ep.16『Walk This Way』
富士田は勢いよく椅子を引き寄せ、パソコンの電源を入れると同時に、社内サーバーにアクセスを開始した。次々とフォルダを開き、中のファイルを隅々まで確認していく。その目は真剣そのもので、まるで何かを見つけ出すことに全精力を注いでいるようだった。
富士田(心の声):「まずはアイツらを黙らせる!」
その思いを胸に、キーボードを叩く手は止まることを知らない。画面上には次々と開かれるフォルダとファイルの一覧が映し出される。仕事で使うファイルを探しているとは到底思えないその勢いに、周りの社員たちは目を丸くしていた。
同僚女性:「富士田さん……すごく忙しそうですね。体調崩さないように頑張ってください……」
唐突に話しかけられ、富士田は少しだけ動きを止め、ちらりと同僚を見る。
富士田:「あざっす!」
(心の声)「悪いけど、今それどころじゃないんだよ……! まずはこの手でアイツら絶対黙らせてやる!」
再びタイピングを再開すると、その音は一層激しさを増し、オフィスに響き渡る。どのフォルダにも自分が求めている情報が見当たらないことに苛立ちながらも、富士田の手は止まる気配を見せない。
周囲の社員たちはその熱意に言葉を失い、ただただ見守ることしかできなかった。
激しいタイピング音がオフィスに響く中、突然背後から声がかかった。
上司:「おい、富士田。忙しいところ悪いけど、社長が直々にお前を呼んでるぞ。さっきのミーティングに参加できなかったから、せめて顔合わせだけでもしたいんだとさ。」
その一言に、富士田は驚きで動きを止めた。
富士田:「川端社長が……ですか?わ、分かりました!」
(心の声)「このタイミングで! ?もしかして川端社長もアイツらとグルになって俺を潰そうとしてるのか……?」
そう考えると、背筋に冷たいものが走った。けれど、この状況から逃げるわけにもいかない。少し緊張した表情を浮かべながら、席を立つ。
富士田(心の声):「いやいや、待て待て。俺は何を疑ってるんだ?落ち着け、富士田。これはただの顔合わせだ……たぶん。」
気を引き締めるように軽く息を吸い込み、社長室へ向かうため足を踏み出す。社内を歩くその姿は一見すると普段通りだが、内心では疑念と焦りが渦巻いていた。
富士田(心の声):「でも……仮にグルだったらどうする?俺、消されるとかないよな……?」
そんな妄想を振り払うように、富士田は社長室の扉の前に立つと、意を決してノックした。
社長室の重厚な扉を開けると、川端社長が優雅にソファに座っていた。その姿に圧倒されながら、富士田は緊張で声を震わせる。
川端:「よろしく。君が富士田くんか……」
富士田:「申し遅れました!富士田です!今回のプロジェクト、必ず成功させます!」
川端は富士田をじっと見つめた後、薄く笑いながら切り出した。
川端:「うん……では、単刀直入に聞くが、君は何を探っている?」
富士田(心の声):「ギクッ!やばい!もうバレた!?早い!早すぎるよ!!この人有能すぎるよ!!もしくはアイツらの仕業か!?」
冷や汗が額を伝う中、富士田は覚悟を決めた。
富士田(心の声):もう知るか!!!こうなりゃヤケだ!!!
「か……会社のサーバーの……全てのフォルダを確認して、何か情報がないか調べてました!すんません!どうか消さないでください!」
川端は眉を上げて少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべた。
川端:「消す?何のことか分からないけど、、、、
ウチの社員はみんな優秀とはいえ、全フォルダ確認するような人はいないからな。手始めに社内の情報を探るは悪いことではない。まぁ、その根性は買おう。よし!君にこのプロジェクトを任せようじゃないか。」
富士田:「は……はい!ありがとうございます!」
(心の声)「奇跡起きたー!!!完全に社長を探ってることだと思ったー!」
川端は立ち上がり、富士田の肩に軽く手を置いた。
川端:「これは我が社にとってとても重要なプロジェクトだ。私が直接君を呼び出すこともあるだろう。君も聞きたいことがあれば遠慮せず社長室に来てくれて構わない。期待しているよ。」
富士田:「はい!!よろしくお願いします!!」
緊張感あふれる社長との顔合わせを終え、富士田は自分のデスクに戻った。深く息を吐き出しながら、椅子にドサリと腰を下ろす。
富士田:「いや〜、ヒリヒリした!死んだかと思ったわ!」
その時、ポケットのスマホが振動した。画面を見ると礼堂からのメッセージが表示されている。
礼堂:「今君の会社の前にいるから、
ランチ行こうよ( ◠‿◠ ) 冬月もいるよ( ◠‿◠ )」
富士田:「なんでいるんだよ……」
呆れながら小声で呟き、ため息をついて立ち上がる。外に出ると、笑顔で手を振る礼堂と、面倒くさそうにしている冬月の姿が目に飛び込んできた。