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74話 報告


 キゥレの月、24日。

 一日の休息──表向きには移動──を経て陛下に報告する為に王城へと遣って来ている。

 通常であれば、謁見の間を使用するんだけどね。今回は事が事なので陛下の執務室に通されます。

 尚、同行者はフロイドさんだけです。

 メレアさん達にはモデフ子爵領の宿にて待機して貰っていて、ティアは戻ってフォルテ達に合流し、簡単にですが事前説明を頼んで置きました。後から詳しくは話しますが、状況によっては動く事になるかもしれませんからね。


 それにしても……国王の部屋に来慣れているのは王国貴族的には、どうなんでしょうか?。

 それはまあ?、未来の──と言うか、そうなると確定している義父が相手な訳ですが。

 それはそれ、これはこれだと思いませんか?。



「済まぬな、待たせた」


「いいえ、此方等が急に来てしまった訳ですから、御時間を作って頂けただけで十分です」


「依頼をしたのは此方等だからな、当然の事だ」



 そう仰有って、「これで終わりだ」と用意されたティーカップを手に取られる陛下。

 飽く迄も、責任は自分が主体だと主張される姿は流石は一国を背負う方だと思わされます。

 俺には真似出来ません。

 「世界の命運を背負ってるんじゃないのか?」と傍観者的な立場だったら思うかもしれませんけど。そんな意識は微塵も有りません。

 飽く迄も、結果的に(・・・・)、そうなるだけです。

 誰が望んで、そんな大き過ぎる物を背負うのか。少なくとも俺には理解出来ませんよ。

 俺が戦う理由は、妻達との未来の為なので。

 世界の事なんて知りません。


 ──とかいう愚痴は置いといて。

 陛下が一息吐かれたので本題に入ります。



「それで、結果は?」


「はい、死樹病と見て間違い有りません」


「──っ!、そうか……」



 陛下を始め、報告に立ち合う父上達数名の貴族の表情が一様に険しくなります。

 それも当然と言えば当然でしょう。何しろ、まだ死樹病は定義されたばかり。未知の部分が大半で、その明確な対処方法も確立されてはいません。

 そして、俺自身が、そう説明していますからね。頭を悩ませるのは仕方が無い事です。



「ただ、現状では様子見になります」


「……と言うと?」


「此処からは最重要機密情報として扱って下さい」


「……判った、決して公表等はしない」


「有難う御座います

マルダンの森にて確認された死樹病と思しき現場を調査した際、地面には異常が無い事に気付きました

しかし、森の中や上空に目立った異変は無し……

其処で、地下を調べてみた所──死樹病の原因だと思われる存在を目にしました」


「──っ!!、まさか、モンスターか?」


「正確な事は私達にも解りません

何しろ、交戦する間も無く逃げられましたので」


「逃げた?、いや、その前に地下なのだろう?

どう遣って調べたのだ?」


「土魔法を使って地面を一定の大きさに切り取り、それを魔法の道具袋に収納する事で縦穴を」



 そう説明したら何とも言えない顔をされました。何故ですか?。かなり、合理的な方法ですよ?。

 ──と考えていたら、フロイドさんが肩を小さく指先で叩き、「普通は大量の土を収納しようだとは考えたりしないし、考えも遣らない」と耳打ち。

 それを聞いて陛下達を見ると──首肯された。

 …………意外な事実が判明しました。

 ただ、「そんな方法が……」や「成る程、確かに作業効率が上がる……」や「考えもしなかった」等呟く声が聞こえて来ます。

 遠く無い未来、非常識は常識に変わります。



「ゴホンッ……それは兎も角としてだ

その縦穴は大きく作ったのか?」


「いいえ、一応、途中や地下で戦闘になる可能性も考慮していましたので動ける程度に、です

狭いので武器の使用は殆んど考えてはいません

短剣を使う程度ですが、基本は撤退優先策でした

その為、モンスターが居れば逃がさない様に縦穴を即座に埋める考慮し、準備してはいましたが……」


「逃げられてしまった、か……

そのモンスターは非常に小さかったのか?

或いは、途轍も無く素早かったのか?」


「いいえ、そうでは有りません

相手は球体型の魔法陣(・・・・・・・)から出ていました(・・・・・・)

そして、此方等が見付けた途端に引っ込んで(・・・・・)しまい魔法陣も消えてしまいました」



 そう話すと、一様に顔を手で覆う陛下達。

 ええ、そうなる気持ちは判ります。言われた通り想像してみても「何それ」な状況ですからね。

 でも、嘘偽りは有りません。話してはいない事が有るというだけで。全て、事実ですから。


 陛下達の反応の最たる理由は魔法陣の件。

 俺が嘘を吐いていないなら、それは転移した(・・・・)と考えるしかないからだ。

 現状、転移魔法や空間接続魔法の類いは修得者も修得方法も見付かってはいない。

 所謂、想像の域を出ない伝説の魔法とされているのが一般常識だったりする。

 そんな中、モンスター(・・・・・)が使う(・・・)となれば。

 頭を抱えたくなるのも当然の事でしょう。

 俺達も調査終了直後は同じ感じでしたからね。


 尚、転移魔法は存在しています。まあ、原作では(・・・・)という一言が付きますが。

 俺個人は有ると確信しています。だって、原作に存在しなかった【亜空間収納】(スキル)が有りますから。

 自分の知らない空間系の魔法やスキルが存在する可能性は高いと考えています。だから、原作に有る魔法・スキルは有ると思います。

 存在しないのは一部の能力値(ステータス)関連の物。

 効果自体が現実的には曖昧になるものは使えない事になりますからね。必然だと言えます。



「……アルトよ、その目撃したモンスター、という事で話を進めるが……

再び同じ場所に戻ってくる可能性は?」


「無いとは言えません

しかし、可能性としては無いに等しいかと」


「そう思う根拠は?」


「私達が辿り着いた場所は直径3ミード程の球状の空間が作られていました

その逃げた存在が作ったのでしょう

ただ、地上に続く穴が有った訳では有りませんから取り除いた土は別の場所に移動させたのか、或いは食べて消化(・・・・・)したのか……これは飽く迄も予想です」


「ふむ……まあ、そうであろうな」


「その上で、私達の目の前で戦いもせず逃げました

ただ、それだけの能力を持つ存在が、土を掘り進む私達の存在に、その空間に辿り着くまで気付かないという事が有るでしょうか?」


「……気付いていて、無視していた、と?」


「正確には、私達が戦闘の意思を見せた事を感じて逃亡したのではないかと考えています

そうだと仮定をすれば、同じ場所に戻ってくる事は考え難いと思います

一応、その空間も含めて埋めて有りますので」


「…………成る程な、それならば同じ場所は無いか

だが、それは同時に別の場所に危険が有るという事にもなるのではないのか?」


「その可能性も否定は出来ません

しかし、此処で根本的な疑問に戻ります」


「それは?」


「その存在は何をしていた(・・・・・・)のか?、です」


「……どう考えておる?」


「先ず、私達が目撃した姿というのが木の根っこの様な物でした

それが、まるで蛸の足の様に動いて、魔法陣の中に引っ込む様にして消えました

恐らくは、本体は別の場所に居ると思われます

それを踏まえた上で、になりますが……

見た目から考えるなら、養分(・・)を吸っていた

そう考えると森が砂漠化する事にも納得出来ます

植物の様な生態だとするのなら、まだ成長途上(・・・・・・)……

直ぐに直ぐ、脅威になるとは限りません

少なくとも、何処かで、成長に必要な養分か何かを得なければならない……

その兆候が死樹病という形で出ている、と考えれば見付ける事が確実な対処方法だと言えます」


「確かに……見付けてしまえば邪魔は可能か……

その際、交戦した場合、どの程度を想定する?」


「……正直、情報が無いので難しいです

ですから、倒すよりも邪魔をし、撤退する

攻撃するにしても接触する最初の一撃のみ

そうすれば、悪戯に被害を出す事は無いかと

逆に、下手に手を出す方が愚策だと思います」


「成長する前に叩くのは危険か……

しかし、放置しておける存在ではないのだが……」


「これも飽く迄も推測にはなりますが……

過去、死樹病が起きた原因が同じ存在だとするなら近い時期、或いは時間が経っていても、目立つ様な存在が目撃されてはいない事が気になります

ですが、もし、それら全てが同一個体(・・・・・・・)によるもの、だったとするのであれば……」


「……──っ!?、過去の件は成長過程(・・・・)かっ……」



 そう仰有った陛下に同意する様に頷く。

 実際には、そういう想像をして貰える様に陛下の思考を誘導していた訳ですけど。

 正直、誰よりも陛下に危険性を理解して貰わない限りは不慮の事態が起こり兼ねません。


 そして、そう陛下が判断出来るという事は父上を含む同席する方達にも同じ事が言える訳で。当然、場の空気は滅茶苦茶重苦しくなります。

 判っていましたし、心構えもしていましたけど。この空気の中で平然としているのは辛いですね。

 まあ、俺達は直に情報を得ていますし、その上で報告する為に事前に彼是と推測もしている訳なので怪しまれたりはしませんけど。

 出していない情報が有る、という後ろめたさから居心地が悪く感じてしまうんでしょうね。

 こういう時は気にしたら負けなので無視をするに限る訳ですが。開き直るにも精神力が必要です。



「……まだ猶予は有るという事で良いのか?」


「恐らくは、ですが……

抑にして情報が不足しています

しかし、公にして情報収集も難しいですし、極秘に国内外で情報収集するにしても限度が有ります

まだ今回の死樹病は予兆(・・)の段階です

ですが、成長し成体(・・)となったならば、明確な影響が出る筈です

その時、迅速に動ける準備をしておく方が、色々と考えられる中では効率的で建設的だと思います

勿論、その準備の中には私達自身も協力致します

何しろ、唯一の目撃者な訳でから」


「……判った、この件に関しては現状は経過観察、その一方では準備を怠らないとする

アルトよ、済まぬが全体の指示を頼めるか?」


「私が表立って動くと目立ちますので、出来る限り早く対応策の草案と必要な準備事項を纏めた計画書を提出致します

それを基に陛下が御決断頂く方が進み易いかと」


「御主が主導では、まだ動きが滞る、か……」


「動いて下さる事とは思いますが、其処に不必要な思惑(・・)が介在する可能性は否めません

貴族らしい(・・・・・)話では有りますが

本件の場合、そういう不安材料は極力削ぐべきです

それによって不手際や準備不足となれば笑えません

その要因となった方々を責め、罰しても時間を戻す事は出来ませんし、即座に補えもしませんので」


「……御主なら今直ぐにでも国王が務まるな」


「それはせめて、孫に(・・)して下さい」



 間髪入れずに切り返すと陛下も含めて苦笑。

 いや、冗談じゃなくて。真剣(マジ)な話ですから。

 俺は国王だなんて、絶対に遣りませんからね?。妻達とイチャイチャしながら、のんびり生活したいだけなんですから。面倒臭い事とかは御断りです。頑張っているのは今だけ。将来は楽をします。

 メアリー様との子供も一人だけじゃないですし、後継ぎに相応しい子が一人は居ると思いますから。俺に振るのは止めて下さい。


 ……フロイドさん、「いや、それは無理だろ」と言わない──というか、そう成ったら一蓮托生だと判っていますよね?。フロイドさんに任せる仕事、滅茶苦茶増やしますよ?、本気(マジ)で。


 そんな俺の熱意が伝わったのか、フロイドさんが真面目な顔で「悪かった」と視線で謝る。

 御互いに息苦しさ・堅苦しいのは苦手な身です。その辺りが楽だから主従関係が成り立っている事を忘れない様に御願いしますね。



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