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90話 予想外


 イェトの月、15日。

 何だかんだと有った、リタロパ聖法国への旅行も今は帰路に着いた王国船の上。

 御土産も買ったし、当分は来る事も有りません。メアリー様が洗礼式を済ませるまで、さようなら。また訪れる、その日まで。

 ──と、水平線の彼方に消えてゆく姿を見ながら潮風に吹かれる。ええ、現実逃避ですが何か?。


 俺達がアガーラタに辿り着いた事は陛下達と法王様には話しました。日数的にも何処かに居た事は判りますからね。下手に隠す方が悪手です。

 ただ、辿り着く方法は内緒です。それを解く事もアガーラタの試練の一つですから。

 その点は理解して頂けましたし、それが重要だと説明して下さるそうです。訊ねられたら。


 あまり変な事は言えませんが、幸いにも俺達には共通して獲得した装備品やスキルが有りましたから取り敢えずは誤魔化せました。

 宅の家臣は経験値が多いので何か有った事だけは察していますが、俺が何も言わないので今は保留。面倒事だという事だけは察したでしょうから。


 もう少し詳しく説明すると。

 ダンジョンを出た後、フロイドさん達の所に戻り合流する前に、フォルテ達に確認をした。

 先ず、【不撓不屈】【同調技撃(ユニゾン・ドライヴ)】は全員獲得。

 神具・天恵の指環も全員が各々がマスター登録の状態で入手──と言うか、指に填まっていました。

 此処までは問題有りません。一々説明をするのが面倒なだけで。

 問題は【神力】と【聖者】です。

 【神力】はフォルテ専用の力の筈なんですけど。何故か、俺も獲得しています。

 アン・エクレ・ティアは獲得していませんから、三人は条件を満たしてはいないのでしょう。

 ──と言うか、どんな条件?。いや、考えだすと思考の迷宮を彷徨う事になるので考えませんが。


 また、【聖者】はフォルテも獲得していません。此方等は俺だけだったみたいです。

 当然ですが、夫婦だけの秘密です。まだ正式には夫婦ではないのでメアリー様にも秘密で。

 ……フォルテ達の純粋な尊敬の眼差しが痛いから無かった事にしたい本音は言えません。


 ──とまあ、そんな感じです。

 色々考えるべきですが今は思考を拒否しました。取り敢えず、暫くは俺達夫婦だけの秘密に。

 どの道、【神力】に関してはフォルテの事も含めフロイドさん達にも話す事にはなりますから。

 今は自分にもフォルテにも精神的に余計な負荷を掛けたくはないので現実逃避します。

 あ~、いい風だ~。




 そんなこんなで、帰宅してから、あっと言う間に三日が経過。家だと自然体に戻る為、破棄していた思考も通常通りに。ええ、考える様になります。

 習慣というのは御し難い物です。


 そんな訳で【神力】に関しての分析を始めます。俺もフォルテも解ってはいませんから。

 自分のスキルですが、説明文も無しですからね。はっきり言って、漠然とし過ぎています。


 客観的な考えとしては。魔力、或いは魔法力とは似て非なる物では有りますが、そういった類いなら俺が理解すれば、フォルテにも教えられます。

 フォルテは無空の為、魔力の感覚は無いので。


 しかし、この【神力】。自分のステータス上にはスキルとして表示されている訳ですが。他のスキルみたいに使おうとしても使えません。

 ただ、改めて考えてみると、納得の出来る事も。抑、魔力持ちに【魔力】等のスキルが存在しているという訳では有りません。しかし、実際には魔力を有している訳ですから、それはスキル依存ではないという事の証明でも有ります。

 その上、【神力】というスキルの獲得です。

 これはつまり、スキルとして表示されているのは所有者に「そういった特別な力を持つ」という事を認識させる為のもの、という事なのでしょう。

 そう考えれば、スキルとして使用しようとしても何も起きない事にも一応は説明が付きます。

 ……無理矢理納得しようとはしていませんよ?。飽く迄も、客観的に考えた結果ですから。



「アルト様、結局の所、それは一体どういった力になるのでしょうか?」


「そうだな……極端な事を言うと、既存の魔法とは源になる力からして別の力、って事かな」


「……魔法を使う事は出来無いのですね……」


「いや、正確に言うと、それは違うな」


「…………え?」



 僅かながら期待も有ったフォルテが残念がるが、此処で間違った認識を持たない様に説明をする。

 要は“魔法”を如何なる物と定義するのか、だ。

 既存の魔法とは魔力を源として(・・・・・・・)発現する物。

 そういう意味では、フォルテは魔法は使えない。

 しかし、魔法を現象(結果)として考えるのなら。

 源が魔力だろうと、神力だろうと構わない。

 ──とまあ、そんな感じで。



「…………それでは、私にも?」


「ああ、まだ検証段階ではあるが、魔法という形で(・・・・・・・)力の発現は可能だと俺は思っている」


「~~~~~~っっ!!!!」


「フォルテーっ!!」



 俺の言葉に歓喜し、涙を溢れさせるフォルテへとアン達が抱き付き、我が事の様に喜び合う。

 その様子は親友であり、姉妹であり、恋敵(ライバル)

 俺との関係とは違う、フォルテ達だけの絆。

 ……別に妬いてなんていませんからね?。


 和気藹々とするフォルテ達は置いといて。

 神力に関しては正直、頭を悩ませています。

 勿論、原作(ゲーム)では覚醒したフォルテは専用の魔法が使用可能となっていましたから大丈夫な筈。


 問題は、どう遣って(・・・・・)可能にするのか。

 現状、フォルテ自身も何も判らない状態です。

 此処に来て、現実(システム外)の弊害が出ました。

 まあ、愚痴っていても何も解決はしませんから。ちゃんと向き合って考えます。


 もし、神力と魔力が違うだけなら、魔導書を読み魔法を習得すればいいだけの話ですが。現実的には神力を感知する事さえ、出来ていません。

 俺だったらね、自分の中に新しい力が宿るなり、目覚めるなりすれば判ると思いましたが……うん。それらしい感覚が有りません。何故?。

 いやまあ、そう簡単には行かないとも思います。それだけ重要な訳ですからね。

 ──とは言うものの何かしらの手掛かり(ヒント)は欲しいというのが今の正直な気持ちです。



(……有るとしたら、あの一言になるのか?)



 獲得に際し、俺が聞いた天の声(アナウンス)。気になったのは特殊条件の“導きし者”という部分。

 確かに、フォルテ達を連れて辿り着いた訳なので間違いでは有りませんが。

 フォルテの方は違ったみたいです。

 まあ、アガーラタはフォルテの為のダンジョン。隠しや特殊等の条件は不要ですからね。俺の場合と違っていても不思議では有りません。

 ええ、明らかに可笑しいのは俺の件ですから。


 フォルテを妻に選び、尚且つ、早期攻略……?。条件として達成可能な範囲だと、こんな所か。

 そうだとしても……うん、微妙だよなぁ~。

 抑として、攻略する事自体は必須。完全攻略(・・・・)が条件だったりする?……いや、弱いな。

 ──と言うか、既に獲得している訳だから、今更獲得条件を考えても大して意味は無いか……。

 そうだとすると……他に何が有る?。

 原作(ゲーム)と現実の違いとか?……山程有る。


 比較するとなると……攻略人数?。原作(ゲーム)の場合、サブキャラが助っ人で参戦しての五人パーティー。俺達と人数という面では同じ。

 ダンジョン自体は別物だから意味が無い。

 ボスが異常個体(ミュータント)だったから?……違うな。

 …………アガーラタから離れて考えるべきか?。でも、そうすると一気に比較対象が減るし……。

 それらしい違いは時期(・・)位しかないかぁ……。



「…………………………」



 ──と、考えていた時だった。

 フォルテ達を見ていて──ふと、気付いた。

 本来なら、覚醒は原作(ゲーム)後半(・・)だ。

 それを大きく前倒しした上、彼是とアガーラタに到るまでの冒険や謎解きが有るのだが。そういった一切合切を俺が省いた形になった訳で。

 ゲームなら、製作側が激怒する所業。

 しかし、現実だから問題は無いし、可能な訳で。それが獲得条件に結び付いた可能性は否めない。


 ただ、今、重要なのは其処ではない。

 原作(ゲーム)後半の設定は十五歳(・・・)以上だった筈。

 いや、細かい年齢は置いておくとして。

 その年齢であれば、今の俺達には確実に足りない要因が有る事に気付いてしまった。

 そして、ある意味では掛かっている(・・・・・・)事にも。



(いやいやいやいやっ!!、まさかの謎条件っ!?

しかし、納得出来てしまったからヤバいっ!

もし、俺の考えた通りだとしたら、どう説明する?!

……まだフォルテ達には言える、夫婦だから!

でも、メレアさん達への説明が……ぅガァーッ!!)



 思わず頭を抱えて身悶えしてしまう。

 フォルテ達が驚き、心配してくれるが、今は少し放置してくれる様に御願いする。

 精神的に処理し切れないから。



(……くっ……まさか、こんな形で自爆するとは、予想してもいなかった……)



 多分……いや、略間違い無いと思う。

 神力の覚醒には、もう一つ必須条件が有る。

 それは…………俺とフォルテの契り(・・)

 誓契の宣儀による夫婦という意味だけではなく。実質的な(・・・・)夫婦としての契り。

 要するに、初夜(・・)の有無です。


 ええまあ、既に夫婦ですからね。その辺りの事は当事者間で話し合って決めるのが通例。

 俺もフォルテ達と話し合い、御互いに譲歩の末、十三歳でという事で決まりました。


 アンが「私は直ぐにでも!」と開口一番に言った事も有って交渉は難航しましたが。

 いやまあ、遣れば出来ますよ。愛妻となので。

 ただね、どうしても俺には前世の記憶が有る分、その辺りの倫理観が壁となる訳でして。

 決して、愛していない訳では有りませんから。

 ──という説得を、実証(・・)して成しました。

 夫婦としての黒歴史でも有るので秘しますが。


 平均的には、もう少し早いそうです。

 俺の意見としては、身体の成長に負担が無い様に十三歳辺りまでは……という感じでです。


 それを神力の検証の為に覆すというのは……。

 あー……うん。誰も反対はしないでしょうけど。寧ろ、大義名分が出来て喜ぶだけですから。

 ええ、宅の愛妻達は肉食系ですけど何か?。


 ……まあ、それ自体、望んでくれている訳なので俺も拒否したりはしません。

 アガーラタの攻略と同様に前倒し(・・・)するだけです。だから、必要な事となれば、納得もします。

 俺個人の倫理観の葛藤と、世界を救う大義。

 天秤に掛けて、何方等が重いかと問われたなら。間違い無く、迷わずに後者だと言えます。

 ええ、そういう意味では必要だと判るんです。


 ですが、フォルテ達に何と言って説明するのか。其処が俺にとっては最難関かもしれません。


 当然ですが、原作(ゲーム)の事は話せません。

 その為、その必要性を説明出来無い訳です。

 …………それはまあ、普通に俺からフォルテ達を求めたら受け入れてはくれるでしょうけど。

 その心変わりを何と言うべきなのか。

 察しがいいだけに、こういう時には困ります。


 ──とは言うものの、此処でフォルテが覚醒して先々の事に備えられるメリットは滅茶苦茶大きい。俺の事を外して考えても色々と出来ますから。

 実際、魔法も独自に開発する事が可能な事は俺が誰よりも理解していますから。

 その点だけでも原作(ゲーム)以上の手札を揃えられる事は大きなアドバンテージですから。

 本来であれば、悩む事ではないんですけど……。悩まずにはいられません。


 ……まあ、結局の所、既に答えは出ている訳で、時間の無駄。

 この無駄な時間は俺自身の覚悟の再確認の為に。悩まずに受け入れられるなら楽なんでしょうけど。こればっかりは性根の問題ですからね~。



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