幾度目かの遭遇
クライルド王国の首都 カルストイ。
大陸でも随一のこの街は、人でごった返していた。
いや、正確に言うならば二つのパーティーが通る道以外は人でごった返していたのだ。二つのパーティーの通る道の上には誰も足を踏み入れない。
──まるでそれぞれのパーティーを率いている少年達の道に立ちはだかる壁が無いように。
二つのパーティーの男女の比率は大きく偏っていた。
どちらのパーティーもリーダー的存在なのであろう少年以外に一切男がいないのだ。
黒髪黒目の少年が率いるグループはロリっ子メイド、狐耳のグラマーな獣人、素朴な印象を受ける可愛らしい魔法使い、お嬢様っぽい縦ロール、男装の麗人といった様の美人 の計五名の見目の良い女性がいる。
比率としては1: 5。 私の友人が見たら泣くだろう。あいつのグループは5: 0だ。ご愁傷様。
と、まぁあいつのことはどうでもいい。それよりももう一人の黒髪金眼の少年だ。黄金の瞳といえば、魔王や勇者といった世界と運命と神サマに気に入られた存在のみが持ちうるものだ。……最近は黄金の瞳持ちもあちらこちらにいるが、それにしたって結構レアだ。
私は思わず上がってしまいそうになる口角を必死に抑えながら、黒髪金眼の方のパーティーを確認する。
やたらニコニコしているアホ毛が可愛い少女に、ゴスロリを着ている魔族の女性(羽が生えてる点とツノの感じ的にサキュバスか?)、ボーっと宙を見ているメガネっ娘、顔を真っ赤にしながらも少年の右手に抱きついている少女、クールビューティーな美女、ずーっと口に食べ物を運び続けている幼女の計六名。
流石は金眼持ちといったところだろうか。 比率は1: 6。黒髪黒目には勝っていた。
私は手に持っていた紙に素早くメモを取り、簡単にだが似顔絵も描いておいた。無論バレないように、仕事道具で写真擬きを取るのも忘れない。今の世界の技術ではこのカメラ擬きで撮った写真を新聞に載せることはできないが、後でしっかりとした似顔絵を描くときには役にたつだろう。
久しぶりに売れる記事が書けそうだ。
私、川崎 泉吹こと、クライルドの民間新聞会社「クライス」のゴシップ記事担当記者であるアリアナは、無事ネタを仕入れることに成功して満足気な表情を浮かべて店から出たのであった。
──この後途轍もなく面倒な事に巻き込まれるとは知らずに。