四話 彼がシールドの母親と仲良くなりました
四話 彼がシールドの母親と仲良くなりました
シールドにエスパーダのスマホのデータを転送してもらって確認。まずはシールドとのやりとりからだ。
『シールドはウサギをかわいいと思う? それともおいしそうだと思う?』
例の派閥争いの質問が投げかけられている。
それに対して、シールドの答えは後者だった。理由はこうだ。
『食べ物として見ているものはやはり味を連想してしまう。それに私はウサギをかわいいと思ったことはない』
その答えに満足したらしいエスパーダは笑顔の顔文字を送りつけていた。単純においしそう派が増えた事が嬉しかったようだ。そういえば昼頃にエスパーダから、メッセージが要に届いていた。
『今この時、ウサギおいしそう派の勝利は目前となった』というメッセージと笑顔の顔文字のセットがだ。
時間を照らし合わせるとシールドに送った後だった。そこから要にはメッセージが送られていなかった。
シールドのほうの続きを見ると『?』とエスパーダの意図を問うマークが送られている。
その後の返信に登場したのが逆バニーの写真だ。
その後にこうメッセージが。
『このウサギもおいしそうでしょ?』
完全な下ネタだった。マダムが怒るのも無理はない。だが、疑わしいやり取りはこれくらいで、後はゲームに誘ったりと普通の交流だった。
「うーん」
要は悩んだ。疑わしいが、送信ミスと言えば納得できる。でも彼氏として恋人の逆バニー姿を他人に見られたくない。何かしらの罰を与えたいところだ。
「シールドさんはエスパーダに好かれてると思ってる?」
「いえ、ただの仲間くらいにしか思ってないでしょう。その写真も誤送信でないかと考えています」
「俺もそう思いたいけど、送った相手がコビット社の社長てのは引っかかる」
要はエスパーダを見下ろした。エスパーダは俯いていた。
「この女はあなたと二股をかけようとしていたようね」
マダムが勝ち誇ったように言う。
「違う違うの。私はシールドのことは全然恋愛対象になったことはないの」
エスパーダは慌てて言葉のナイフを味方になってくれたシールドに突き刺した。
「やはり金が目当てだったのね」
マダムも勘違いして、余計に話がこじれた。このままでは収拾がつかない。
「すいません。エスパーダが失礼な事を……」
とりあえず要はエスパーダの代わりに謝ってみた。
「いえ、はっきり言ってくれて助かってます」
「何を言ってるの! シールドは魅力的なのよ。これだから金にしか目がいっていない女は……」
シールドがモテないことは母としてはイヤみたいだ。どう転んでもエスパーダはマダムにとって憎むべき相手のようである。
「マダム、とりあえずシールドさんが騙される前に気付いて良かったではないですか。これから近付けなければ良いのです」
要は人間関係の損切りを始めた。マダムに嫌われる事は確定なので、これ以上食い下がっても無駄だと判断したのだ。そしてエスパーダに対する罰の意味もある。
「要……」
エスパーダは信じられないといった表情をしている。
「こちらとしても、、婚約者が他の男と関わり合いを持つのは良い気持ちがしないので、私かマダムを挟んで連絡するようにしませんか?」
コビット社の社長一族と関わりを持っておくと何かとビジネスチャンスがあるかと思い、マダムと繋がっておこうと要は考えていた。要のほうが金目当てだった。しかしマダムは表情を軟化させた。
「そうね。あなたはその女より信用出来る。シールドに近付かないように監視していただけるかしら」
「ええ」
要とマダムは連絡先を交換した。