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新しく武器を手に入れた!

 冷静さを取り戻したところで良く考えてみると、少年の身体になったというのは悪い事ばかりではないかもしれない。

 十歳くらいの時というと、元の世界では剣道に打ち込んで賞を貰っていたはずだ。活力もあり、疲れ知らずで遊んだこともたくさんあった。得体の知れない異世界の冒険にはそちらの方が向いているかもしれない。何よりも、俺に宿っている精神は二十代の俺そのものだ。身体と精神が合わさり、最強に見えるかもしれない。

 そう思うと不思議と自信とやる気が出てきた。


「よし、よくわかりませんが、僕に任せてください! 僕は阪神玲。よろしくお願いします!」


「うおおおおおおお!」


「勇者レイ!勇者レイ!」


 甲高い声を張り上げると、律儀に待っていた人々の歓喜の声が上がる。こんな声を聴いたのは、剣道や空手の試合に勝った時以来だ。心まで少年に戻ったような心地がした。




 その後、俺はステラに星と占いの都を案内してもらった。


「この街は占星術……星の光や動きを見る占いの技術に長けた街で、山の中にあるのです」


「なるほど、山なら星の観察がしやすいってわけか」


「しかしそれ故、交通の面では不便なところがございまして。冒険者を雇うにしても一苦労なのです。冒険者は人々の困りごとを依頼として受けて解決してくれる方々なのですが、基本的に自由に行動するのでこんな辺鄙な所へは滅多に来ませんので……幸い、賊も不便なこの街にはあまり近づきませんでした。しかし、最近、近くの森にモンスターが棲みついてしまいまして」


「それで、そのモンスターを処理するのに困っていたというわけですか」


「はい。そこで、秘伝の召喚術を試してみたのです」


「で、召喚されたのが僕だと。期待に応えられるよう善処しますよ」


「なんと心強いのでしょう! どうかよろしくお願いします!」


「は、はい……」


 感極まったのか、ステラは俺の手を握った。ほんのり冷たくて、すべすべで、柔らかい。いきなりだったのでどきっとしてしまった。

 そうしている間に、俺達は街の中心に近づいて行っていた。


「さ、着きましたよ。ここが広場です」


「へぇー、すごい!」


 まず目に入ったのは真ん中にある巨大な噴水だった。灰色の石畳の中心に鎮座し、それはまさに要塞のような迫力があった。

 周りに立ち並ぶ建物も中世ヨーロッパのような、白い壁に木の柱を持つ造りだった。


「大きな噴水! 僕、ほんとに異世界に来たんですね!」


 とりあえず辺りを走り回ってみる。テーマパークに来たみたいな気持がして、俺のテンションは駄々上がりだった。

 しかし、肝心の水はちょろちょろとしか出ていない。節水でもしているのだろうか。

 それに、これだけ大きい広場なのに、あまり人の姿が無い。さっきから街を歩いても、外に出ている人自体少ない気がする。まあでも、今の俺にはあまり関係のないことだ。


「そうそう、武器屋ってありますか? モンスターと戦うなら、武器は絶対に必要だと思います」


「ありますあります! 召喚した責任もありますので、費用は私が奢りますよ!」


「よし!」


 彼女も俺の興奮に当てられてか、テンションが上がっているようだ。ノリノリのステラに案内されていくと、ハンマーと剣が交差した看板が出ている建物に案内された。

 ドアをくぐると鉄の硬い匂いが鼻についた。壁の至る所に剣や槍、斧、弓、盾が立てかけてある。山賊辺りが使いそうな棘つきの棍棒や俺には良くわからない鎖のついた武器まであった。


「いらっしゃい! おお、小さなお客さんだな!こんなところに来るってことは、冒険者志望か?」


 もじゃもじゃのひげを蓄えた禿げ頭のおやじが豪快に笑って出迎えてくれた。いかにも鍛冶屋なわかりやすい見た目だ。


「こちらは鍛冶屋のカーロフです。カーロフ、この方は小さなお客さんではありません、勇者のレイさんです」


「はじめまして、阪神玲です。よろしくお願いします」


「あんたがこの街期待の勇者様か! 俺からも頼む、どうかこの街を救ってくれ」


「お任せください。さあ、どの武器にしようかな……」


 俺はぐるりと店内を見渡してみる。長い柄、鋭い刃、固い槌。どれも手に取られるのを待ち望んでいるようだ。だが、俺が選ぶのは、やはり。


「勇者の武器と言えば、やっぱり剣でしょ!」


 俺はとりあえず、近くにあった長剣を手に取ろうとした。しかし、その直後。


「お、おもっ!?」


 剣が地面に落ち、がちんと金属音を立てた。いや、落ちたというより、俺が落としてしまったのだ。

重すぎる。筋トレに使うバーベルを持っているかのようだ。こんなものを振り回したら腕が外れて飛んで行ってしまう。これからすべてのRPGは重さの概念を導入すべきだ。


「勇者様!? だ、大丈夫ですか!?」


「お、おう。怪我はねえのか?」


 二人の心配する声が聞こえる。こんなことで注目を浴びるのはものすごく恥ずかしい。


「な、なんとか大丈夫だ。心配かけてすまなかったな」


 結局持てそうな剣を探したところ、肘から先ほどの長さしかない軽そうな短剣があったのでこれを買ってもらった。


「この武器をメインにするのは少し厳しいかな……」


「……なんだ? うちの武器が頼りないと思うのか?」


「……あれ?」


 何気ない俺の呟きを聞いたカーロフの声は震えている。怒りを押し殺したような声だ。しまった、まずい事を言ってしまったらしい。


「そ、そう言う意味では……」


「うちの武器はいつだって最高だぞ! 頼りないのはお前さんの腕だろうがよ! 武器のせいにするんじゃねえ!」


「まあまあ……ごめんなさい、カーロフは、頭に血が上りやすいんです」


 カーロフの顔は熱したフライパンのように真っ赤になっている。目が血走り、髭が逆立ってウニを頭に付けたようになっていた。

 でかい男が怒り狂っているのは、はっきり言って普通に怖い。よくステラは冷静に彼を抑えたりできるものだ。

 そんな彼女の働きもあって、程なくしてカーロフは落ち着いた。


「いや……すまなかった。子供相手にこんなに怒っちまうなんて…」


「こちらこそ変ないい方してすみませんでした。まあ、召喚されたばかりの自分に腕が無いのは確かです」


「そうか……それなら、よかったら訓練していくか?」


 確かに、金属の剣を握るのは初めてだ。ちゃんと使い方を学んでおく事はきっと役立つだろう。


「お願いしてもいいですか?」


「それじゃあ、地獄の2時間達人コースで行くぞ!」


「じ、じごく……?」


めっちゃ不穏な単語が聞こえた気がするんだが?俺は助けを求めるように、ステラに視線を送った。しかし、俺に帰ってきたのは輝かんばかりの励ましの笑顔だった。


「地獄の二時間コース、頑張ってくださいね!」


「ちょっと待ってやっぱりやめますはいお騒がせしました、それじゃあこれで」


 剣を手にくるりと出口に向かおうとしたが、大きな手が俺の肩を掴んだ。


「逃がさねえよ?」


「許してください」


「だめだ」


 カーロフの輝かんばかりの笑顔を見ると、何故か不安になるのだった。


初回という事で連続投稿です。これからもがんばります。

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