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身体が縮んでしまっていた!

 俺は阪神玲。さかがみれい、と読む。

 日本生まれ日本育ち、そして元日本在住だった。


 今、俺は変わった世界にいる。

 元の世界での俺は平凡な男だった。小学校、中学校、高校、大学と学生生活は問題を起こさず、無難にこなすことが出来た。

 小学校の時は剣道、中学の時は空手、高校の時は将棋に打ち込み、それなりに功績も挙げ、それなりの賞も貰っていた。ただ、転勤のための引っ越しやら何やらで学校を転々とし、それに合わせて競技も転々としていたので同じ友達と長い付き合いがあまりなかったのが、学生生活の僅かな心残りだった。

 そしてなんとか就職も済み、家族から独り立ちもして。とある会社の事務になった俺は黙々と仕事をしては帰る日々を送っていた。


 そんなある時、突然この異世界に来てしまった。

出社しようと家のドアを開けた所だったような気がする。何か前触れがあったわけでもなく、そうしたいと思ったわけでもない。本当に、突然だった。

 まばゆい光に包まれたと思った次に瞬間には、俺は石造りの神殿のような場所に立っていた。


「!?!?!?!? なんだ!?」


 いきなり目の前に広がった現実離れした光景。俺がきょろきょろしながら驚いていると、周りに建った柱の間からわらわらと人が湧き出してきた。


「おお……勇者様だ!」


「勇者様が参られた!これでこの街は安泰だ!」


 みんな服装が古臭く、日本のものでもない。中世ヨーロッパのような、時代錯誤の服装をした連中だった。また、髪色も日本では珍しい茶髪やら金髪がほとんどだ。その全員が神々しいモノを見るような目で俺を見る。当然、俺は慌てた。何故か言葉が通じることを幸いに、まずは質問してみることにした。


「え……ちょっ、なんですかこれ!? ここはどこですか!? あなたたちはどなたですか!?」


「ここは星と占いの街。私はここの長を務めております、ステラと申します」


 ファンタジーな単語とともに、一人のローブ姿の女性が前に出た。

 ステラと名乗ったその女性の年齢は二十代半ばと言ったところだろうか。燃えるような明るい茶髪に整った顔立ちをしている綺麗な人だった。そんな美人に急に話しかけられたものだから、俺はどきりとしてしまった。無難にこなしてきた学生生活は、恋愛も無難……というより、したことがなかった。正直、女性にはあまり慣れていない。

 俺は咳払いを一つして、気を取り直して話すことにした。


「そ、そうですか。で、目的は何でしょう? 僕に何をしてほしいのですか?」


「どうか勇者様に、我々をモンスターから救っていただきたいのです」


「お願いします勇者様!」


「どうか、どうか!」


 ステラが膝を折る。人々も続いて、地面に額をこすり付けんばかりにひれ伏した。

 ゲームみたいだな、というのが率直な感想だった。

 オタクとまではいかないかもしれないがゲームもそれなりに嗜んでいる俺は、モンスターと戦って冒険をするRPGなんかも少しは触ったことがある。先ほどまで現代の住人だった俺からすれば「これはゲームの中の世界だ」と自分に言い聞かせるのが、混乱した自分を鎮める最適な方法だったのかもしれない。

 しかしゲームとはいえ人々の必死の懇願は、確かに俺の心を動かしていた。


「……わかりました。ただし、この世界や街についていろいろ教えてくれませんか? 僕、ここのことを何も知りませんから」


「ありがとうございます……!」


人々は顔を上げ、安堵したような笑顔を見せる。中には涙を流している者もいた。まだ何もしていないのにここまで持ち上げられると少しだけむず痒かった。


「よし、じゃあとりあえず……あれ?」


 台から降りようとした俺は違和感に気付く。何かおかしい。歩いても思ったより進まない。

 そういえば先ほどから、声がおかしかった。俺の喉から出る音であることは間違いないのに、妙に高いのだ。

 神殿にヨーロッパ人と、俺は周りに気を取られ過ぎていたらしい。そこで俺ははじめて自分の姿に気付くことになるのだった。


「……ふぁっ!?」


 何かの儀式に使うのだろうか、神殿の壁には大きめの鏡がかけてあった。その中に映る自分の姿を目にした俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。


 鏡に映った俺は、十歳かそこらの少年だったのだ。

 

 決して低くはなかった身長が、今や周りの人と比べても明らかに小さい。髪は切りそろえられておらず、少し長めになっていた。いつの間にか服装も身体に合った大きさに変わっていた。

 しかし何よりも俺を驚かせたのは己の顔だ。丸い輪郭、大きい眼。体格と合わせると童顔どころか、子供そのものだ。今となってはアルバムの中で見るしかなかった俺の幼いころの顔が、べったりと張り付いているのだ。


「な、な……なんじゃこりゃああああああああああああああああああああ!」


「ゆ、勇者様!?」


「お気を確かに!」


 再び俺は混乱した。俺の断末魔のような叫びを聞いて周りの人々が狼狽し始める。情けないことに俺が落ち着くまでには少しだけ時間が必要だった。

お読みくださりありがとうございます。偶像兎です。この度、新しい作品を投稿する運びとなりました。

玲の冒険を楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます。宜しくお願いいたします。

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