?って惹かれるよね
『いやぁ、あんなにあった鉱物が』
無事にフロアボスであるマテリアルゴーレムを倒した俺は、ドロップ品の小ささに驚いて、呆れていた。
倒した直後は様々な鉱物が光り輝いていたのだが、それらは全て光の粒子となって消えてしまい、残ったのはミドルゴーレムがドロップするCランク鉱物よりも小さい赤色の鉱物だ。
『鑑定』
《朱紅石》Aランク
名前が着くほどの大物、ランクもAだ。
だが、こうも小さいと何だか期待はずれ感が否めないのも正直なところだ。
『【鉱物吸収】』
鉱物を吸収し、コアも取得する。
『鉱物ランクがB+に成長しました。進化先が解放されました』
ランクがAだからと言って一気に鉱物ランクがAまで上がってくれないのがこの世界だ。まぁB+になっただけありがたいと思うしかない。
楽しみなのはもうひとつの方だ。
『自己分析』
《ミドルゴーレム(特質者)》
身長・変化可能
体重・変化可能
魔法適正・無
鉱物ランク・B+
進化・ラージゴーレム(103/100)
・マテリアルミニゴーレム(103/100)
・???(103/250)
『えーっと、説明なし?』
微かな希望を胸に天の声(仮)に聞いてみたが、やはり返答はない。
進化先は3種類あるみたいだが、もう少し詳しい説明が欲しいものだ。
まずラージゴーレムは35階以降に出てくるゴーレム系のモンスターだ。体はマテリアルゴーレムと同じサイズまで大きくなるが強度はミドルゴーレムとあまり変わらないらしい。
次はマテリアルミニゴーレムだが、名前のままマテリアルゴーレムのミニバージョンということだろう。こちらは聞いたことの無いモンスター名だが、名前的にマテリアルゴーレムの進化前というのは分かる。
そして、???だ。
他の2つと違ってコアがまだまだ不足している。求められる対価が大きい分、見返りも大きいのだろうか。何も分からないが、進化先は適当に決めていいものではないだろう。
『103までは特別困ったこともなかったしなぁ』
ここまでフロアボスは別として、コアを集めるのにはそれ程苦労はしていない。
100という数字を目標にしていたから、到達した今、進化というものを味わってみたい気持ちもある。
だが、???は魅力的だ。
『よし決めた。次の階に上がって、コアを貯めよう』
寿命があるのかどうかも分からないこの状態で、ことを急ぐ必要は無いよな。
パーティーを組んでいた時でも、この26階以上登ったことはない。まぁ、9割方俺の実力不足のせいだったのだが。
『27階は……モンキータウンか』
27階へと続く階段を登りながら、前に読んだ『天ノ塔ガイドブック』を思い出す。
27階は原生林のようなステージで、モンキー系のモンスターが多く出現するはずだ。
モンキー系は牙や毛皮をドロップする。【鉱物吸収】が使えないのは少し残念だが、26階は探索者が多くなりすぎているので仕方がない。
微光しかなかった階段の先に、緑色の光景が広がった。
光源は1メートルほどの巨大なキノコだ。
26階とはまた違った趣の幻想的な風景が広がっていた。
「ゴーレムだ! 下の階のやつが登ってきやがった」
「全員、戦闘準備! ミドルゴーレムだが、油断するなよ!!」
「ふん、今更硬いだけのやつに負けるわけがないわ」
「それが油断だってんだよ!」
「気を引き締めろ、行くぞっ!」
『いや、来ないで!!』
来ないでという願いも虚しく、前衛2人、後衛2人の4人パーティーが完全に戦闘体制に入ってしまった。
前衛の1人は大きなバスターソードを構え、もう1人は大盾とメイスを構えている。後衛2人は豪華な装飾が施された杖を持っている。
その顔ぶれはギルドで見たことがあった。
AランクとBランクで構成されたパーティーで、いわゆる上層組と言われている人達だ。
つまり、、強い。
ゴーレム人生、初めての対人間戦闘が始まった。
『さて、この方々相手に逃げ切れるだろうか』