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街のクーデターに立ち向かった!

「騎士団、ゆけ! 私を守るのですな!」


「はっ!」


 真っ先にトレリャを止めようとした俺とリアネーを阻止するように、トレリャの指揮する騎士団が立ちはだかった。

トレリャを守るような陣形で整列し、大盾を構えた騎士たちはまるで青い壁のようだった。鼠一匹通る隙間も見つからない。


「ダメ! これじゃ、すり抜けられない!」


「くそっ……こんな時まで命令を聞くなんて、律儀な騎士どもだ! ステラ、長なら何とか言えないのか!?」


「すみません、騎士の指揮権はトレリャにあるんです! 私では……」


「そうか、悪かった! 一緒に何とか切り抜けるぞ!」


 その時だった。ポンポンポンポン! 何かがはじける音と共に、騎士たちの足元から次々に小さな爆発が起きた。


「うわあ!」


「な、なんだ!?」


 騎士たちはバランスを崩してんやわんやだ。一体何が起きているんだ。よく見てみると、街の方に簡易魔法の瓶を持ったエレンがいた。


「エレン!? 危ないぞ、下がっていてくれ!」


「わたしも一緒にたたかう! わたしはゆうしゃさまのともだちだから! ゆうしゃさま、ボウケンシャさん、がんばって!」


「皆のもの、勇者様を助けてください!」


 ステラが号令をかけると、住民たちも次々と応戦する。占いと魔法が盛んな街なだけあって、住民はほとんどが魔法を使えるようだった。炎や風、雷を放って騎士たちの防衛線を崩そうと試みる。


「いくぞ! 平和を取り戻してくれた勇者様達を援護しろ!」


「おう、ステラ様の占いは正しかった!」


 手の平クルックルなのは置いといて、援護は有り難い。大勢の住民が参戦したことで瞬く間に門の前が怒号と魔法の飛び交う戦場と化した。この混乱の中なら、行けるかもしれない!


「今だ、リアネー!」


「うん、行こっ!」


「ええい……邪魔な者どもめ、死ぬがよいですな!」


「!? レイくん、危ない!」


 トレリャが動いた。指輪によって増幅された、凄まじい魔法が俺達に襲い掛かった。リアネーは持ち前の反射神経でとっさに飛びのいたが、俺は遅れてしまった。


「うっ、しまっ……」


 素人目に見ても、他の住民が放つ魔法とは格が違った。業炎と、轟雷と、列風と、激流。それらすべてが混ざった凄まじい破壊魔法の塊。いくら狼の突進を耐え続けたこの防具でも耐えられるだろうか。死ななくても、痛みで気がどうにかなってしまうかもしれない。俺は終わりを覚悟した。


「……させないよ」


 魔力の塊は突然受け流され、あさっての方へ飛んでいき、轟音と共に爆発した。

 

「た、助かった……」


 俺を助けてくれたのは誰だ? 誰かが俺の真上に浮いている。ローブを着て、猛禽類のような鋭い眼光を持つあの人物は。


「あんた、魔法屋のオド!?」


「使いに出したエレンが帰ってこないと思ったらまったく、派手にやってるじゃないか。モンスターのほうはうまくいったみたいだね。その頑張りに応えてこのババも手伝ってやろう」


「俺もいるぜええええええ!」


 騎士たちが揺れた。いや、揺れたのではない。投げ飛ばされている。騎士たちを投げ飛ばしながら、カーロフがこっちに突っ込んできたのだ。


「まずは依頼達成おめでとう! お前ならできると信じていたぞ!」


「ああ、ありがとう! だが、まずはあいつを何とかしてからだ!」


「私に歯向かう反逆者どもめ……もう一度消し飛ばしてやるのですな!」


 トレリャの周りに膨大なエネルギーが集まる。魔力が高まりに併せて空気が震えはじめる。


「あのでかいのが来るぞ! オドは防御を頼む! そこで俺とカーロフが防御を突き崩すから、リアネーがトレリャを止めてくれ!」


「よーし!」


「ほいガッテン!」


「……すまない。もうあの魔法は止められないよ。一回が精いっぱいだ」


「……マジか?」


 おいおい、ヤバいぞ。それじゃあ全員魔法に潰されて一巻の終わりじゃないか!

 

「何かほ他にないか!?」


「こうなれば仕方ねえ、俺に考えがある!」


「カーロフか! どんな作戦だ!?」


「俺がお前を投げ飛ばす! そいで、あの裏切りバカトレリャに一発かましてやれ!」


「おいおいおい、それはそれでヤバいぞ!」


「つべこべ言ってる場合か、ほら飛ぶぞ!」


「おいおいおいおいおいおいおい、リアネー、何とかしてくれぇー!」


「レイくん、怪我しないでね!」


 あ、これ無理だ。俺の小さな体は、カーロフにあっさり抱え上げられた。


「いけぇ! 鳥になってこおおおおおおおおおおおおおおおおおい!」


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 放り投げられ、俺の身体は宙に舞う。応戦する住民を越え、トレリャを守る騎士を越え、今まさに魔法を放たんとしているトレリャに迫っていく。こうなったらもうやるしかない!


「勇者!?」


「うおおおおおおおおおおお!!!」


 指輪が、トレリャが迫ってくる。

 彼が驚いた顔でこっちを見る。だが、俺はもう止まらない。トレリャの顔がどんどん近づいてくる。冷や汗の一粒、髭の一本まで数えられるまで近づき……


「あっやばいこれ止まらない」


 俺は、


 トレリャと、この街の副長と、今まさになり上がろうとしているクーデター首謀者と、

 

 唇を重ねてしまった。


「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」


 どうしてこうなった。


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