表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生先は死亡フラグ満載の悪役王子でした。〜どうせ死ぬなら好き勝手したいと思う……んだけど上手くいかなすぎる〜

作者: 今澤 麦芽

 目を開けたら、天蓋付きの豪華なベッドの上だった。


 名前を思い出す。ジラハル・エル・ブラン。ブラン王国第一王子。歳は十三、婚約者は居ない。そして、記憶の最古あたりにあるのは『世界樹の木の下で』という学園ものシミュレーションロールプレイングゲームをしていたことだ。その中にある記憶ではっきりと覚えていることがある。それはゲーム進行において、どのヒロインルートを通っても『ジラハルは死亡する』と、言うことだ。


 きっと、前世の記憶持ちで、死亡フラグを回避しないものは居ないと思う。だが、残念なことに俺にはそれは不可能だ。


 なぜなら、ジラハルの直接的な死亡フラグの立ち方、そもそも、なんで死んだのかも知らないのだから。


 悪政を敷く、父たるジェラッド王が原因なのはわかる。なにしろクーデターで死亡する事が多いのだから。ただ、他の死因は不明なのだ。主人公が迷宮攻略を終えて出てきたら、死んでいました的に葬儀の真っ最中だったりと、よほどのマニアでも知ってるか怪しいのだ。わかっているのは、肥太った男で、平民の主人公を見下し、亜人に差別的で、女好き。って位なのだ。


「よし、諦めて好きにしよう。死んだら死んだ、だ。元から死んだ人間だしなぁ」


 そうと決まれば後は流れに乗って、悪役王子らしく好き勝手に振る舞おう。うん、じゃあまずは、女漁りからだな——。



「やべぇ。この世界というか、この時代というか、美的感覚がやべぇ」


 そう、俺は勘違いをしていたのだ。そもそも、ゲームのヒロインはほとんどが平民で、貴族は一握りだったのだ。そして、その貴族のヒロインは『すごく可愛い』『スタイルが良い』のに他貴族からは『醜い』『貴族の恥』などと言われていた。


 つまるところ、この世界は『富=肥ってる』ようは、脂肪がステータスだったのだ。さて、ここで問題です。そんな世界で女漁りをしたとして、前世の趣向そのままの俺はどう思うでしょうか?


 答え。


 可愛い子がいねぇええええええええええ!


 どうするよ? 記憶の中でジラハルは最短で十五の夏季に死ぬ、原因は不明だ。つまり、残りの三年と少しの期間。女好きで貴族令嬢を取っ替え引っ替えしては、捨ててたのくらいしか知らない。そして、今世の記憶ではまだ女性を知らない。


 このままでは、魔法使いどころか予備軍にもなれずに死を受け入れることになりかねない。断じてそんなことは認められない、だって王子特権で好き放題出来るのに、使い所が無いとかになりかねない。


「誰かっ! 誰か居らぬかっ!!」


 華美な部屋の中、そう叫んだジラハルの声を聞きつけた近衛がノックの後、扉越しに声を掛けて来た。


「近衛のサウムです。いかがなさいましたか? 殿下」

「サウムか、入れ」


 俺の声に即座に返事をし、一礼をしてから入室して来た。スラリとした引き締まった身体を見て、俺は閃いた。


「サウム、貴様は確か武闘会で優勝した平民出だったな」

「はっ、申し訳ありません。お近くにわたし以外の爵位持ちが居らず、お目汚しを——」


 ジラハルの言葉に顔を青くし、ひざまづき謝りだしたサウムの言葉を遮り、ジラハルは口を開き、閃いた事を聞くことにした。


「良い、あとそう畏まるな。ふむ、とりあえずサウムよ……平民出ということは、世事に詳しいな?」


「は、確かに平民の事には知識がございます。ですが、殿下に必要の無いことかと」


「それはわたしが決めることだ。では、聞こうか、平民の子女はこの宮殿に居る者のような姿をしておるのか?」


「い、いえ。宮殿に入られて居る、侍女達の様に見目麗しくは有りません。彼女達は平民であっても、大商人の娘達であり、教育、容姿に至ってはかなりの差が有りまする」


「ふむ、その差とはなんだ?」


「その、大変言葉にしづらいと申しますか……」


「よい。続けよ」


「一般の平民は皆、痩せており、とても殿下の御目に掛かる様な容姿ではございません。きっと、殿下が御目にされては気分を害することになるかと」


「ふむ。あいわかった。ではサウムよ、平民街へ案内せよ」


「で、殿下?」


「おい、何を勘違いしている? わたしが求めているのは肯定だけで、その他は無いぞ?」


「——っ! 失礼しました、至急馬車を用意いたします」


「ふむ、よろしい。ではサウムよ任せたぞ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 あぁ〜しまった。そっかぁ、こうなるかぁ、そうだよなぁ。


 そう、内心でぼやきながら死んだ魚の様に、暗く空虚な目で車窓から流れいく景色をジラハルは眺めていた。


 馬車の周りには親衛騎士が十名ほどおり、さらに街行く人々は膝を突き、歩道で首を垂れていた。


 馬の蹄が石畳を叩く音、車輪の転がり、僅かな段差で跳ねる振動で腰に響く痛みに耐えながら、ジラハルは思考を巡らせる。


 身なり、は、まぁ置いておいて。王都にしては平民が痩せすぎじゃないのか? いや、ここが貧民街と、するならあり得るだろうが、貴族門を抜けた先すぐで貧民街とは考えられないよなぁ。


 ジラハルは前世の記憶を思い出そうとして、そこである事に気づいた。

 

 あれ? あのゲーム、シミュレーションロールプレイングゲームだったよな? しかも、学園が舞台で買い物とかもヒロインとのデートイベントでCG回収用だし、そもそも全て選択肢だけでストーリー進んでたよな? というか、平民街へ来るってイベント自体無かったわ……、と。


「やらかしたぁああああっ!」


 完全に無駄、どうしようもなく無駄な事しただけじゃねぇか! ヤバい、コレ詰んだかも。戦闘とかあっても、前世の記憶が全く役に立たないじゃん! 可愛い子としたいだけなのにっ! こうして、ジラハルの死期は少しずつ近づいてくるのであった。


 すみません、短編は単独話数しか投稿できないとは思ってなかったので、連載側に新たに作りました。完結は四話予定となります。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ