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パニック関連

病原菌が漏れた研究所、外部への漏洩は防ぐが、逃げ遅れた研究者も脱出できなくなる

作者: よぎそーと
掲載日:2022/09/24

 病原菌が漏れていた。

 密閉された研究室の中なので外部に漏れる事は無い。

 だが、外に出ることも出来なくなった研究員の未来も閉ざされた。



 幸い研究員達は汚染されてない隔離室にこもる事が出来た。

 病原菌に感染する事は無い。

 しかし、決して良い状況というわけでもない。



 研究員達も理解していた。

 最悪の事態に研究所にどのような処置が下されるのか。

 彼らはそれを知っている。

 だからわかっている、自分たちは助からないと。



 病原菌が漏れたら、施設そのものが閉鎖される。

 外に漏れないよう、全ての扉が閉められる。

 当然ながら換気口なども。

 空気すらも外に漏らさない。

 当然、外から取り入れることも出来ない。



 全ては病原菌を漏らさないため。

 内部で処理するため。

 その為の対策だった。



 だからこそ、避難は迅速に行わなければならない。

 急いで外に逃げねばならない。

 設置されてる避難路に向かわねばならない。

 まだ完全に閉鎖される前に。



 しかし、残された者達はそれに遅れた。

 気付いた時には全ての通路が塞がれていた。

 逃げる事など出来なかった。



「うわああああああああ!」

 泣き叫ぶ研究員。

 彼は知っている。

 これからどうなるのかを。

 外部から隔離されてるから、外に出られない。

 そして、空気も止まっている。

 待ってるのは窒息死しかない。



「いや…………いや…………」

 座り込み静かに泣いてる研究員もいる。

 彼女はこの状況を受け入れたくなかった。

 優秀な成績をおさめ、栄えある研究員となったのだ。

 その人生と経歴がこんな形でおわるなど認めたくなかった。



「…………」

 茫然自失となってる者もいる。

 この事態を認めたくなく。

 でも、否定するほど夢想家でもなく。

 行く末をイヤでも認められる性格だった。

 だから、何も言えずにただ呆然としていた。



「…………」

 別の者はもっと違った事を考えている。

 どうせ自分たちは死ぬ、それは避けられないと悟っていた。

 ならば、その最後はどうなるのかを考えていた。

 まちがいなく窒息するのはわかっている。

 問題なのは、この死に方はとてつもなく苦しいと聞いてる事。

 どうせ死ぬなら、楽に、苦しまずに死にたかった。

(まあ、二酸化炭素が増えれば)

 呼吸によって吐き出される二酸化炭素。

 これによる死は苦しまなくて良いと聞いた事もある。

 それが事実かどうかはわからない。

 だが、せめてそれが真実であるよう願った。

 どうせ死ぬならば。



 運が良ければ、死ぬ前に救助が来るかもしれない。

 そんな希望もある。

 だが、それが夢想に過ぎない事もわかっている。

 病原菌が漏れた研究所における救助は、病原菌の殲滅がなされてからになる。

 それが出来る薬剤の散布などがなされる。

 だが、今回漏れた病原菌に効果のある薬は無い。

 まだ研究中だったのだから。



 そもそも、薬物への耐性の強い病原菌である。

 そうなるように作られている。

 研究所の目的は、そのような病原菌を作る事なのだから。



 可能な限り、感染しやすく。

 可能な限り、症状・病状が重く。

 可能な限り、感染による症状が長く続く。

 可能な限り、対応できる薬がないように。



 そういった病原菌を作る。

 兵器として使えるように。

 いわゆる生物兵器。

 それを作るのがこの研究所の目的だ。



 今回の病原菌もそんな生物兵器のひとつだった。

 薬などへの耐性が高い。

 というより、効果のある薬がまだ作られてない。

 研究中だったのだが、結果は出ていない。

 だから施設が開放される事は無い。



 おそらく、薬が作られるまで研究所はこのまま閉ざされる事になる。

 それか病原菌が自然に死ぬのを待つ事になる。

 どちらもかなり時間がかかる。

 それまでに酸欠で研究員が死ぬだろう。



 もう研究員達は終わっていた。

 死ぬのは確定している。

 一応生きてるが、それはまだ死んでないというだけだ。

 事実上、死んでるのと同じだった。



 緩慢に迫ってくる死。

 避ける方法は無い。

 運良く病原菌を撲滅する薬が開発でもされない限り。

 あるいは、抗体が即座に開発されない限り。

 どちらも望みは無い。

 病原菌を研究してるこの施設でもそんなものはまだ作られてない。

 他のところで作られる可能性など、あるわけもなかった。



「くそ、くそ」

「イヤだよ…………」

「…………」

 誰もが思い思いの形で絶望していく。

 そうやって気持ちを発散しないとやってられなかった。



 それ暫くすると終わる。

 空気が淀み、呼吸が苦しくなってきた。

 そろそろ酸欠だと誰もが察した。

 せめてもの救いは、意識が気持ちよく途切れていく事だろうか。

 眠りに落ちるように思考が薄れていく。

 それが死の前兆だと誰もが察していた。

 察しながらどうにもならなかった。



 そのまま取り残された研究員達は死んでいった。

 病原菌の中で、唯一の安全地帯で。



 その後、施設は数年ほど封鎖された。

 ようやく開発された薬が散布され、安全になってから解放される。

 当時のままの状態が保たれる施設の中、干からびてミイラになった死体が発見される。

 この時になって取り残された者達は、ようやく外に出る事が出来た。

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