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82話 観光


 リパロタ聖法国に着いてから早三日。

 最初の二日間は歓待を受け、自由に行動する事は流石に出来ませんでしたが、昨日からは可能に。

 やっぱり、観光をするのなら自由行動ですね。


 そんな俺達の今日の行動ですが、昼食の前までに希望していた聖属性の魔導書の閲覧を行いました。他の魔導書や歴史書等も見させて頂けましたから、俺にとっては、とても楽しい時間でした。


 魔法の適性は魔導書を読む事と、実際に習得した魔法を使ってみないと判断が出来ません。なので、俺だけではなく、フォルテ達は勿論、同行している全員で見させて貰う事にしました。

 聖属性の魔導書を見られる機会って「人生の内で一度有れば奇跡」と言われる位ですからね。折角の好機を使わない理由は有りません。


 結果ですけど、俺とエクレに適性が有りました。メアリー様やレベッカ達も一緒に見たのですけど、まだ洗礼式前なので判りません。

 洗礼式の前に魔法を習得し、使用していた自分を基準にしてはいけません。俺は非常識(イレギュラー)なので。

 そう自分で言い切れる位には、世の中の基準にも馴染んでいると言えます。


 ただ、年少組の三人の様子を見ている限りでは、将来的に適性が有ると判る様な気がします。

 これは俺自身の経験に基づく事なので、一般的な感覚や意見とは違う訳ですが。

 魔導書を読んだ際に、感覚的に(・・・・)理解が出来る。

 その兆候が窺えると。少なからず、習得の出来る程度の最低限の適性は有ると思っています。

 実際に、適性が有ると判った俺とエクレと同様の感覚を三人も感じていたみたいですからね。

 ただ、下手に騒ぎになっても困りますから、当然最重要機密扱いです。

 幸いにも陛下達は同席してはいませんでしたし、各国の国王夫妻や次期国王夫妻は選定の儀を終えてリパロタに渡って閲覧する事が一つの慣習なので。再度、魔導書を手に取る事は有りません。


 昼食を済ませた後は街に出て皆で観光を楽しむ。明日からは俺達はダンジョンに挑む予定なので。

 メアリー様達は御留守番となります。陛下達にもレベッカ達の事は頼んであるので大丈夫でしょう。二人の事は以前から可愛がってくれていますから。俺達にしても心配はしていません。不安が有る点は周囲のレベッカ達への接し方ですね。その点だけは俺達から口出しするのは難しいので。陛下達に期待する事になってしまいます。


 それはそれとして。

 メアリー様達に不満等が無い訳では有りません。その辺りは仕方の無い事なので。

 ただね、俺達ですら棲息域やダンジョンの規定に関しては守っていた事も有りますからね。気持ちは理解していますが、我慢して貰います。

 万が一にも何かが起こると大問題ですから。


 その分、今日は三人が主役な様なものです。

 尚、三人が洗礼式を済ませたら、再びリパロタを訪れて、一緒にダンジョンに挑む約束をしました。勿論、法王様の了承も得ています。




 ダンジョンへの挑戦を初めてから三日目。

 リパロタに存在する五つの遺跡型のダンジョン。その最後を、つい先程、俺達は攻略し終えた。

 此処で得られる物は全て得た。

 ただ、その異常なハイペースさは話題になった。不可抗力ですが、仕方が有りません。人の口に戸は建てられませんから。

 俺達にしても、その位の事は今更気にしません。噂をされたり、注目をされる事を、です。決して、自重しないという訳では有りませんから。そんなに無言の圧を掛けないで下さい。判っていますから。

 ──という言い訳を我が家のメイド長にする。


 五つのダンジョンの難易度が低い訳ではなくて、単純に俺達の実力が高過ぎるんです。

 何しろ、参加した全員がスキルを獲得した上で、三日と掛からずに踏破した訳ですから。

 それは仕方が無い事だと思います。そして、そのメンバーの一人に貴女も入っていますからね?。ようこそ、非常識者(此方等)側へ。

 ──冗談ですから、拳を握らないで下さい。


 その日の夕食前。法王様から頼んでいた船の方が用意出来た事を伝えられました。

 俺達に同行するのはフロイドさん達三人だけで、エレンさんとミーファさんはメアリー様達の護衛に残って貰います。メレアさん達は戦闘も出来ますが本職はメイドですからね。それが同行の理由です。

 まあ、表向きは(・・・・)、ですけど。




 翌朝。まだ港を包む様に深い霧が立ち籠める中、俺達は船に乗り込み、出発します。

 「見送りは要らないよ」と言ったんですけどね。メアリー様達が反対したので許可。陛下が滅茶苦茶眠たそうにしているのが印象的でした。


 子供五人に大人三人。

 それで操船可能な大きさで、寝起き可能な船室を持っている、という条件を見事にクリアした船。

 デザイン等は度外視で機能性を重視しています。その為、非常に扱い易いので助かります。


 それでも、普通は出港しない悪条件なんですが。深い霧の中だろうとも俺にはスキルが有りますから問題無し。【方向感覚Ⅹ】等のスキルは冒険者には欠かせない物ですから。


 時間が時間なので、操船を行う俺とフロイドさん以外は船室で一旦御休みなさい。

 日が上り、朝食になるまでは体力・気力を温存。原作(ゲーム)とは違い、移動中でも消耗はします。無限では有りませんからね。休息は大事です。




 フォルテ達が起き、用意してくれた朝食を済ませ目的地を目指して船を進めます。

 ええ、ゲームみたいに直ぐには着きません。



「なあ、アルト様、結局の所、アガーラタってのはどういう場所なんだ?

彼方此方旅をしていたが、初めて聞いた位だ

それなりに理由が有るんだろ?」


「一応、念の為に言っておくけど、規制情報(・・・・)だから

それだけは忘れない様にね」


「……聞きたくなくなったなぁ……」



 自分から訊いておいて、そう返すと嫌そうな顔を見せるフロイドさん。

 でも、其処の所は大事だから。


 “聖地・アガーラタ”。その存在自体は各国でも秘されてはいませんが、情報規制されています。

 そうされている理由なのですけど。別に禁断の地だとか、死の領域だとか、では有りません。いえ、ある意味では、それに近いのですが。

 それは確かに実在し、その位置は判っています。しかし、辿り着けた者は居ません。

 居ないのに何故、それが判るのか。

 答えは単純。【遠見】のスキルにより、船上から確認する事が可能だからです。


 視認は出来る。けれど、辿り着く事は出来無い。

 そんな場所である事も有り、過去、数多の無謀な冒険者達が挑み、散って逝った。

 冒険者だけではなく、貴族や商人、国軍ですらも手に入れようと考え、敗れ去った。

 そういう負の歴史を作った場所であるからこそ。現在では近く者が居ない様に情報が規制されていて知る者は各国の最高権力者等の一部だけです。


 俺が知っているのは古い文献を読んで──という事になっていますが、原作(ゲーム)の知識です。

 勿論、嘘では有りませんし、ちゃんと証明出来る様にアガーラタの事が記された文献は所有していて提示する事も可能です。


 また、そう話していたので、リパロタの所蔵するアガーラタ関連の書物等も見せて頂けました。

 やはり、現地(・・)の情報というのは大事ですからね。大変、参考になりました。


 そのアガーラタですが、其処はフォルテにとって大事は場所です。そう、その地にてフォルテの力は目覚める事になる訳です。

 原作(ゲーム)では後半パートを折り返し、自分の船を得て自由に海を移動出来る様になってから行ける場所。その為、当分は先の事だと思っていました。

 ですから、今、このタイミングで行けるか否かは俺自身も半信半疑だったりします。



「メルーディアからセントランディに向かう海流を基準にすると、距離としてはリパロタからだったら半日も有れば着ける位だね

勿論、実際には違う海流だから移動時間も変わる」


「──という事は、かなり掛かるのか?」


「いや、最接近(・・・)出来る地点までは半日程だよ」


「……最接近って、着けないのか?」


「さっき、そう言ったでしょう?

だから、聖域(・・)って呼ばれてる訳」


「…………其処に、行こうとしてるんだよな?」


「話を聞いて不安になるのも判るけどね

先人達と同じ様な無謀な真似はしないよ」


「それじゃあ、どうするんだ?

近付けないんだろ?」


「そう、それだけアガーラタは特殊な環境に有る

海流任せで船を進めても辿り着けないし、帆に風を受けて風任せでも辿り着けない

魔法で船を操作しても辿り着けない──というか、何故か、それを遣ると、どんなに頑丈に造ろうとも船が耐え切れずに壊れて沈没してしまう

そういう事が多々起こった為、情報規制された訳」


「………………着ける気がしないんだが……」


「俺も絶対(・・)行けるとは思ってないよ

ただ、安全を確保しつつ、試してみる価値は有る

──と言うか、あの場で他に思い付かなかったから仕方が無いでしょ……

保留に出来る状況でもなかったし……」


「あー……まあ、確かになぁ……」



 俺が「船を用意して欲しい」と言った時の状況を思い出し、フロイドさんも納得する。

 あの場で絞り出しただけでも褒めて貰いたい。


 だから、「着けたらいいな」位の気持ちです。

 そういう意味では失敗しても構いません。


 ただ、孰れは行かなくてはならない場所なので。今回は下見、或いは事前調査みたいなものです。

 原作(ゲーム)でだと、細かくは設定されてはいないので。少しでも情報収集出来れば十分です。



「それで、どう遣るんだ?」


「海流と風、其処に人力(・・)を組み合わせる」


「人力って……魔法で動かすと危ないんだろ?」


「そう、だから(・・・)、人力でね」



 そう言って【亜空間収納】から取り出したのは、今日の為に造った巨大な(オール)

 いつでも何処でも必要が有れば木工が可能な様に木材のストックは常にして有ります。今回の挑戦を思い付いてから夜な夜な工作していました。だから同室のフォルテ達は驚いてはいません。



「人力って……文字通りの人力なのか……」


「普通なら難しいと思うけど俺達の能力だったら、そんなに無理難題って訳じゃないと思う

その為に、こうして適した船を選んだ訳だしね」


「余計な同行者を付けない為じゃなかったのか」


「それも無かった訳じゃないけどね

一番の理由は此方

勿論、少しでも危険を感じたら止めるよ

途中止めなら海流に乗って離脱する形になるから」


「──という事は、アガーラタまでは海流は行かず途中で逆向きに変わるって事か……」


「聞いた限りでは、不思議な海流なのですね」


「まあ、上辺(そこ)だけを見るとな

例えば、このドーナツみたいに、アガーラタを囲む外壁みたいに海中に山脈が有るとする

そうすると、途中まではアガーラタに向かう海流が打付かり、海底から海面に向かって流れが上昇し、ひっくり返る様に海流が逆転する

こう考えると、一応は海流の説明は出来る」


「成る程な……確かに、それなら、そうなるな」


「流石はアルト様です」


「ですが、それなら帆に風を受ければ進めるのでは有りませんか?」


「ずっと風が吹いていればね

それに風向きが常にアガーラタに向かっているって訳でもないから、現実的じゃない」


「…………そうなると、自然と手段は魔法になる、という事ですか……」


「魔法を使うと船が耐えられない、という原因にも仮説としては幾つか考えられる

例えば、周囲のモンスターが反応して襲ってきて、それが原因で船が沈んだ可能性は有るんだろうし、アガーラタを中心にした周辺一帯がダンジョン(・・・・・)って可能性も考えられる

ダンジョンの中なら、そういう(・・・・)事も起きる」



 そう話した所で、俺は視線を船首の先へ向けると皆も続き、小さく息を飲む。

 視界の中、水平線に浮かぶ様に幽かに見える影。神秘なる聖域・アガーラタが姿を見せた。




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