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75話 冒険者


 モデフ子爵領・マルダンの森で発生した死樹病。その調査により発覚した原作(ゲーム)のラスボスの内の1体であるヘフォルトパスが存在している事実。

 そして、この事実は残る11体も同じ様に世界の何処かに存在している可能性が高いという事。

 誰にも話せないし、説明しようもない内容だけに迂闊に口にする事は出来無いし、確認も出来無い。だから、基本的には現状維持しか出来ません。

 まだラスボスと戦える程、強くは有りませんから兎に角、時間が必要です。


 提出した対応策等に陛下達が賛成してくれたので当面は事態が急に動く事は無いと思います。

 ただ、絶対ではないので油断はしません。自分を含むて、フォルテ達との準備に努めます。


 そんなこんなで、時が過ぎ去るのは早いもの。

 本日はゼホゥの月、10日。

 ユー姉さんの結婚式の為、再びハルモナ王国に。まあ、実際には、まだ日数が有る訳ですけど。

 何しろ、緒準備の為に先入りするユー姉さん達と一緒に来ている訳なので。早過ぎる位です。


 ただ、これには、ちゃんと理由が有ります。

 頼んでいたレベッカとシルファの両親の足取りの調査報告を聞き、実際に俺達で確認に行く為です。結婚式の前に、はっきりさせておきたいので。

 勿論、二人は連れて行きませんけど。

 その為に──という訳では有りませんが、一緒にメアリー様にも来て貰っています。二人は御付きのメイドという立場ですからね。仕事で拘束します。

 不満そうにしていましたが、理解はしています。だから、昨日は三人一緒に甘やかしました。


 それから、先日。無事にアンとエクレも洗礼式を終えたので冒険者登録も完了。初心者向けの場所で軽く肩慣らし(・・・・)も済ませました。

 詳細は聞かないで下さい。色々とアレなので。


 今回はフロイドさん達も抜きで夫婦だけの行動。ある意味では、本当の冒険者デビューです。



「思っていたよりも判るものなのですね」


「冒険者の数は多いって言っても管理出来無いならギルドは存在価値を自ら放棄する様なものだしね

そういった意味でも、依頼に関する情報や冒険者の動向の情報の収集能力は組織としては必要不可欠、生命みたいな物だから

冒険者同士にしても色々な情報交換は重要な事

それが依頼の成功・失敗に関わるし、生死を分ける

だから、情報自体は集まるんだよ」


「一応は管理組織であるギルド側は兎も角としても冒険者の方の反応は、もう少し冷めているものだと思っていましたから意外でしたが……

確かに、言われてみれば、そうですよね

情報を独占してもギルドから追及されれば冒険者は情報を出さざるを得ません

そうなってからでは同じ冒険者からの不評を買い、信頼自体も落ちる事になります」


「それよりは、ですか……意外と合理的ですね」


「まあ、荒くれ者(・・・・)ってイメージは有るしな

実際には少数派──と言うか、極少数なんだけど

少なからず居るって事自体が問題でも有るからな

その辺りはギルドにとっても悩みの種みたいだ

問題を起こせば資格の剥奪や、賞金首(手配)も出来るけど態度が悪いだけだとかは個人の話だからな」


「その一部の問題有りが貴族絡みなのは恥ですね」



 そう一刀両断にするアンの全く歯に衣を着せない素直な言葉には苦笑するしか有りません。

 まあ、そんな人だから(・・・・・・・)、追い出されたりしている割合も高かったりしますが。

 その実家は実家で迷惑を被り、評価を下げます。だから、貴族は教育熱心だし、可能な限り、各家が婚姻を結んだりする事で繋がりを強くする訳です。直ぐには切り捨てられない様にね。


 そんな諸事情は兎も角として。

 レベッカとシルファの両親の足取りは判明済み。何方等もDランク冒険者という事で、比較的情報は集め易かったとの事。

 フロイドさんの話では、二人組みで、まだ若く、信頼と実績も有る将来を期待される有望株らしく、ギルドや冒険者からは惜しまれていたとの事。

 ……別に、頼んでいた両家を信頼していなかったという訳じゃ有りませんよ?。ただ、貴族の伝手で遣る情報収集と、冒険者の情報収集とでは違う為。多角的な情報収集は大事ですからね。両家に対して他意が有る訳では有りません。


 さて、話は少し変わりますが。

 冒険者の収入源は大きく二つ。依頼を受け、その達成による成功報酬が一つ目。もう一つが素材や装備品・アイテム等を獲て、売却したりして得る。

 素材はモンスターから獲られる物だけに限らず、鉱物等の天然資源も含まれています。

 しかし、当然ですが、そういった物が有る場所は殆んどがモンスターの棲息域で、危険が一杯です。簡単には獲られません。


 一方で、装備品・アイテムはモンスターの棲息域には殆んど有る事は有りません。亡くなった人達の遺品(・・)以外は基本的にね。

 そんな装備品・アイテムですが、原作(ゲーム)と同じ様にダンジョンの宝箱から獲られる訳ですけど。

 このダンジョン。大きく分けて二種類有ります。一つ目は伝来の魔道具の様に先人(誰か)が造っただろうと考えられる設計(・・)の意図が窺える物。

 通称、遺跡型ダンジョン。

 建築物としての要素が少なからず有る為、実際に内部を少し見れば判るそうです。俺達はまだ入った事は有りませんけど。

 特徴としては罠や仕掛け(ギミック)が多い事。当然ですが、人工物な訳ですからね。その辺は試練という意味も有るのが普通だと思います。


 もう一つが自然形成されるダンジョンで、通称は自然型ダンジョン。ええ、そのまんまです。

 此方等はモンスターの棲息域の中でも人が長い間入らずに放置されると生まれ(・・・)ます。

 一説には「棲息域の魔素はモンスターという形で消費され、モンスターが倒される事で巡回する」と考えられており、それが長期に渡って滞った結果、行き場を失い、ダンジョンを形成するのでは、と。そういう仮説が有力視されています。

 個人的にも頷ける話です。

 ただ、この世界の秩序(メカニズム)は未だに解りませんから。謎が解ける日が来るのかも謎です。

 だから、考え過ぎない様にはしています。


 ──というのは置いとくとして、話を戻します。


 前者のダンジョンで装備品・アイテムが獲られる宝箱が存在する事は理解出来ると思います。

 しかし、実は後者にも宝箱は存在します。しかも前者よりも一攫千金(ギャンブル)要素が強いんです。

 同じ宝箱ですが、前者は内容が固定。ランダムの要素は有りますが、統計を取ればリスト化が可能。獲られる一覧表が既に有ります。

 前者にはスキルの獲得の件も絡んでいますから、ゲーム感が強い事は否めません。


 一方で、後者の宝箱は開けてみなければ判らないという物で。低級品やモンスターといったハズレの要素も有る反面、激レアな代物が手に入る事も。

 また、後者の場合、元々の宝箱の数は少ない上にゲームで言う所の“宝箱の再設置”は有りません。つまり、早い者勝ちなんです。

 前者は時間経過で再設置が有ります。出現場所はランダムなので何処になるかは判りませんけど。


 これらの事から判る様に、冒険者にとって依頼を熟す以外の収入源は命懸けな訳です。

 だから、何時ぞやの盗掘犯が冒険者だったという事実も別段驚く様な話では有りません。


 ──とまあ、そんな訳でして。

 二人の両親も冒険者として挑んだ(・・・)訳です。

 ただ、無謀な訳でも、欲張った訳でもない。

 それでも、時に気紛れにダンジョンは牙を剥く。そんな不運(・・)も冒険者には付き纏う訳です。

 「彼奴等は運が無かった」と。たった一言で納得出来てしまう程に。有り触れた悲劇なのだから。



「ですが、アルト様

その“アヴォージェウの魔窟”というダンジョンはギルドの定めているランクはEなのですよね?

僅か一つとは言え、近そうですが、その差は大きく違うのでは有りませんか?」


「ティアの言いたい事は判るよ

ランクの違いは明確な差では有るからね

ただ、「冒険者とダンジョンの評価は直結する」と言ってはいても、全く同じという訳じゃない

それに、アヴォージェウの魔窟は自然型ダンジョンだから内部構造やモンスターにも変化が生じる

遺跡型ダンジョンとは違うから内部情報の信頼度は鵜呑みにすると命取りになる

勿論、二人の両親が侮ったって事じゃない

話を聞く限りだと、そんな印象は受けなかったし、慎重さも引き際を見極める判断力も有る感じだった

だけど、それでも思い掛けない様な不運というのは誰にでも唐突に起こり得る事だからな

こればかっりは、ただただ受け入れるしかない」


「非情と言えば非情ですが……」


「それが冒険者の現実、という事ですか……」



 自分達も同じ様になる可能性に身を置いていると嘆いている訳でもなく、憂う訳でもない。

 どんなに感情では納得が出来無い事であろうとも現実から目を背ける事には何の意味も無い。

 そして、既に判ってはいる事だとしても。

 二人の両親の最後を俺達は確かめ、伝える。

 それだけが二人にして遣れる事で。二人の両親に捧げる事の出来る弔いの花だという事。

 まあ、それも結局は自己満足なんですけどね。


 ただ、奇妙な偶然だと話を聞いて思いました。

 冒険者である以上、ダンジョンで亡くなった事が重なってしまっても不思議には思いません。

 でも、少しズレているとは言え同じダンジョンで近い時期に、というのは少し気になる情報だったりしますから、単なる偶然ではない疑念が生まれる。勿論、その辺りの情報は調べて確認していますが。他には気になる情報は無かった為、特に意味は無く本当に偶然だったんでしょう。



「アルト様、そのアヴォージェウの魔窟では他より確実な実入りが期待出来るのでしょうか?」


「ん?、いや、聞いた限りだと、それ程大きな差は無いと思うけど……って、そうか、それも変だな」



 フォルテに訊かれて気付く。

 アヴォージェウの魔窟が発見されたのは近年だと聞いてはいるけど、それでも十年も前。冒険者達が我先にと踏み込み、調べ尽くされている。その事を彼等が知らない訳が無い。無知な新人ではないし、Dランクに成っている訳だから。

 宝箱の再設置が有る遺跡型とは違い、自然型なら宝箱を求めて、という可能性も低い。

 有るとすれば、素材狙いか、その手の依頼で(・・・)


 だから、もしも挑んだ理由が、それ以外(・・・・)でなら。少しばかり話が変わってくる。

 変わってくるはくるんだけど……有り得るか?。ギルド側が不都合な情報を隠蔽した可能性は無い。俺達が普通の新人冒険者なら疑いも残る。

 しかし、ミロード子爵家とペルメーラ子爵家に、フロイドさん経由とは言え、俺達からの情報提供の要請に隠蔽なんて遣ったら自滅行為にも等しい事。ギルドを疑う必要は無い。


 それなら冒険者達が情報を秘匿している?。

 此方の方が可能性としては考えられる。だけど、バレた時には破滅する。それだけ、変化や異常には冒険者は敏感だし、ギルドへの報告や他の冒険者に警告する事は怠らない。

 誰かの意図(・・・・・)が有るとは考え難い。


 そうなると……………………あれ?、何だろう。これと言った理由が思い浮かばない。

 冒険者としては俺自身は新人以下だ。実力的には新人らしからぬ域に居るとしても。それが原因で、普通の冒険者の思考からは外れてしまう。

 困ってフォルテ達を見るけど……一様に困惑顔。うん、俺の所為だね。本当に御免。



「……取り敢えず、実際にアヴォージェウの魔窟に行ってみてからだな

今のまま推測しても理由は解りそうにないし」


「そうですね、少しでも情報を得られれば何かしら見えてくるかもしれませんね」



 誤魔化した訳では有りませんけど。俺に同意するフォルテに続き、アン達も頷く。

 まあ、今更引き返すという選択肢は無いですし、出直しても新しい情報は得られないでしょうから。進んだ方が得られる情報は有る筈ですから。有益かは別にしてもね。




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