↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
礼堂と冬月の不完全な作戦『勘違い編』〜10年前死んだロックミュージシャンの謎を追え!〜  作者: A gyousya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/64

ep.29『ボウと紗和』

紗和: 「……そうですね。私がボウさんと知り合ったのは、ライブハウスで働いていた時です」


一同が耳を傾ける中、紗和は少し懐かしそうに、そして恥ずかしそうに話し始めた。


紗和: 「実は、ライブハウスで働く前までは普通の会社で働いていたんですよ。でも……私、断れない性格なんです。『これお願いね』って頼まれると、つい『はい』って言っちゃって……」


冬月: 「ああ、いるよね、そういう人。で、それでどうなったんです?」


紗和: 「どうなったかって? もういろんな仕事を振られて、気づけば激務ですよ。それこそ終電帰りが当たり前、休日出勤もしょっちゅうで……。もうヘトヘトで、このままじゃ体が持たないと思って退職しました」


少し苦笑しながら話す紗和に、一同が相槌を打つ。


紗和: 「辞めた後は、しばらく貯金を切り崩しながら暮らしてたんですけど……そんな時、親戚のおじさんから連絡があったんです。『ウチのライブハウス、人手が足りないからちょっと手伝ってくれないか』って」


野田: 「なるほど。それがライブハウスで働くきっかけだったんだ」


紗和: 「そうなんです。最初はお手伝い程度のつもりだったんですけど、働いてるうちに楽しくなってきて。音楽の世界に触れるのが新鮮で、仕事も全然苦じゃなくて」


紗和の表情が徐々に明るくなる。


紗和: 「それで、ある日。そのライブハウスに出演してたのがボウさんのバンド(ジャンク・バスターズ)だったんです」


少し照れたような笑みを浮かべながら、紗和が続ける。


紗和: 「みんなが知ってるロックで尖ったボウさんじゃなくて……当時は、もっと柔らかい雰囲気の人でした。音楽もポップス寄りというか、優しい感じの曲をやってて……」


冬月: 「意外だな。俺たちが知ってるボウさんとは全然違うんですね」


紗和: 「そうなの。私も最初に見た時は、そこまで目立つ人だとは思わなくて。でも、話してみるとすごく情熱的な人で。音楽のことになると急にキラキラして……そんな姿にだんだん引き込まれちゃいました。」


そのまま語り続ける紗和。


──回想。


ジャンク・バスターズ1年目(ボウ・紗和27才)


ライブハウスの控室近くでスタッフとして働く紗和の前に、ギターケースを背負ったボウが現れる。ライブが終わった直後のボウは少し汗ばんでいて、けれどその顔は満足げに微笑んでいた。


ボウ: 「お疲れ様です。さっきのライブ、見てくれました?」


紗和は一瞬戸惑いながらも答える。


紗和: 「えっ、あ、はい!見てました。すごくよかったです!」


ボウ: 「本当に?ありがとうございます!でも、まだまだなんです。もっといいライブにしたいんすけど、何か気になるところとかありませんでした?」


突然の質問に驚きながら、紗和はぎこちなく首を振る。


紗和: 「い、いえ、特に……。でも、本当に素敵なステージでしたよ」


ボウはほっとしたように笑う。


ボウ: 「そう言ってもらえると救われます。俺、いつもお客さんの反応が気になっちゃって……。もっと届く演奏をしたいんですけどね」


紗和: 「届いてると思います。私も、なんだか勇気をもらえた気がしましたから」


その言葉にボウは目を輝かせた。


ボウ: 「そうですか……!よかった。本当にありがとうございます」


一瞬沈黙が流れた後、ボウが不意に尋ねる。


ボウ: 「そういえば、ライブハウスで働くのって、やっぱり音楽が好きだからですか?」


紗和は少し考え込みながら答える。


紗和: 「実は、ここで働き始めたのは偶然なんです。元々は普通の会社員だったんですけど……。でも、音楽はずっと好きでした。だから、こうやってライブを間近で見られるのは嬉しいです」


ボウ: 「へえ、そうなんすね。じゃあ、ここで働き始めてよかったって思えてるんですか?」


紗和: 「はい。大変なこともありますけど……こうしてボウさんのライブを見られるだけで、報われた気がします」


ボウは照れたように笑い、軽く頭をかく。


ボウ: 「そう言われると、僕らももっと頑張らないとね。次のライブは、もっといい演奏ができるようにします!俺自身色々バンド組んでは解散して、ようやく最高のメンバーにも出会いましたから!」


紗和はその真っ直ぐな瞳に引き込まれるようにうなずく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。