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礼堂と冬月の不完全な作戦〜愛は勘違い編〜  作者: A gyousya
未解決事件サイトの管理人!?
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ep.26『Killer Queen』

紗和が告げた衝撃の事実に、礼堂と冬月は言葉を失った。あまりにも突然の告白に二人は一瞬思考が追いつかない。しばらくの沈黙の後、礼堂がようやく口を開いた。


礼堂:「ま、まさか……元奥さんだったとは…。」


冬月:「あ…ああ、でも、でも、ボウと離婚したって…それって、何か理由があるんじゃないですか?」


紗和はゆっくりと息を吐き、静かな声で語り始めた。


紗和:「はい、最初は私もボウのバンドを支えていたんです。ボウが夢を追って、どうしても成功したくて私も一緒に走っていました。そしてバンドはどんどん人気が出て、すごく充実した日々を送っていました。」


彼女の目に、かつての輝かしい日々を思い出したような淡い光が宿る。その光が一瞬だけ、痛みに変わる。


紗和:「でも、成功すればするほどボウはどこか変わっていったんです。プレッシャーや不安、そして彼の中で何かが壊れていったのか、私にはわからなかった。だんだんと、私との関係もすれ違い始めて…。彼の心が、どんどん遠くなっていったんです。」


静かな語り口で、紗和は続けた。


紗和:「そして結局、私たちは離婚しました。お互いにもう耐えられなくて…。その後、私はボウとは年に数回、普通の友人として会うようになりました。」


その言葉に、礼堂と冬月は無言でうなずくが、心の中では次第に次の言葉を待ちわびていた。


紗和は目を閉じ、少し間を置いてから、さらに続けた。



紗和:「でも、ボウの解散ライブの後、突然、あんな事件が起こったんです…。」




その言葉に、二人は一層の衝撃を受け、顔を見合わせる。言葉を探しても出てこない。


紗和:「あの時私がボウをもっと支えてあげていれば、もっと信じてあげていれば、もしかしたら離婚しなくて済んだかもしれないし、こんなことにはならなかったんじゃないかって、ずっと後悔しているんです。」


声が震え、涙が頬を伝う。


紗和:「私はボウに何もしてあげられなかった…私がもっと支えていれば、彼は殺されなかったのかもしれない。だから、この事件を解決することが、私の償いなんです。」


紗和は涙をぬぐいながら、強い決意を込めて語った。


紗和:「ボウの死を無駄にしたくない。犯人を突き止めて、真実を明らかにすることが、私にできる唯一の償いだと思っているんです。」


その言葉に、礼堂と冬月は一瞬言葉を失った。しかし、二人の心には確かなものが芽生えていた。紗和の涙と決意が、彼らに新たな力を与えていた。


冬月:「…わかった。俺たちも協力するよ。」


礼堂:「もちろん、全力でサポートします。」


二人の言葉に、紗和は少し驚いた様子で顔を上げる。


紗和:「本当に…ありがとうございます。私、一人じゃどうしてもできないんです。」


紗和の感謝に、礼堂と冬月は頷き、二人の間に静かな誓いが交わされるのだった。


礼堂:「それで、あのサイトを立ち上げたんですね。」


紗和:「はい…。あれは、どうしても必要だと思って。」


紗和の表情には覚悟がにじみ出ていた。しかし、冬月は一つの疑念を抱いていた。


冬月:「でも…あのサイトには、ボウの事件以外の未解決事件も載ってたよね?普通なら、ボウの事件に集中するはずじゃない?」


礼堂もその言葉にうなずき、内心で同じ疑問を抱いていた。


礼堂(心の声):「確かに。ボウの事件を追うためなら、他の未解決事件を載せる必要なんてないはずだ。むしろ邪魔になるだけじゃないか?」


紗和は一瞬躊躇したように見えたが、決意を込めて答えた。


紗和:「それに関しては、カモフラージュです。他の未解決事件を載せたのには理由があります。」


冬月:「カモフラージュ?具体的にはどういうこと?」


紗和は少しだけ目を伏せたが、すぐに顔を上げ、静かに説明を始めた。


紗和:「まず事件の関係者があのサイトを見つける可能性があると思いました。だからボウの事件だけ載せていると、あからさまに目的が見えすぎてしまうんです。もし犯人がそれを見たら、警戒される可能性がある。そこで、他の事件も一緒に載せることで、サイト自体を“ただの未解決事件好きの趣味の延長”に見せるようにしたんです。」


冬月は腕を組み、少し考え込む。


冬月:「でもそもそもは、サイトを通じてあの事件の情報提供や解決のための協力者を探す、という狙いがあるんだよね?」


紗和:「もちろんです。

でもあの事件だけ取り上げた時に、ただのミステリー好きの冷やかしや、嘘の情報を流されたりして、本当に知りたい情報が埋もれてしまうかもしれない。

だから、それを分散させるための仕掛けでもあるんです。

私はあくまで、ボウの事件に本気で協力してくれる人を募りたかったんです。」


礼堂はその話を聞き、納得したように頷いた。


礼堂:「つまり...無駄な情報をフィルターするための策だった、と。」


紗和:「そうです。そして、犯人に“あの事件を追っている”という意図を悟られない為の策でもあります。」


冬月は紗和の説明に耳を傾けながら、内心で感心していた。


冬月(心の声):「なるほど…そこまで計算してサイトを作ったのか。これは思った以上に綿密だな。」


礼堂:「そこまで考えていたなんて、正直驚きましたよ。僕たちも、そこまで深い理由があるとは思っていませんでした。」


紗和:「私にできることなんて限られているから…。せめてこうやって、できる範囲で動いてみようと思ったんです。」


その言葉には、紗和のボウへの強い思いと、事件解決への覚悟が込められていた。礼堂と冬月は、彼女の決意を改めて感じ取った。

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