46話 親睦
イェトの月、27日。
エクリノワース嬢とティウィーラセア嬢を連れてセントランディ王国から帰国。フォルテ達と再会。そのまま王都に向かって経緯を説明。既に準備された二人との儀式も済ませ、披露宴も終了。二人の事もフォルテ達は好意的に迎え入れてくれました。
尚、表向きには母上の御叱りは有りませんでしたけれども、しっかりと御頂戴しました。
そんなこんなで昨日、漸く帰ってきた我が家。
エクレとティアには初めてですが。
俺にとっては気を抜ける唯一のオアシスなんで。帰った早々に裏山に一人で突っ込みましたとさ。
だって、ストレスが半端無かったんだもんっ!。仕方が無いじゃないっ!!。
俺がスッキリして戻って来た時にはフォルテ達が四人で仲良く料理をしていました。
ティアは兎も角、エクレは初めてだったらしく、苦戦していましたが楽しそうで……和みました。
美少女四人、和気藹々と料理す。癒されます。
まあ、夜には夜の妻達による癒しの一時が。
俺達の留守中、フォルテ達は母上を筆頭に実家や王家からの援軍が有り色々と勉強したんだそうで。その成果を披露してくれました。
アンの指圧が絶妙で蕩けそうでした。
そんな夜が明けて──はいませんが。目が覚め、伸ばした両腕に感じる四つの重み。
全く痺れていない我が肉体に拍手っ!。
──なんて、寝て起きても直ぐに思考が無意識に現実逃避してしまう程に。
今回の件では悪目立ちしました。
……まあ、俺にとっては、ですけどね。
新しく結婚した二人の御披露目会だった筈なのに何故か、俺の回りには歳の近い女の子が集う集う。いや、判ってますよ?。自業自得なんだって事は。でも、流石に露骨過ぎでしょうがっ!。
……それもまあ、父上達や陛下達からしてみたら一種のガス抜きなんでしょうけどね。
王国貴族からしたら、面白くは有りませんから。アンにしろ、エクレにしろ、ティアにしろ、他国。メアリー様という切り札が居るにしても王族だし。一人でもいいから押し込みたくなるんでしょうね。俺からしたら迷惑な話でしか有りませんけど。
父上達が断り続けても、陛下達が控えさせても。限界は有りますから。此処で落ち着かせるといった意図も有ったんでしょう。
俺は兎も角、フォルテ達への待遇は破格だったと言わざるを得ませんからね。
ええ、俺の愛妻家としての気質を、こうも上手く利用されてしまうとは……。意図したのは、絶対に母上やカタリナ王妃様、アイリーン様でしょう。
父上や陛下には申し訳有りませんが、その辺りの思慮深さは女性陣に軍配が上がりますので。
まあ、それで暫くは大人しくしていれば、此処で引き籠り生活が送れるので有れば良しとします。
……ただまあ、また来年のカルバニー秋楽祭への招待は確定したも同然なんでしょうけどね。
俺的には憂鬱です。
──といった事を考えながらの寝落ち。からの、二度寝を経て、御早う御座います。
久し振りに思いっ切り遣れる朝練は最高ですね。フロイドさんも楽しそうでしたから遠征中の我慢は地味に堪えていたんだと思います。
夫婦水入らずの鍛練の方は少々意外で。エクレは御転婆姫の素養が有ったのか、護身術という名目で剣術・体術を習っていたそうで様になっています。ティアは逆に未経験だそうですが運動神経は良い。飲み込みも早いので二人も直ぐに馴染むでしょう。午後からの山での散策は楽しそうでしたからね。
「い、如何でしょうか?」
「うん、大丈夫、気持ち良いよ
その感じで御願いするね」
「はい!」
不安気な表情から一転、嬉しそうに笑うエクレ。そんな風に若干の恥ずかしさから頬を染めながらも素直に喜ばれたら。もうね、男として嬉しくない訳が有りません。
そのエクレが何をしてくれているのかと言うと。俺の身体を洗ってくれています。
まあ、正確にはエクレもですけどね。
フォルテとアンは勿論、ティアも一緒です。
今はエクレが実践中。この後、ティアの番。
夫婦だから何も問題は有りません。
ただまあ、昨夜はフォルテ達が気を遣ってくれて一緒には入りましたけど、ササッとフォルテが正妻という事で洗ってくれて終了。疲れてましたから。気遣いの出来る奥さんって良いですよね~。
周りにもですが、第一に夫に、が高ポイント!。何気に出来ていそうで出来無い事ですから。
前世の世の旦那さん達、羨ましいでしょ?。
──とか惚気ながら回想している内に、ティアの実践も終了。今度は俺のターンです。
フォルテから順番に洗い、洗いながら戯れ合う。ええ、良い子は危ないから絶対に真似しない様に。御風呂場では遊んではいけません。
そんな夫婦の仲を深める営みの後。一緒に大きな湯船に浸かって一息吐きます。
実家や他は違いますが、この別邸は木製ですから俺にとっては魂まで洗われている気分です。
湯船以外は普通に石造りなんですけどね~。
「話には聞いていましたが、夫婦で一緒に御風呂に入るというだけなのに、こんなにも楽しい事だとは思ってもみませんでした」
「そうですね、その御話を私も初めて聞いた時には驚きましたし、正気を疑いましたけど……
こうして実際に自分が遣ってみて初めて、その様に言われている理由が判った様な気がします」
そう俺の両脇に位置取り、身体を密着させながら感慨深そうに話すエクレとティア。
フォルテとアンは、初めての二人に今日は譲って二人の横に並ぶ形。──とは言え、広げた俺の腕は二人の肩を抱いているので密着度は高いです。
我ながら、今程に自分の身体の大きさに感謝する事は有りませんでしたね。だって、当初は甘ったれゆとりボディに喝を入れる事しか考えていなかった位でしたからね。有難う、マイ・ボディ。そして、これからも宜しく、マイ・ボディ。
──と、あまりの充実感と幸福感に我を忘れて、現実逃避してしまう程ですが。夢では有りません。俺は間違い無く、勝ち組です!。
まあ、それは置いておいて。
実際の話ね、ヒュームの王公貴族の文化としては夫婦の混浴は珍しく有りません。──と言うよりも正妻となる女性には必須教育としてメイドさんから教わるんだそうです。
フォルテは、それ以前に教えられていたそうで。ただ、常識的に考えて結婚して直ぐに、という事は遣らない方が良いと思っていたみたいです。だから初めて一緒に御風呂に入った時には恥ずかしそうに照れてはいましたが、とても嬉しそうでした。
アンの場合、ズゥマには必須という認識が無い為、かなり恥ずかしがっていました。まあ、それが逆に俺達からしたら可愛くて堪りませんでした。
エクレはヒュームですから抵抗感は無いに等しく恥ずかしさとの勝負という感じでした。
ティアの場合、エルフに混浴の習慣は無いらしく驚いていましたが、順番も有りましたし、皆も一緒という事も有って、意外とすんなりと受け入れて。寧ろ、積極的だった位です。
尚、メアリー様とも一緒に入っていました。
まあ、貴族の、戸籍持ちという事で、結婚前から御風呂には女性同伴。同性ではなく、必ず女性が。そんな所にも王公貴族の責務が窺えます。
因みに、俺の御世話係りはメレアさんではない。メレアさんが同行してからは一人で入ってました。だから、結婚後はフォルテが初めてになります。
フロイドさんに話を聞いた限りでもズゥマ的には珍しい事みたいです。ほら、ズゥマって男女問わず一定年齢で生殖能力が失われますから。その為か、かなり幼い内に男女分別の意識が芽生える様です。まあ、その分、アンの様に伴侶に対しては情熱的に成り易いみたいですけどね。
それはズゥマの男性にしても同じみたいですからフロイドさんの奥さんの件では将来的な楽しみだと言えるでしょう。誰になるから判りませんが。
「この慣習、アルト様はどう思われますか?」
「個人的な事を言えば、良いと思うよ
よく“裸の付き合いで親睦を深める”なんて事を言う訳だけど、夫婦の場合も同じだと思う
極端な話、子作り以外で男女が裸で一緒に居る事は御風呂以外には先ず無いからね
そういう意味でも良い機会なんだと思う」
「確かに……普通に考えると他には機会というのは有りませんね」
「──というか、有る方が可笑しいですよね?」
「それこそ、理解不能な慣習になるだろうな」
アンの言葉を肯定する様に言えば、皆も頷く。
実際にね、複数の男女が裸で集まっている状況を想像すると……客観的に見て可笑しい訳です。
それはまあ、ヌーディスト・ビーチみたいな所は意味が違いますけどね。ああいった場で性的意識を他者に向ける事は論外。その場の他の人達に対する冒涜に等しい訳ですからね。純粋な解放感を求める人達とは違い、ただの性犯罪者だとすら言えます。
この世界には存在してはいないみたいですが。
基本的に、肌の過度な露出が問題視されるのは、大体が女性な訳ですが。見られたくはないのなら、そんな格好をするべきではない訳で。そういう姿で人前に出るなら見られて当然だと思うべき。
「御洒落がしたいだけ」というなら、外ではなく自宅や自室ですればいい訳ですから。
人前──公共の場にて他者の視線を気にするなら自重するべきなのが正しい倫理観です。
其処が歪むと、前世の様な社会になります。
見た男性側が悪い様に言われてしまう社会にね。アレこそ理不尽であり、冤罪、セクハラ・パワハラだとは誰も言わないんだから可笑しいな話です。
その点、この世界は正しい訳です。
女性の大胆な服装は男性の気を引く為の手段で、自己アピールな訳ですから。その自覚と意識の上でそういった格好をするから問題には為りません。
勿論、男性が覗いたりすれば当然、犯罪です。
逆に言えば、そういった事を巧みに利用して狙う男性を嵌め、責任を取って貰う、という強行手段も存在してはいますからね。
ただ、そういう場合、男性から愛情を得られないという事は言うまでも有りません。
だからこそ、正々堂々とが大事な訳です。
「まあ、それでも俺達みたいに結婚してからなのが当たり前なんだけど……
ちょっと特殊な例外も有るからね~……」
「あー……メアリー様の事ですか……」
「まあね……本人の希望も有ったけど……
まだ公的には婚約者という形だからね
本当なら、エクレやティアみたいに結婚するまでは線引きしておくべきなんだけど……」
「アルト様に嫁ぐ事は確定していますから……」
そう苦笑しながらフォルテが言った通りで。
婚約者というのは建前で、事実上の妻ですから。本人は勿論、その両親である国王御夫妻公認なので変に遠慮したりするとフォルテの立場がねぇ……。そういう事を考えると開き直るしか有りません。
メアリー様が嬉しそうだし、フォルテとの関係も良好だから気にしない事にしてますけど。
俺の感覚では、犯罪スレスレな感じです。
実際には全然大丈夫なんですけどね~。
「そう言えば、近い内に此方等に来られる予定だと御聞きしましたが?」
「みたいだね、俺に決定権は無いけど
彼女自身は本当に良い娘だから良いんだけどね」
「御義母様ですか?」
「母上が来るのも別にいいんだけど……」
「?……それでは、何が問題なのですか?」
「……母上がね、俺との鍛練で急成長してる事」
「「「「………………」」」」
エクレの疑問に答えると四人共に閉口し、そっと顔を逸らした。
いや、別に俺達に害は無いんですけどね。以前の実力差は判りませんが、今は確実に母上が父上より強い事だけは間違い有りません。
夫婦喧嘩はしないでしょうけれど……強くなった母上が自由に動き始めるとね?、その原因となった俺の方に注目が増します。だからと言って、母上に自重は御願い出来ませんしね~……。
世の中、儘ならないものです……ママだけに。




