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礼堂と冬月の不完全な作戦〜愛は勘違い編〜  作者: A gyousya
殺されたロックミュージシャン ボウについて
29/59

ep.29『Ziggy Stardust』

紗和: 「……そうですね。私がボウさんと知り合ったのは、ライブハウスで働いていた時です。」


一同が耳を傾ける中、紗和は少し懐かしそうに、そして恥ずかしそうに話し始めた。


紗和: 「実は、ライブハウスで働く前までは普通の会社で働いていたんですよ。でも……私、断れない性格なんです。『これお願いね』って頼まれると、つい『はい』って言っちゃって……。」


冬月: 「ああ、いるよね、そういう人。で、それでどうなったの?」


紗和: 「どうなったかって? もういろんな仕事を振られて、気づけば激務ですよ。それこそ終電帰りが当たり前、休日出勤もしょっちゅうで……。もうヘトヘトで、このままじゃ体が持たないと思って退職しました。」


少し苦笑しながら話す紗和に、一同が相槌を打つ。


紗和: 「辞めた後は、しばらく貯金を切り崩しながら暮らしてたんですけど……そんな時、親戚のおじさんから連絡があったんです。『ウチのライブハウス、人手が足りないからちょっと手伝ってくれないか』って。」


野田: 「なるほど。それがライブハウスで働くきっかけだったんだ。」


紗和: 「そうなんです。最初はお手伝い程度のつもりだったんですけど、働いてるうちに楽しくなってきて。音楽の世界に触れるのが新鮮で、仕事も全然苦じゃなくて。」


紗和の表情が徐々に明るくなる。


紗和: 「それで、ある日。そのライブハウスに出演してたのがボウさんのバンド(ジャンク・バスターズ)だったんです。」


少し照れたような笑みを浮かべながら、紗和が続ける。


紗和: 「みんなが知ってるロックで尖ったボウさんじゃなくて……当時は、もっと柔らかい雰囲気の人でした。音楽もポップス寄りというか、優しい感じの曲をやってて……。」


冬月: 「意外だな。俺たちが知ってるボウさんとは全然違う。」


紗和: 「ですよね。私も最初に見た時は、そこまで目立つ人だとは思わなくて。でも、話してみるとすごく情熱的な人で。音楽のことになると急にキラキラして……そんな姿にだんだん引き込まれちゃいました。」


そのまま語り続ける紗和。。


ーーーーーー回想ーーーーーーーーーーーーーーーー


ジャンク・バスターズ1年目(ボウ・紗和27才)


ライブハウスの控室近くでスタッフとして働く紗和の前に、ギターケースを背負ったボウが現れる。ライブが終わった直後のボウは少し汗ばんでいて、けれどその顔は満足げに微笑んでいた。


ボウ: 「お疲れ様です。さっきのライブ、見てくれました?」


紗和は一瞬戸惑いながらも答える。


紗和: 「えっ、あ、はい!見てました。すごくよかったです。」


ボウ: 「本当に?ありがとうございます!でも、まだまだなんです。もっといいライブにしたいんすけど、何か気になるところとかありませんでした?」


突然の質問に驚きながら、紗和はぎこちなく首を振る。


紗和: 「い、いえ、特に……。でも、本当に素敵なステージでしたよ。」


ボウはほっとしたように笑う。


ボウ: 「そう言ってもらえると救われます。俺、いつもお客さんの反応が気になっちゃって……。もっと届く演奏をしたいんですけどね。」


紗和: 「届いてると思います。私も、なんだか勇気をもらえた気がしましたから。」


その言葉にボウは目を輝かせた。


ボウ: 「そうですか……!よかった。本当にありがとうございます。」


一瞬沈黙が流れた後、ボウが不意に尋ねる。


ボウ: 「そういえば、ライブハウスで働くのって、やっぱり音楽が好きだからですか?」


紗和は少し考え込みながら答える。


紗和: 「実は、ここで働き始めたのは偶然なんです。元々は普通の会社員だったんですけど……。でも、音楽はずっと好きでした。だから、こうやってライブを間近で見られるのは嬉しいです。」


ボウ: 「へえ、そうなんすね。じゃあ、ここで働き始めてよかったって思えてるんですか?」


紗和: 「はい。大変なこともありますけど……こうしてボウさんのライブを見られるだけで、報われた気がします。」


ボウは照れたように笑い、軽く頭をかく。


ボウ: 「そう言われると、僕らももっと頑張らないとね。次のライブは、もっといい演奏ができるようにします!俺自身色々バンド組んでは解散して、ようやく最高のメンバーにも出会いましたから!」


紗和はその真っ直ぐな瞳に引き込まれるようにうなずく。。。。

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