ep.25『Everything (It's you)』
土曜日の昼、礼堂と冬月は駅前のカフェの窓際の席で裏サイトの管理人を待っていた。約束の時間が近づくにつれ、冬月は落ち着かない様子で周囲をキョロキョロと見回している。
冬月:「なぁ、本当に来ると思うか?」
礼堂:「自分で約束したんだから信じろよ。それに、遅れてくるのが社会人のマナーだろ?」
冬月:「そんなマナーあるか?」
二人が軽口を叩いていると、約束の時間の5分前、カフェのドアが開いた。
現れたのは30代前半くらいの見た目の綺麗な女性。清楚な服装で、どこか物静かな雰囲気をまといながら辺りを見渡し、やがて二人に気づくと足早にこちらへ向かってきた。
女性:「あの…サイトの件でお会いするお約束をした者ですが…?」
その言葉を聞いた瞬間、冬月は即座に口を開いた。
冬月:「どうも礼堂と申します!先日はコイツが大変失礼なメールを送ったみたいで、本当に申し訳ございませんでした!いやぁ、あのメールを見た時は俺も驚きましたよ。なので、コイツにはしっかりお灸を据えといたので…ほら!謝れ冬月!」
礼堂:(心の声)「こいつは何を言ってんだ?まぁいい、放っておこう。」
礼堂は冬月の暴走を一旦無視し、女性に向き直ると、丁寧に頭を下げながら自己紹介をした。
礼堂:「どうも、礼堂と申します。先日は大変失礼なメールをコイツが送ったようで、大変申し訳ございませんでした。」
隣を見ると、冬月の頭が高かったため、軽く押さえつけて深々と謝罪する。
女性:「そんな!謝らないでください!私も反省しているんです。」
冬月:「いやいや、そんな謝るなんて、悪いのはこっちですよ。」
反省の意を込めた調子で言う冬月だが、隣の礼堂は呆れ顔で腕を組んでいた。
礼堂:「もしよろしければ、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
女性は少し緊張した面持ちで答えた。
女性:「久遠紗和と申します。よろしくお願いします。」
冬月:「紗和ちゃんね…」
礼堂:「初対面で馴れ馴れしいんだよ!紗和さんだろ!」
紗和:「いえいえ、どちらでも大丈夫です(笑)」
礼堂:「ところで紗和さん、いきなりで恐縮ですが、なぜあんなサイトを…?」
冬月:「おいおい、いきなり失礼だろ!紗和ちゃん、すごく綺麗だね。彼氏とかいるの?」
礼堂は即座に冬月の頭を叩き、深々と頭を下げた。
礼堂:「どっちが失礼だ!すみません、紗和さん!」
紗和はくすくすと笑いながら答える。
紗和:「全然大丈夫です(笑)なんか想像していた方々と違いました。」
冬月:「それはお互い様ですよ。」
場が和んだところで紗和は少し真剣な表情に戻り、話を続けた。
紗和:「それで先ほどの話ですが、
実は私、、、」
礼堂「はい」
冬月:「うん」
紗和:「私、、、、、、」
礼堂:「はい!」
冬月:「うん!」
紗和「わたし、、、、、、、、」
礼堂:「はいい!!!!!!!」
冬月:「うんん!!!!!!!」
紗和:「私、、バツイチなんです。」
礼堂と冬月は勢いよくズッコケた。
礼堂 & 冬月:「そっちの話かい!!!」
紗和は顔を赤くしながら、慌てて手を振る。
紗和:「あれ!?違いましたか?あっ、サイトの話ですね!すみません!」
礼堂:「いえいえ、大丈夫です(笑)。では気を取り直して…」
(心の声):「冬月のやつ、余計なこと言うから…。」
紗和は真剣な表情で再び話し始めた。
紗和:「実は私…ボウの元妻なんです。」
礼堂と冬月の表情が固まる。信じがたい事実に呆然とする二人。
固まったまま30秒が経過し、痺れを切らした紗和が問いかけた。
紗和:「あ、あれ?お二人とも故障しちゃいましたか?」
ようやく礼堂が我に返り、ぎこちなく笑顔を作りながら応じる。
礼堂:「い、いや〜そうでしたか!衝撃的すぎて固まってしまいましたよ。なぁ冬月?」
隣を見ると、冬月はまだ固まっていた。少し時間をおいてようやく動き出すと、敬語になりながら疑問をぶつけた。
冬月:「でも、『元』妻っていうのはどういうことなんです?」
紗和は真剣な眼差しで答えた。
紗和:「離婚したんです。ボウと。」
その一言に、さらに深まる謎と緊張感を感じる二人だった。
キャラクター紹介
久遠紗和
・ボウの事件が載っている裏サイトの管理人
・ボウの元妻