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15話 披露宴


 王都の別邸で一日を準備に費やし、いざ、本番。

 別邸の大広間──巨大ホールを使い開かれるのが俺とフォルテの御披露目パーティーです。

 また、二人共選定の儀に着ていた衣装ではなく、父上が用意した新しい物です。

 基本的に選定の儀の衣装は一回だけしか着ない物なんだそうです。勿体無い。

 まあ、それも一種の験担ぎなんでしょうけど。


 選定の儀とは違い持ち前の淑女さを発揮しているフォルテを伴い、頑張っている俺。

 正直、こういう場が一番苦手です。

 父上達や兄上達、更には姉上達の事を考えたなら下手な対応は出来ませんからね。

 もう緊張しまくってます。


 それでも頼もしきは王女の愛妻です。

 家では冷遇されていても王女は王女、本物です。だから周囲は王女として接し、扱う訳でして。

 フォルテに自覚は無くても、王女として相応しい立ち振舞いを身に付けているんですよ。

 だから、今日は俺がフォルテに倣っています。

 メレアさんからも「困った時はフォルテ様の姿を参考にして頂ければ大丈夫です」と太鼓判。

 俺が駄目駄目なのは言うまでも有りません。


 ──が、今日は流石に気は抜けません。

 そして、本日のラスボスの御登場です。



「御結婚、おめでとうございます」


「有難う御座います」



 フォルテが笑顔で返す相手はメルーディア王国のカタリナ王妃。まだ二十代半ばの筈ですが、かなり貫禄と余裕の有る方です。

 それだけ王宮という場所が、険しく気を抜けない魔窟なのかもしれませんけど。

 そんな事は思っても出しません。


 一方、俺はキラルド陛下と談笑中です。

 ええ、王妃様が居る以上、国王様も居ますよ。

 何気に誰にも助けて貰えない状況なんですが?。父上ーっ?!、母上ーっ?!、兄上何処ですかーっ?!。たーすーけーてーっ!!。

 無い筈のHPがガシガシ削れてってますっ!。



「其方達の結婚は、メルーディアとノーザィラスの架け橋となる重要な事だ

選定の儀の性質上、親や国王等が相手を決める事は出来ぬし、遣ってはならぬ

それ故に何処も思う所が有るのが本音だ

勿論、其方は己の意思で姫を選んだのだが……

両国にとって政治的にも大きな意味が有る結婚だ

その意味では其方には感謝しておる」


「私はただ、生涯を共にする自分の伴侶に相応しい相手として彼女を見初めただけです

本人にも話した事ですが、第一候補だったという訳では有りません

ただ、今期の参加者の事も含め、自分の指名順位も一つの要因だった事は確かです

そして、共に過ごす程に自分の選択が正しかったと強く実感しています」


「……成る程な、姫を愛しておるのだな」


「はい、後悔など微塵も懐く隙も無い程に」


「ハハハッ、そうかそうか、姫は幸せ者だな」



 辛気臭い空気を笑い飛ばす様に仰有る陛下。

 王妃様も微笑ましそうにフォルテへと話し掛け、フォルテは顔を赤くして照れながらも嬉しそうで、潤んだ眼差しで見詰めてきます。

 うん、今、それを遣るのは反則ですって。

 今直ぐに、この場で抱き締めたい。

 でも、流石にイチャつく訳にはいきませんから。もどかしいだけです。今夜は激しくなりますね。


 ──というのが表向きな所でしょう。

 勿論、フォルテを愛しているという事は御世辞や社交辞令ではなく、本気で、ですけど。

 まあ、だからと言って国王陛下相手に真っ向から惚気る様なチャレンジャーは稀でしょうね。

 余程の馬鹿か自己中でもない限りはね。


 俺の場合は多少の意図も有っての惚気です。

 姉上達ではないですが、この披露宴は御披露目と同時に側室(・・)探しの意味も持ちます。

 特に、俺はフォルテを娶った事でノーザィラスと確かな関係(パイプ)が出来た訳です。

 どう使うか、どう活かすかは俺次第ですが。

 少なくとも王家との繋がりはメルーディア国内に置いても重要な意味を持ちます。

 なので、新婚の俺の然り気無く縁談を持ち掛ける方々が居る事は可笑しな話では有りません。

 ただ、デリカシーは無いでしょうね。

 ──とは言え、それが王公貴族の社会という物。一つ一つの繋がりが力であり、財産なのだから。


 それでも、まだ俺の感覚は一夫一妻なんです。

 それは話しても無駄だし、面倒臭い事ですが。

 だって、それは前世の価値観な訳なんで。

 だから、側室の話は理解は出来ても、今直ぐには御断りさせて頂きたいのが本音な訳で。

 それに、フォルテの立場になって考えたら理解は出来ても内心は複雑でしょう。

 俺だったら、内心ではキレてると思います。

 フォルテは我慢しいな所が有るので訊かない限り言わないでしょうから、今夜は残らず白状するまで寝かせはしません。

 そして、存分に俺の愛を伝えましょう。


 ──というのは置いといて。

 こうして、国王夫妻を相手に堂々と惚気る事で、周囲に「今さ、新婚なんだから空気読めよな」と。牽制と威嚇の代わりにしている訳です。

 いや本当にマジでね、止めろって話です。


 そんな努力の甲斐も有ってか。

 国王夫妻との談笑以降、その手の輩は激減。

 俺は勿論、フォルテのストレスも大幅に緩和し、夫婦揃って気分が楽になりました。

 この苦労、貴方達も味わったんでしょう?。

 だったら、悪習慣は根絶させて下さい。

 それが大人の責任ってものだと思います。


 一息入れながら、胸中で愚痴っていると父上達が此方に遣ってきた。

 遅いっ!、そして何処に居たっ!。

 俺達は跡取りじゃないんだから、フォローとかは遣って下さいよ!。

 そう言いたい気持ちを飲み込み、軽く睨む。

 まあ、二人からしたら子供が拗ねている様にしか見えないんでしょうけどね。



「二人共、どんな感じだい?」


「御覧の通り、御疲れです」


「ははっ、そんな事が言えるなら大したものだよ

私達の時は、もう一杯一杯だったからね」


「貴方達より規模も小さかったのに、ですよ

寧ろ、披露宴というのは一種の通過儀礼です

選定の儀で夫婦となった二人への初めての貴族社会からの洗礼、といった所ですね」


「それはまた傍迷惑で嫌な洗礼ですね」


「だから、大概が失敗もするし、苦労し、学ぶ

そういう意味では、二人共素晴らしい事だよ」


「愛の力ですよ」



 誉めて誤魔化そうとする父上達に反抗する意味でフォルテを抱き締めて態と強調して見せる。

 フォルテは顔が真っ赤ですが無抵抗です。寧ろ、フォルテも抱き返してくれます。

 流石は我が妻。意志疎通はバッチリです。

 まあ、こういう風に遠慮無く愚痴れるのは両親の器量が大きいからなのは言うまでも有りません。

 単なるバカップルではないって事です。



「あらあら、初々しい事ですね」



 不意に揶揄う様な声が掛けられた。

 フォルテを抱き締めたまま、向き直った瞬間。

 俺達は揃って動きを止めていた。



アイドリー卿(・・・・・・)、御無沙汰しています

本日は御越し頂き、有難う御座います」


「体調を崩されていたそうですが、宜しいので?」


「ええ、御陰様で、この通りです」



 そう言って力瘤を作って見せる格好をするのは、先日、俺達がタギトリスで出逢った女性。

 本人と父上達は、その御茶目な言動に楽しそうに話しているが、此方等は軽い混乱状態。

 いや、要するに、この女性は俺達と同じ様にして街ぶらしていた貴族だって事は判りますよ。

 ただ、重要なのは其処では有りません。

 “卿”と呼ばれるのは、各貴族家の当主のみ。

 比率は少ないですが、女性当主は居ます。

 直系の男性が居なければ、婿養子を取りますから女性当主自体は珍しい事では有りません。

 しかし、それは若い内の話です。

 少なくとも、四十代だろう目の前の女性は子供の一人や二人は居る筈だし、家督も譲っている筈。

 それが現役の当主となると驚きもします。


 ──とは言え、驚いたままでも居られません。

 取り敢えず、きちんと挨拶をしなくては。

 フォルテを解放し、繰り返していた挨拶をする。もう一々考えなくても当然の様に出来ます。



「私はアイリーン・カルロ・フォン・アイドリー、アイドリー子爵家の()当主です

改めて御礼を言わせて頂きます

貴方達の御陰で助かりました、有難う」



 そう言って頭を下げられるアイリーン様。

 家格では伯爵家のクライスト家が上でも、個人の地位で言えばアイリーン様の方が上です。

 そのアイリーン様が俺達に頭を下げている状況は客観的に見ても驚きな訳で。

 父上達ですら、「……え?、何これ?」な感じで呆然としている状況です。

 出来れば、適当に誤魔化して凌ぎたいです。

 そんな事は出来無いって判ってますけどね!。



「どうか頭を御上げ下さい、アイリーン様

私達は当然の事をしたまでの事です

そこまでして頂く事では有りません」


「……ああ、御免なさい、つい、感動して……

クライスト卿、素晴らしい御子息達ですね」


「そう貴女に仰有って頂ける事は光栄です

私達が若い時には随分と叱責されましたので」


「立場が違いましたし、急な事でしたからね

誰かが言わなければ、というだけの事です」


「その御陰で今が在りますので感謝しています」



 そう言って父上が然り気無くインターセプトして話題を逸らし、周囲の注目を緩和させてくれた。

 父上、正直に言って、今程貴男が頼もしく見えた事は有りません。格好良いです。


 それから場所を移動し、何が有ったのかを説明。

 アイリーン様からも経緯が説明され、俺の予想が間違っていなかった事も確認出来ました。

 ええ、何気に御転婆な方な様です。

 因みに、一緒に居たのは執事の方だそうです。

 多分、色々と苦労されているんでしょうね。



「──そういう訳ですから、御礼を言っただけでは済ませられません

何か、有りませんか?」


「え~と……そうですね……」



 思わず、「じゃあ、静かにイチャラブ新婚生活を邪魔しないで下さい」と言いそうになりましたが。そこは流石に口には出しません。

 しかし、アイリーン様にしても引けない所。

 単純に個人的な恩人というだけではなく、御家の面子にも関わってくる話ですから。

 父上達も「何でもいいから言いなさい」と無言の圧力を掛けているから逃げられません。

 皆さん、何処かの魔王なんですか?。



「──ぁ、それでは一つ、宜しいですか?」


「何でしょうか」


「私には実姉が二人居るのですが、まだ未婚です

今日も披露宴に参加はしていますが、どうなのかは現時点では判りません

そこで、もし宜しければ少し縁組み(・・・)をして頂く事が出来たら、と思います」


「縁組み、ですか?」


「はい、王都までの道中で話題になったのですが、私や兄も父上の様に直感的に相手を決めています

それは母上達からしても同じなのですが……

中々、そういう相手に姉上達は縁が無い様でして

其処で、姉上達の話を参考に結婚相手を探して頂く事が出来無いかと思った次第です」


「成る程……理由は判りました

ですが、クライスト卿ではなく、何故私に?」


「父上は男ですから、姉上達の感覚とはズレます

しかし、母上が探すとなると難しくも有ります

アイリーン様でしたら同じ女性ですし、当主という事で候補者も広く探して頂く事が可能だと」


「そういう事ですか…………判りました

それでは日を改めて、御二人と話しをしましょう

それから相手を探す事になりますが……

そういった運びで宜しいですか?」


「此方等としては是非とも御願いしたい話です

特に急ぐ予定も有りませんから、娘達には此方等に暫く滞在する様に伝えて置きます」


「それでは明後日にでも我が家の方へ」


「判りました」



 ──という訳で、話は纏まりました。

 姉上達には「勿体無い」「余計な御世話!」とか言われるかもしれませんが。

 他に面倒臭くない御願いが思い浮かばなかったんだから仕方無いじゃないですか。

 いざ、こういう状況になると出てこないもの。

 叶えて貰う御願いって難しいです。



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