を組みながら続ける。
冬月(心の声):「知った風に略すな!」
礼堂(心の声):「ほんと調子いいなぁ...」
二人は再び顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた後、気を取り直して末吉に質問をする。
礼堂:「末吉さん、ロックバンドとか好きなんですか?」
末吉は軽く肩をすくめて、笑顔で答える。
末吉:「まぁ、人並みにね!」
それから、少し考え込むようにして、続けた。
末吉:「ボウさんなら、昔うちのバーに何回か来たことあるよ。」
その言葉に、冬月と礼堂は驚きの表情を浮かべる。思わず同時に言った。
礼堂&冬月「え、マジで?」
キャラクター紹介
夜魔
年齢: 46歳
職業: バー『夜魔』のオーナー
外見: 身長190cm、体重120kg。厳つい外見で、どこか怖い印象を与えるが、目つきにどこか余裕と計算高さが感じられる。金が絡むと色々乗っかってくる癖がある。
また面倒見がよく、周りの人から慕われる存在。
末吉
年齢: 42歳
職業: バー『夜魔』の店長
外見: 中背で細身、ラフな服装が多い。顔つきは穏やかで、にこやかな表情をよく見せるが、目元に少し鋭さも感じさせる。
性格: 明るく、社交的で盛り上げ上手。人懐っこい性格だが、少し天然な一面もある。特に新しい話題や面白い話があると、すぐに乗っかって会話を盛り上げようとする。周囲に気配りをしつつも、時折ドライな一面が顔を出す。