七話 また来ると言ってました
七話 また来ると言ってました
マダムは誰よりも先に完食して、おかわりを要求してくる。要がよそってあげると、さらにがっついた。
「母がこうなるのも無理はない。おいしいよ。脂身が私にはきついが」
シールドの胃では安い肉には太刀打ちできなかったようだ。彼は残していた。
「何をしているのシールド。食べないなんてもったいない」
マダムはシールドから牛丼を奪い取った。
「それ、三杯目」
エスパーダがそう言うと、キッと睨まれた。
「気に入ってもらって何よりです」
「私の料理人にならない?」
「俺は料理を習っている身なので、李黒星を推薦しておきます」
師匠の黒星に道を譲ったが、マダムは難色を示した。
「人間じゃないと食材が安く仕入れられないと思うの。私達はもう借り暮らしをする家ではないし」
借り暮らしをするのは貧乏な家庭という概念があるらしく、マダムとしてはそんなことをする家柄ではないと言いたいのだ。
「母さん、わがままを言うんじゃない」
「だって……」
「今日はお邪魔しました。さ、帰るよ」
そう言って帰ろうとするがマダムは満腹で動けない。マダムの腹が落ち着くのをみんなで待つしかなかった。
その間にもマダムは料理人になるように言うのだが、要はきっぱりと断った。それでも食い下がるので、また食事をごちそうするということで決着した。
「絶対よ」
マダムはそう念を押して帰っていった。アクの強い人だなと思い、どっと疲れが出た。エスパーダも同様みたいで安堵のため息をついていた。