六話 牛丼を食べました
六話 牛丼を食べました
「みなさん、牛丼食べていきませんか?」
要は二人を晩ごはんに誘った。もう食べてもおかしくない時間になっていたからだ。
「牛丼というのは?」
マダムは興味を示している。
「牛肉を煮た物をご飯の上に乗せた食べ物です」
「牛肉が食べられるの?」
「人間の物価は小人族に比べて安いですから。人件費も安いんですよね」
要は沈んだ表情を見せる。
「それは小人族にとっては僥倖ですね。私達でも牛肉はごちそうですから」
マダムは期待を寄せている。
「母さん、失礼だよ。押しかけて来ておいて、ご飯までごちそうになるなんて」
「構いませんよ。自分の分は明日の昼にでも食べれば良いだけなんで」
「なんて素敵な人なのかしら。あなたにはもったいないくらいよ!」
マダムはまだエスパーダをいびっている。
「作りに行くので仲良くしててください」
「叱られちゃったじゃない。あなたのせいよ」
どうしてもエスパーダを怒りたいようだ。
だが牛丼を作るためにエスパーダをフリーにしないといけない。耐えてくれとテレパシーを送ってその場を離れる。
やはりすぐには仲良くなれず、マダムはエスパーダを説教している。早く作ってマダムの注意をそらさねばならない。
玉ねぎを小人サイズに切り刻み、牛肉も同じようにする。そして玉ねぎを柔らかくなるまで火を通し、肉を投入。色が変わり始めたら、要が考える小人用の味付けで煮込んでいく。
後は黒星から貰った器にご飯をよそつて、出来上がった具を乗っける。
持っていくとエスパーダはグロッキー状態ですぐには食べられなそうだ。
マダムの目の前に牛丼を置くと、さっと取ってがっついた。
「なんておいしいのかしら。牛肉……ああ牛肉……」
マダムは要の牛丼の虜になっていた。エスパーダも食べるが、ステーキで免疫が出来ているせいかマダムほど喜んではくれなかった。