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49話 骸骨


 フロイドさんと話しながら待ち合わせの御店へと到着すれば、何も言わないまま奥に案内されます。俺、初来店ですけど?。

 そんな疑問を察したのだろう一流の店員の女性は笑顔で「街の者はアーヴェルト様や皆様の御滞在は存じ上げておりますので」と一言。

 まあ、俺達は兎も角、メアリー様が居る訳だし、王家の別邸が有る街ですからね。其処で生活を送る地元民というのも……という事ですか。

 勿論、直接訊いたりはしません。話し難い事等も職務上・立場上、色々と有るでしょうから。


 案内されたのは二階の奥。予約制だろう、他とは明らかに隔離されている位置から考えても特別室。普段使いされてはいないでしょう。ただ、それ故に管理も準備も完璧に行っている筈です。

 この御店はメアリー様の希望だった訳ですけど。如何に王族であろうと昨日今日の思い付きで直ぐ様予約が取れるとは思えません。

 そう考えると……仕込み(・・・)は一ヶ月以上前ですか。まあ、新年会の事も有るし、もっと前からかもね。本当に……御苦労な事です。



「アルト様!」



 案内された部屋で待っていた皆。この中でも一際嬉しそうに笑顔で迎えてくれたのがメアリー様で。俺を見て直ぐに席を立って小走りに駆け寄る。



「アプロベリーのケーキは美味しかった?」


「──え?、み、見ていらしたのですか?」


此処に(・・・)証拠が残ってるからね」



 そう言いながらメアリー様の顎を優しく掬い上げ唇に付いたソースを舐め取る様にキス。

 唇を離せば、数秒遅れてメアリー様が真っ赤に。人前という事も有りますけど、ソースが付いていた事の方が恥ずかしいのは育った環境が故でしょう。とても可愛い反応ですけどね。


 フォルテ達とも順番にキスをしてから、着席。

 フロイドさんからの尊敬の眼差しは無視します。関わっても面白い話には発展しませんから。

 メレアさん達も居て、女性が七人。既に盛り上り大分、出来上がっているみたいです。

 部屋まで案内して来てくれた店員の女性が手早く部屋の隅──入り口の死角に聳えていた御皿の塔を物音一つ立てずに回収して行きましたから。

 肩慣らし(・・・・)は終わっている事でしょう。

 俺とフロイドさんもメニューを見て注文。何気にフロイドさんは甘党ですし、俺は食べ歩きとか好きですからね。遠征中も地味に楽しんでいました。


 それにしても……我が家の女性陣は食べた分が、全て胸に栄養として送られている気がします。






「いや~、マジで美味かったな~」


「兄様、御行儀が悪いですよ?

幾らアルト様が許可していても、人目が有る以上は少しは気にして下さい」


「アン、その格好で言っても説得力は無いぞ?」



 うん、俺もフロイドさんの言う通りだと思うよ。俺と「はい、あ~ん」をしながら食べさせ合ってる合間にフロイドさんを注意してもねぇ……。しかも膝の上に座って、だし。説得力は無いですよね~。

 ただ此処で「私達は夫婦ですから」と開き直れるアンの方が一枚上手だと言えます。

 尚、フォルテ達とも各々に遣って、三周目です。俺の羞恥心は疾うに亡くなられましたとも。



「それで、頼んでおいた品物は揃いそう?」


「ああ、明後日には全部揃う予定だ

しかし、結構な量が必要になるものなんだな」


「当事者との縁戚関係や付き合いの有無に限らず、王国内の全家を招く事が慣習らしいからね

ある意味では平等だし、公平に機会を与えてるって考えれば余計な不満や不和、差別や軋轢を生まない様に配慮した結果なんだろうね……ん、美味い」


「そういう所は間違い無く貴族らしいな……いや、寧ろ、王族と言った方が、しっくりくるか」


「御自身の在り方の希望と、現実の能力とが見事に相反していらっしゃるのがアルト様ですから」


「アルト様の場合ですと、フィルヴァンス公爵家の血筋の影響という事でしょうか?」


「遡れば、クライスト家には度々、王族からの血が直接入っていますからね

アルト様の様な方が現れる事も有るのでしょう

……滅多に無い、歴史的な事では有りますが……」



 何か言いたそうな顔をするメレアさんの視線から顔を逸らしながら、交代したエクレと食べさせ合いながら聞きたくはない会話をシャットアウト。

 俺は今、妻達と全力でイチャつくんですっ!。




 そんな訳でデートと気分転換と会議を終わらせて御店を出たら、街ブラしながら帰ります。

 こういった発展している活気の有る賑わっている街での生活も良いんですが、俺達には自然が豊かな環境の方が向いているんだな、と改めて感じます。寧ろ、偶に来る位が楽しくて丁度良いです。


 決して、「人が多いと面倒臭いし~」なんて事が理由だったりはしませんよ?。

 前世でも、「子育ては都会よりも、自然が豊かな田舎でしたい」と考える人達は少なく有りません。そういう意味では王国やクライスト家の教育方針は社会的な面では時代を先取りしているのかも。



「「「────っっっ!!!???」」」



 ──なんて考えていた中で、背筋を走った悪寒。俺だけでなくて、アンとフロイドさんも同じ様で。反射的にフォルテ達を囲う形で三角点に構える。

 フォルテ達が驚き、動きを止めた──次の瞬間。目の前の地面から這い出る様にソレは現れた。

 身を滅ぼしても尚も残る怨念か、或いは未練か。それとも、何かしらへの執着か。

 だがしかし、それを憐れみ、同情してやる気にはなれない。何故なら──明確な敵なのだから。


 実体化(・・・)が完了した、その瞬間。

 一歩で間合いに入り、露出している魔石(・・)を砕く。

それにより、実体を保てなくなり、魔素(・・)へと返って霧散して消失する。


 アンとフロイドさんの方も一撃で片付いた様で、周囲を警戒しながらも、此方等に向き直る。



「何で街中に“スケルトン”が現れるんだ?

アレはダンジョンの中でも特殊だし、特定域にしか現れないモンスターなんだぞ?」



 フロイドさんの言う通り。俺達の目の前に出現し倒したのはスケルトン。当然ながらモンスターだ。但し、生態系を持つ“魔獣”ではなく、“魔物”。魔物はダンジョンが侵入者に対して、排除と自衛を目的として生み出すとされているモンスター。

 一つの生態系を持つ生物である魔獣とは違って、魔物はダンジョンの中にしか存在せず、倒した後に実体が残る事は無い。

 ダンジョン内であれば、素材──所謂、ドロップアイテムを残す訳だけど……今は何も残らない。まあ、そのドロップも確率で、なんだけどね。


 それは兎も角として。

 棲息域を出る事が有る魔獣とは違い、魔物が己の役目を放棄し、創造主であるダンジョンから離れるという事は有り得ない。

 しかし、現実にスケルトンは現れた。これは既に異常事態である事を物語っている。



「混乱するのも仕方が無いが、今は謎の究明より、事態の把握と解決が優先だ

メアリー」


「は、はい!」


「見ていた通り、此処は戦場になる、判るな?」


「──っ!?…………はい……」



 まだ幼くとも、その賢さから状況を理解し、俺が何を言いたいのかを察するメアリー様。胸の痛みを堪える様に静かに俯く。

 強く握り締められた小さな拳が、自分の非力さを嘆き悔やみ、けれども、堪える様に飲み込む。

 それは時に痛々しくも見える事だろう。しかし、今この時に限っては──頼もしく思う。

 強い意志は、強い自制を伴ってこそ。

 今、彼女が我が儘を言わず、状況を正しく理解し判断出来ている事の証なのだから。



「──しかし、民を、街を守る為には、メアリーの協力が必要不可欠だ

俺達と一緒に戦ってくれるか?」


「──っ!!」



 弾かれた様に顔を上げるメアリー様。その双眸を真っ直ぐに見詰める。

 驚き、歓喜──しかし、一転して責任の重さを、その覚悟を理解する真剣な眼差しに変わる。

 まだ幼くとも、その身に流れる血は本物であると俺達の目の前で、小さな蕾は開き始める。

 思わず、この状況を忘れて笑みを浮かべてしまいそうになるのを堪える。



「はい!、私も共に戦います!」


「有難う、メアリー

フォルテ、メアリーと一緒に騎士団に合流し全体の指揮を執ってくれ」


「御任せ下さい」


「エクレとティアはメレア・クーリエと共に住民を避難させてくれ

高齢者や子供、病人や怪我人を最優先

避難先は街の南西部(・・・)、別邸も使え」


「はい!」


「了解致しました」


「アンとフロイドは街の中を回りながら各個撃破

大変だろうが、防御態勢が整うまでが勝負だ

態勢が整えば、無理せず下がれ

最悪、持久戦になる事も考えられるからな」


「判りました」


「アルト様は?」


「俺は大元(・・)を叩く」


「原因が判ったのかっ?!」


「流石に原因までは判らない──が、この街の中で骸骨(スケルトン)と結び付くのは一ヶ所だ」


「……──っ!、そうか!、王家の史跡かっ!」


あの辺り(・・・・)が中心みたいだからな

時間が無い、動くぞっ!」



 俺の言葉を合図に散開。今遣るべき各々の役目を全うする為に走る。


 街は何時ぞやの平原ブル騒動以上のパニック。

 それでも、スケルトンは倒し易く、動きも遅い。ある程度の実力と経験、度胸が有れば戦える相手。況してや、日の光の当たる昼間の地上。アンデットである以上、アウェイの戦場で動きは更に鈍る。

 ──とは言え、相手が普通のスケルトンではないという事が判っている者も多い筈。相手は日の光を浴びても何故か消滅していないのだから。

 アンデット種の中でも下位のスケルトン。それが致死の弱点である日の光を浴びても消滅しない上に動けている事自体が有り得ない。

 だから、これには必ず何か(・・)が有る。


 それに──異常な強さ魔法力を放っている反応が先程言った王家の史跡からしている。

 多分、これを感じているのは俺だけなんだろう。何しろ、魔法力を感知する様なスキルは無いから。少なくとも、現時点では確認されてはいない。

 だから、アレは下手に説明は出来無い為の建前。メアリー様が居る手前の誤魔化し。

 上手い具合にフロイドさんが流れに乗ってくれて助かりました。後で御礼を言わないとね。


 ──なんて事を考えながら、彼方等此方等に居るスケルトンを撃破しながら史跡に向かって驀地。

 そして、予想的中を物語る様に史跡前の広場には小石を適当に投げれば必ずスケルトンに当たる、と言わんばかりの量が屯しているじゃないですか。


 史跡を保護する為の防壁が有るので、中に入れば誰の目を気にする必要も有りません。

 銀月晶の聖短剣を取り出し、長刀(・・)化。

 滅多に無い機会なので我流の刀術(・・)を実戦で試す。日々の鍛練で遣るのは違いますからね。



「──っと、思ってる間に殲滅、と……

我ながら母上の事は言えないか~……」



 いや、別に史跡を壊したりはしていませんけど。接敵してから1分も経っていません。如何に弱くて楽勝でも三百は居ましたよ?。それを……ですから自分でも軽く引いてます。自重はしませんけど。


 そんな事を考えながら史跡の中へ。内部の構造はピストニアに入った日にメアリー様の案内で一通り見て回ったので覚えています。

 ……間接的に俺も王家の一員扱いされている、と考えてしまったのは仕方が無い事。そういう意図が有るのも判りますから。ただ、純粋なメアリー様の笑顔を曇らせる事は俺達には出来ませんでした。

 その時点では異変は勿論、違和感も有りません。気付いていたら流石に直ぐに動きますよ。


 そんな王家の史跡ですが。当然ながら重要文化財だったりします。

 だから、此処は基本的には立ち入り禁止(・・・・・・)です。

 先程の広場までなら普段から一般開放されていて入る事も無料で出来ますが、必ず警備隊が居ます。ただ、今は年末で、俺の催す新年会の関係も有り、閉鎖されている筈なんですが……内部に人の反応。その数は五人。それも、かなり奥に居ます。

 どう考えても、()でしょうね。




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