ep.13『You're My Best Friend』
富士田が会話の流れから突然、、、
富士田:「あ、そうだ。実はちょっと言ってなかったことがあるんだけどさ。」
冬月:「なんだよ、改まって。怪しいな。」
富士田「:実は俺、ゲーム配信やってるんだよね。」
礼堂:「ゲーム配信!?マジか!」
冬月:「お前が?どんなのやってんの?」
富士田:「まぁ、趣味で始めたんだけど、ちょっとずつ人が見てくれるようになってさ。今、登録者1500人くらい。」
礼堂:「1500人!?すげぇじゃん!」
冬月:「それで趣味って、けっこう本気じゃねぇか!」
富士田:「いやいや、そんな大したことないよ。トップ配信者なんて何万人もいるしさ。」
「(小声で)大したことないんだよなぁ。。。」
礼堂:「ん?今なんか言ったか?」
富士田:「いやいや、何も(笑)。」
冬月:「まぁでもすごいよ。趣味でそこまでいけるのは普通じゃない。」
礼堂:「ほんとだよな。俺なんて家帰ったら寝るだけだぞ。」
富士田:「いや、それが一番の幸せだろ。俺もそんな生活がしたいよ。」
3人は久しぶりの再会に話が尽きることなく、居酒屋での時間を楽しむ。
ゲーム配信の話題をきっかけに、次第に大学時代の思い出話や最近の近況へと話が広がっていく。
礼堂:「そういえば富士田、お前が働いてるリバサイドって会社、川端っていう社長がいるよな?」
富士田:「ああ、いるけど…なんで?」
冬月:「いや、ちょっと聞きたいことがあってな。」
富士田:「そうなんだ。ただ俺、そんなに社長と接点ないから役に立つか分からないけどね。」
冬月:「川端社長ってどんな人なの?」
富士田:「んー、正直俺ら平社員とはあんまり接点ないんだよね。たまーにオフィスに顔を出すけど、いつも忙しそうにしてる感じかな。」
礼堂:「忙しそう?どんなことしてるんだ?」
富士田:「基本的には取引先との会食とか、経営方針の打ち合わせとか。あと、たまに会議で話をするけど、頭の回転が速くて切れ者って感じだね。ちょっと怖いけど、カリスマ性はあるよ。」
冬月:「なるほど。社員からの評判はどうなんだ?」
富士田:「うーん、賛否両論ってところかな。一部の人からはすごい尊敬されてるけど、やっぱり厳しい人だから、合わない人にはとことん嫌われるタイプ。俺はまぁ、中立派ってとこかな。」
礼堂:「そうか。富士田、お前ってそういう人には深入りしないタイプだもんな。」
富士田:「だって怖いじゃん。下手に目をつけられたら大変だしさ。」
冬月:「確かにな。でも、社員が集まるイベントとかないのか?」
富士田:「あるよ。会社主催のパーティーとか、チームビルディングとかね。でも、川端社長はそういう場には一切来ないんだよね。部下に任せてるみたい。」
礼堂:「へぇ、結構ドライなんだな。」
冬月:「なるほどな。富士田、色々教えてくれてありがとうな。」
富士田:「いやいや、そんな大した話じゃないけどさ。でも、お前らが川端社長のことなんで気にしてんのか、逆に気になるけどな。」
礼堂:「まぁ、ちょっとした興味本位ってとこだよ。」
富士田:「ふーん。まぁ、礼堂がそう言うならいいけどさ。」
富士田がビールを飲み干し、軽く息をついたところで、冬月が少し真剣な表情になりながら切り出す。
冬月:「なぁ、礼堂。ちょっと思ったんだけどさ。」
礼堂:「なんだよ、急に改まって。」
冬月:「富士田ってさ、こう見えて結構頭回るし、人の話もよく聞いてるだろ?」
礼堂:「まぁな。それがどうした?」
冬月:「今、俺たちがやってること……富士田に話してみてもいいんじゃないか?」
礼堂:「えっ、マジで言ってんの?」
冬月:「ああ。考えてみろよ。富士田はリバサイドで働いてるし、川端のこともちょっとは知ってる。今後のことを考えたら、戦力になるかもしれないだろ。」
礼堂:「……確かに。俺たちだけじゃどうにもならないこともあるしな。」
富士田:「おいおい、なんだよ。さっきから勝手に話進めてるけど、俺に何の話をするつもりなんだよ?」
冬月:「(ニヤリと笑って)いや、富士田、お前が今後頼りになるかどうかの話さ。」
富士田:「頼りになるって、どういう意味だよ?俺、別にスーパーマンじゃないぞ?」
礼堂:「まぁまぁ、落ち着けって。話すかどうかはまだ決めてないけどな。」
冬月:「いや、礼堂、話そう。富士田なら信用できるし、何より、巻き込む価値があると思う。」
礼堂:「……分かった。富士田、お前に少しだけ俺たちの事情を話すよ。ただし、絶対に他言無用だぞ。」
富士田:「おいおい、急にそんな重たい空気にすんなよ。俺にそんな話して大丈夫か?」
礼堂:「まぁ、聞いてから判断してくれ。」
礼堂と冬月は、一瞬だけ互いに視線を交わして頷く。
冬月:「よし、話そう。ただし、どこから話すかが問題だな。」
礼堂:「まぁ、まずは川端の名前が絡んでる時点で普通じゃない話だってことを伝えるべきだな。」
富士田:「おいおい、本気で何かヤバいことに巻き込まれてるんじゃないだろうな?」
礼堂:「まぁ、聞いてからのお楽しみってやつだよ。」
冬月:「それで、俺たちの話を聞いて協力するかどうかは、お前が決めろ。」
富士田は半信半疑ながらも興味深そうに二人の言葉を待つ。居酒屋の空気が一変し、3人の間に緊張感が漂い始めた。
礼堂:「じゃあ、話すぞ。ちょっと長くなるけど、ちゃんと聞いてくれよ。」
富士田:「お、おう。なんだか緊張してきたな……。」
冬月:「まず、話の発端は10年前だ。ある未解決事件があってな。」
富士田:「10年前の未解決事件?なんだよ、それ。」
礼堂:「殺人事件だよ。その犯人を、俺たちは独自に追っている。」
富士田:「……はぁ!?お前ら探偵か何かかよ!?」
冬月:「いや、全然違う。普通の会社員だ。けどな、色々なきっかけがあって、気付いたら俺たち二人でその事件を追うことになった。」
礼堂:「お前が驚くのも無理はない。普通こんな話、突然聞かされても信じられないだろ?」
富士田:「いや、そりゃそうだろ……。待てよ。それで、その事件と俺がどう関係あるんだよ?」
冬月:「直接の関係があるかどうかは分からない。けど、お前がリバサイドで働いていること、そしてそのリバサイドの社長・川端が俺たちの調査対象になっていること。それが大きい。」
富士田:「川端社長が?……嘘だろ?」
礼堂:「俺たちも確証があるわけじゃない。ただ、川端がこの事件に何らかの形で関わっている可能性がある。だから、お前がリバサイドで見聞きしていることが、俺たちの調査の手助けになるかもしれないんだ。」
富士田:「……いやいや、ちょっと待て。お前らそれ、本気で言ってるのか?」
冬月:「本気だ。でな、どうだ?俺たちに協力してみる気はあるか?」
富士田:「……待て、すぐに返事はできない。頭が追いつかねぇよ。」
礼堂:「それは分かる。急にこんな話をされて、簡単に決められるわけがないよな。」
冬月:「けど、お前ならきっと俺たちの力になれる。普段の生活に支障が出ない範囲でいいから、少し考えてみてくれ。」
富士田:「……分かった。けど、まだ信じられない部分も多いから、少しずつ話を聞かせてくれ。」
礼堂:「それでいい。まずはお前に信じてもらうところからだな。」
冬月:「よし、じゃあ今日はこのぐらいにしよう。富士田、協力してくれるなら、こっちも全力でフォローするからな。」
富士田:「おいおい、俺までこんな怪しい話に巻き込まれるのかよ……。」
礼堂:「まぁ、そう言うなって。昔から頼りになる奴だったろ、お前は。」
富士田:「ったく……仕方ねぇな。」
3人は会話を一旦締めくくり、またいつもの居酒屋らしい賑やかな雰囲気に戻る。だが、富士田の頭の中には、10年前の未解決事件という言葉が深く刻み込まれていた。