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狼と再戦した!

「ふぅ、弓を使うまでもない奴らだったね。大丈夫だった? 怪我は無い?」


 リアネーはぱん、ぱんと服の汚れを払う。


「あ、ああ。怪我は無いよ」


「それはよかった。……それにしても、盗賊ギルドは金にならない所には行かないはず。こんなところにいるという事は、雇った誰かがいるのかもしれないわね」


「俺達の邪魔をしようとしている奴がどこかにいるってことか?」


「そうね。となると化け物が退治されると困る人の仕業かしら。街の人……ではなさそうだけど」


 リアネーはうーん、と考え込むが、急にぱっと顔を上げた。


「大丈夫だよ。どんな奴が来ても、お姉さんが絶対守るから!」


「確かに、さっきの強さがあれば大体は大丈夫だと思うよ。じゃあ、狼は俺に任せてもらおうか。俺には策があるんだ」


「策? その秘密兵器を使うのかな?」


「ご明察。そこでリアネーにも協力してもらいたいんだが、お願いしてもいいか?」


「うんうん! どんな策か、私に教えて!」


「そうだな……俺が狼と戦っている間は」


 俺は彼女の尖った耳に顔を近づけ、囁いた。


「手を出さないでほしいんだ」




 いよいよ俺達は因縁の森に入る。

 前回とは違い、今回は仲間もいる。策もある。今こそ、この森を攻略してやるんだ。


「グルルルル……」


「来たか……」


 森の奥から、のっそりと巨体が現れる。その目は敵意に満ちている。俺はその目を見据えて、ゆっくりと前に出た。

 巨大狼と俺は再び相対した。何度も吹き飛ばされたせいだろうか、本能が恐怖を訴えてくる。膝ががくがく震える。だが、俺は負けたくなかった。


「さて……やるか、俺の策!」


 俺は背負っていた箱から、青い花束を取り出して差し出した。


「え……えぇ!? お花!?」


 リアネーが驚愕している。しかし、この花こそが、勝利をもたらすものなのだ。たぶん。きっといける。


「グゥオオオオオオ!!!」


 巨大な狼は咆哮すると、再び俺に襲い掛かってきた。風を切り、枝をボキボキ折りながらその身体をこちらへとぶつけてきた。


「うわあっ!?」


「レイくん!」


 俺は吹き飛ばされてしまう。花束も手から離れてしまった。


「くそっ……負けるか……!」


 箱からもう一つ花束を出す。何を隠そう、箱にはぎっしりと花束を詰め込んでおいた。しかし再び突進を仕掛けてくる狼は止まらなかった。


「グアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオ!!!」


「うぐっ」


 またしても俺は吹き飛ばされてしまった。土の上を転がされたせいで、苦い味がする。こんな攻撃が耐えられるのは、女装服の防御力があってこそだ。

 木陰に隠れたリアネーは唇を噛んで、心配そうな目で俺を見ている。弓に手を伸ばしそうになっているが、約束の通り必死に自分を押し殺しているようだ。


「くそっ……負けられないんだよぉっ!」


 何度でも、狼は俺に襲いかかる。何度でも、俺は立ち向かう。

 しかし俺が手にするのは剣ではなく花。

 荒れ狂う黒い暴力に、俺は青い花を手に抗い続ける。


「止まれ……止まれえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 狼は、止まった。

 俺に敵意が無いように。彼もまた、敵意を失っていた。


「……やっと、わかってくれたか。この狼、躾がなってなかったんじゃないのか?」 


「よかった……もう、無理するんだから!」


 リアネーが木陰から出てやって来た。狼は彼女にも襲いかかる様子はない。彫像のように、じっとこちらを見つめている。


「心配かけて悪かったよ」


「ねえ、何でこの狼の気持ちがわかったの? 止まってくれるって」


「あの狼、あんなでかい牙を持っているのに突進しかしてこなかった。それに、奥に青い花の中に建てられた墓があるのに気づいたんだ。それで、あの狼は墓を守るため、俺達をここから追い出したいだけじゃないかって思ったんだ。そうしているうちに、魔法屋の孫娘と紙芝居を見に行ったら、ちょうど狼の情報が転がっていてね。一か八か、試してみようと思ったんだ」」


 俺は狼の方を見る。こちらを凝視する瞳は思ったよりきらきらしていて、よくよく見ると普通の犬のような愛らしさがあるようにも思う。その後ろには、青い花に囲まれた石碑があった。勿論、俺の持ってきた花と同じものだ。


「もう……もし違ったらどうするつもりだったの!? 大けがしてたかもしれないじゃない!」


「大丈夫だ、この服はすごい防具なんだぜ? 俺はだてに女装してないよ」


「だからといって、もうこんなことしちゃだめだよ。次からはちゃんと、お姉ちゃんが守るからね!」


 リアネーは頬を膨らませる。しかし、怒りつつもほっとしているようだ。


 一方狼は頭を揺らし、墓を示した。花を供えてほしいと頼んでいるように見えた。俺は頷いて応えると、箱の中に入れていた在庫全てを墓に奉げることにした。


「……ん?」


 遠くから見れば隙間なく青い花が生えているように見えるが、近く見るとまばらに隙間ができている。そしてそこは不自然に土がへこんでいた。まるで、掘りかえした後のように。更に墓の前、花の中に青い金属の破片があった。


「これは……」


「何かあったの? 私に見せて」


「ああ、頼む」


 金属片を受け取ったリアネーは目を凝らしたり裏返したり、あれこれ調べていたが、やがて「あっ」と言った。


「これは、鎧の欠片ね。しかもまだ新しいわ。誰かがここに来ていたのかしら?」


「鎧……鎧か……」


 鎧と言えば……まさか! 今度は俺があっと声を上げる番だった。


「わかった……全部、あいつだ!あいつの仕業だ!」


評価点が10点を越えました! ありがとうございます。

少し毎日更新がきつくなってきましたが、まだまだ行きたいと思います!

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