五話 彼の父の事を聞きました
五話 彼の父の事を聞きました
「あなた、もしかして宿守応該を知っていて?」
マダムは要を見上げた。
「それは父の名前です。子供の頃に母と離婚してしまったので、今何をしているかまでは知りません」
「そう。才さんと離婚したの」
「母も知ってるんですか?」
「コビット社を起業する前に、借り暮らしをしていた事があったのよ。才さんには見つかって、仲良くさせてもらっていたわ」
要の母が借り暮らしにこだわっていたのはマダムを懐かしんでのことなのだろう。でもエスパーダはマダムと違うのだ。
「応該は私達に興味を持っていました。そして私は当時不妊に悩んでいました」
どうやら話してくれるようだ。シールドの出生の秘密。それに要の父が関わっていると思うと、知るのが少し怖くなる。でも知れば、才がエスパーダとのことを認めるきっかけのようなものをつかめるかもしれない。
「それでシールドの代理母はどういう形で決まったのですか?」
「それは応該が自分の……いや才さんの妹を連れてきたの。代理母という仕事を金で請け負わせて……」
要にとって叔母さんにあたる人はシールドを産んで、目覚めることなく死んだということになる。離婚の理由は聞いた事がなかったが、その辺りが原因かも知れない。
「それでシールドさんは超能力を得たと……」
「最初の頃は何ともなかったのに才さんの妹さんが亡くなってから、老化現象が現れ始めて……」
それは超能力のデメリットを代理母が肩代わりしてくれたという事だろう。
「人間から生まれただけで超能力なんて得られるのかな。小人族の子でそんな話聞いたこともない」
エスパーダが疑問を口にすると、マダムはキッとエスパーダを睨み付けた。
「シールドは小人族で、私の子供です! ちゃんとDNA鑑定してもらっているのです」
マダムに叱られ、エスパーダはしゅんとなる。いつも自由気ままな彼女がしおらしくしているのは小気味いいけど、エスパーダの疑問も理解できる。
「マダム。俺も超能力の発現という点には引っかかっています。何かの条件が揃った場合になるのか、神のいたずらなのか」
要は助け船を出してみる。
「私は知りません。ただシールドは超能力を持ち、応該はそれを研究しようと私達からシールドを取り上げようとしました。私達は夜逃げをするしかなかったのです」
そういえば父応該は超能力を研究している。マダムよりも情報を持っているかもしれない。
「今度父に会ってみます。エスパーダを紹介しなければなりませんし」
「気をつけなさいな。あの男は研究のために全ての人を不幸に出来る人ですから」
叔母の事やシールドの事を聞いて、確かに応該はエスパーダに危害を加えてくるかもと不安になる。でも母があの通りだったので、せめて父親には祝福してもらいたい気持ちが勝った。
要は応該に会うことを決めた。