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89話 準備


 アガーラタのダンジョン“試練の塔”の最上階で待ち受ける魔宮主(ボス)は“ラファータ・アルズマタ”。

 原作(ゲーム)ではボスらしく三段変身する──とは言え、最初の姿は一般的な(ドラゴン)の姿。

 巨大な翼、長い首と尾、四本の手足、全身に鱗。天を威嚇するかの様に鋭い角と、巨口の顎。

 広げた翼は片方だけで10ミード近くにもなり、胴体は着地すれば7ミード程。空中では5ミードを超える太い尾が伸びる事も有り倍近い印象に。


 物理的に飛んでいる訳ではない様で、鳥や虫等の羽撃きの様に常に動いてはおらず、広がったまま。ただ、その羽撃き一つで突風が起こる。

 竜が“天災”等と呼ばれるのも頷けます。


 それだけでも十分に強敵なんですけどねぇ……。

 本来なら、漆黒の竜(・・・・)の筈ですが。

 俺達の目の前に居るのは白銀の竜(・・・・)

 ええ、まさかの異常個体(ミュータント)です。

 これはアレですか?。本来の時期とは違うから、その影響で変異してくれているとか?。

 まあ、誰かが答えてくれる訳では有りませんから深く考えたり、気にしたりはしません。飽く迄も、口には出さない独り言で、愚痴です。


 ──等と頭の片隅で考えながらも。既に対峙する敵に対しての行動は起こしています。

 【亜空間収納】から場を水没させられる程の量の水を取り出し、それをティアと二人で操作する。

 御互いに巨大な水の球を作ると、其処から細長く伸ばした触手の様に蠢く水の鎖を幾つも操り、敵の四肢を絡め取る様に巻き付け、縛り上げる。


 当然、それから脱出しようとするもの。

 だから、そうしようとした時には次の手が。

 エクレが遅れる事無く動き、水の鎖を凍結させて瞬間的に(・・・・)強度を上げる。


 当然だが、水よりも氷の方が力技には断然弱い。だから、縛るのなら水の鎖の方が拘束力が高い。

 それを態々(・・)凍らせた。

 其処に違和感を懐き、疑問に思えたなら。

 此方等の意図にも気付いたかもしれない。

 しかし、「これなら力技で破れる」という思考が少しでも働くと、そうしようとするもの。

 それが、初手が(いきなりの)搦め手だった場合。

 彼我の実力差を、どの様に受け取る(・・・・)のか。


 原作(ゲーム)のプログラムされた行動しかないモンスターとは違い、現実のモンスターは自ら考える。

 それは魔宮主(ボス)ともなると人以上にも。

 但し、その存在する根幹が揺るぎはしない事から自らの使命を逸脱する事は無い。

 つまり、どんなモンスターだろうとも基本的には自分達の領域に踏み入った侵入者の排除が最優先。それ故に、戦わないという思考は生まれない。


 結果、現状で取る行動は、力技による破壊。

 もし、「水だろうが氷だろうが関係無いっ!」と言わんばかりに強力なブレスを放って吹き飛ばす。そう遣って力を誇示すれば違った展開になるが。

 想定通り(・・・・)なら脅威ではない。


 凍結し、氷となったのは敵を中心にした範囲で。大元の水の球は変わらず。

 俺とティアは既に新しい水の鎖を伸ばし、空中で敵を捕縛して咲いた氷花を摘み取る様に落とす(・・・)


 力んでいた敵に回避も防御も妨害も不可能。

 俺達の立つ塔に叩き付けられる。


 その衝撃で捕縛していた氷は砕け散った。

 だが、構わない。

 敵が動き出すよりも速く。フォルテとアンが敵に襲い掛かり、攻め立てる。


 客観視すれば、魔宮主(ボス)を一方的に蹂躙。

 しかし、俺達にとっては驚く事ではない。


 俺の原作知識(記憶)を参考に、敵を想定。

 ヘフォルトパスの件も有り、多少特殊な想定でも怪しまれたりはしません。寧ろ、他の皆も積極的に想定する相手に関して意見を出してくれますから。俺だけが目立つという事は有りません。

 そして、その想定した敵に対し、どう挑むのか。それを検討し、議論し、実際に実戦として行う。

 そうした準備を怠らず、出来る限り行っている。だから、実際に遭遇した時、迷わず動ける。

 加えて、一つだけを答えとはしていないからこそ破られたり、通用しなくても動揺したりはしない。

 そんな日々の積み重ね(・・・・・・・)が血肉となるのだから。


 ──とか思いながら次に備えた移動。

 二人の攻撃で第一形態(・・・・)は撃破。

 魔宮主(ボス)は一旦、身体が消え掛けるが、死に抗い、怨霊となって舞い戻るかの様に再生。

 第二形態(・・・・)となって顕現する。


 新たな姿は翼を捨て、太さが軽く3ミードは有る六つの巨脚を持った七つ首の漆黒の(・・・)多頭竜。

 第一形態とは属性が反転する点は同じ様です。


 己の憤怒を解き放ち爆発させる様な激しい咆哮。空気を震わせるだけでなく、衝撃波が伴う。

 まあ、その程度では怯みも驚きもしませんが。


 原作(ゲーム)と違うのは、現実が故の仕様。

 50ミード程の円形の塔の最上階は敵の顕現時の衝撃によって皹割れ、黙視不可能な、存在するのかでさえも怪しい地上に向かって崩落。

 一気に三分の一程の面積が失われました。

 これには流石に驚きます。慌てたりはしませんが多少なりとも危機感は感じますから。


 ただ、どんな状況だろうとも遣る事は同じです。其処が揺るがなければ問題有りません。


 ティアが残った水の球を操り、足元に薄く拡げ、顕現と同時に六脚に絡み付き、エクレが凍結。

 「同じ手を食らうか」と言わんばかりに七つ首が一斉にブレスを吐こうとする。

 その瞬間に。

 相手が意識していない致命的な隙が生じる。


 これはゲームではなく現実。故に、行動には必ず段階(・・)という物が存在するのは必然。

 ブレスに限らず、大なり小なり予備動作(・・・・)が生じるという事は否めないもの。

 それを限り無く、省くには鍛練(・・)しかないのだが、魔宮主(ボス)が鍛練などする筈も無い。

 抑、常時存在している訳ではないのだから。


 その事を理解していればこそ、狙える隙となる。


 ティアに水の操作を任せた俺は別の行動に。

 先の第一形態を捕らえていた氷は砕け散ったが、消滅した(・・・・)訳ではない(・・・・・)

 飛散しただけ。しかし、視認(・・)は出来無い。

 それも当然の事。飛散している途中、氷片は全て俺の制御下に。その上で物凄く細かい粒子化して、空中に漂う様に待機(・・)していた。


 そして、ブレスを吐こうとする七つの首を頭部の付け根の辺りを狙い、氷片を操作し──結合。

 七つの首を束ねる様にして縛る。


 ブレスは口から吐くものだが、口の中で生じさせ放出している訳ではない。殆どのモンスターが各々生物的な構造に基づき、専用器官(・・)を有する。

 それは魔宮主(ボス)も例外ではない。


 体内で生成したブレスの源。そのエネルギーが、首を駆け上がる様に口へと向かう。

 しかし、その出口に到る前に塞き止められる。

 俺の填めた氷の首輪(・・・・)によって。

 すると、どうなるのか。

 行き場を失った七つのエネルギー塊を飲み込んで無力化するという事は出来無い。

 また喉に当たる首の内側も吐き出す為のみの構造であるが故に耐え続ける(・・・・・)事は想定外。

 結果、七つの爆弾が同時に起爆。閃光が奔る。


 連鎖的な反応で爆発の威力は増し増し。

 俺達は一ヶ所に固まって防御したので無事です。準備も無しに仕掛けてはいませんから。

 これはゲームには存在しない、現実であるが故の覆せない事で、現実だからこその対処(攻略)法です。


 四散し、消え失せた上半身。何とか耐えて残った下半身も焼け焦げて煙を上げている。

 力無く膝から崩れ落ち、鈍い地響きと振動を残し第二形態は粒子化します。


 ──が、まだ最後の第三形態(・・・・)が有る事を俺だけは知っていますから油断はしません。


 再び、消え掛ける粒子が集束し、形を成す。

 第一形態・第二形態よりも遥かに禍々しい気配を鬱陶しい程に放ちながら、空中で真球に成る。


 同時に、地震が来た様に大きく揺れる。

 物理的には可笑しくても、考えるだけ無駄です。何しろ、此処はダンジョン。何でも有りですから。


 ──と、そんな事を考えていると、俺達の足下、立っている場所が床──天井かもしれませんけど、剥ぎ取られる様に宙に浮き上がります。

 他にも大小様々ですが三十程、同じ様に。

 これはアレですかね。アクション物に有り勝ちな落下したら即死の空中足場系戦闘ですか。

 そんな考えを肯定するかの様に上昇。真球状態の魔宮主(ボス)も距離間を保ったまま一緒に。

 無駄に演出が細かいです。


 徐々に上昇速度が加速し、雲の層を突き抜けて、大気圏の様に雲が遥か下に有る、下に青空が有り、頭上には漆黒の宇宙が広がる最後の戦場に。

 この光景にはフォルテ達も言葉を失っています。俺は魔宮主(ボス)に集中しています。

 あと、絶景なのは間違い有りません。

 状況が違えば、素直に楽しめるんですけどね。


 ただ、軽く冷や汗を掻きます。

 見た目だけではなく、明らかに空気が薄い(・・・・・)

 幸い、皆無では有りませんが……多分、有限(・・)

 此処に来ての時間制限付き(・・・・・・)ですか。

 “世界一の試練”だと考えれば、此処までされる事にも頷ける気はしますけど。容赦無いですね。

 まあ、これ位は乗り越えなければ、不適格(・・・)という事なんでしょう。だから頑張るしか有りません。


 視線と手振り(ハンドサイン)で指示を出し、警戒。

 それを見て合わせたかの様に真球が弾ける。

 中から現れたのは浮遊する四つの頭と、蛇の様に細長い身体をした東洋龍。



(──っ!?、此処で、更に異常個体(ミュータント)っ……)



 色違いでも本体が東洋龍なのは原作(ゲーム)と同じ。

 しかし、飛頭(分体)は二つだった筈が、四つ(・・)

 此処まで──と言うか、今まで遭遇した異常個体(ミュータント)というのは何れも属性が違う(・・・・・)存在だった。その為、姿形自体は大差は無い。多少の際は仕様の範疇。

 だが、今回に限っては舌打ちしたくなる。


 原作(ゲーム)での、この第三形態は初見殺しで有名。

 本体を倒さなくてはならないのは当然にしても、何方等か片方でも分体が存在している限り、本体に何れだけダメージを与えても倒す事が出来無い。

 設定上では、HP1で残るらしく。分体によって即座に半分近くまで回復してしまう。

 尚、この効果を使うと分体は自壊するが、本体が存在していれば程無く再生する。完全状況で。

 その為、分体と本体を殆ど同時に倒す様に考えてダメージ量を調整しなければ攻略は不可能。

 長期戦になれば消耗するだけで勝ち目が無くなる滅茶苦茶難易度の高い相手。

 加えて、本体だけを攻撃してダメージを蓄積し、それから分体を倒そうとすると、分体が本体を回復させてしまう。

 また本体のHPが三割を切る毎に、分体の方へのダメージ量が少なくても回復されてしまう。

 つまり、如何に均等にダメージを与え、略同時に近い形で撃破するのかが唯一の攻略法。


 その為、元々は俺が本体、フォルテ達は二人ずつ組んで分体を一つずつ。そうするつもりだった。

 それが出来無くなった上、一対一での同時撃破。不可能ではないにしても……容易くはない。


 ──が、その前に先ずは確認する事が有る。

 フォルテ達には直ぐに動ける様に待機して貰い、俺は手加減無しで飛頭の一つを攻撃、破壊する。

 戦闘開始(ゴング)と受け取った相手の反撃を回避しながら破壊した飛頭の再生速度を計測。

 再生──再び顕現するまでには1分強を要す。

 ターン制でなら、次ターンの終わりには再生するといった所だろうか。

 早い事は早いが、決して不可能ではない。十分に同時撃破は可能なだけの間は有る。


 散らばって攻撃を回避しているフォルテ達に向け一対一での同時撃破(・・・・)を指示。

 同時に、フォルテ達の戦闘を補助する為に彼方等此方等に魔法で足場を作り出す。

 全体を覆う様に球状の結界を展開するという手も有りますが。その場合、一ヶ所を破られたら全体が崩壊しますからね。今回はリスクが高過ぎます。


 フォルテ達が動き回り、自分の担当分(ターゲット)に対峙したのを確認してから、俺が本体に攻撃を開始。

 原作(ゲーム)での救いは分体がダメージを負っていても、途中で回復はしない仕様だった事。

 分体の回復が有った場合、無理ゲーになる事から攻略可能な様に調整されたのだと思います。

 だから、現実では其処だけが気掛かりです。


 ──なんて事を考えていると本体の様子が変化。体の色が変わり、毛と鱗が刺々しく尖る。

 この変化で四割削った事が判ります。


 そのまま攻撃を続けていると体が弾け頭だけに。その頭が十倍に巨大化。残り二割を切った証拠。


 それを見て、フォルテ達に合図。

 フォルテとティア、アンとエクレが交換(・・)

 より確実に、同時撃破し易くします。


 そして、予め決めてあった俺の決め手を合図に。フォルテ達と息を合わせて倒し切る。


 今度こそ魔宮主(ボス)が粒子となって消滅。

 同時に足場が消え──落下。

 ──とは言え、ふわりと浮きながら降りていく。そんな感じを体感しながら、視界が光に染まる。



《──スキル【不撓不屈】を獲得しました》

《──神具“天恵の指環”が贈られました》


《──隠し条件、“完全同時撃破”を達成している為、攻略達成者にクリアボーナスが贈られます》

《──スキル【同調技撃(ユニゾン・ドライヴ)】を獲得しました》


《──特殊条件、“導きし者”を達成している為、攻略達成者にスペシャルボーナスが贈られます》

《──スキル【神力】を獲得しました》

《──スキル【聖者】を獲得しました》




 ────────────────え?。




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