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風の吹くまま

「初恋」企画参加作品です。

 風が吹いたら桶屋が儲かる。

 次々と重なる因果関係によって一見関係なさそうなところにも影響が及ぶということ。

 バタフライ効果とも言うし、今話題のカロリーゼロ理論も……いや、これは全然違った。

「だから、焼きそばパンは潰せば厚みがなくなるだろ? 厚みが違うのにカロリーが同じなワケがないじゃないか。それにカロリーは軽いから、潰すときに一気に潰せば空中に飛び散っていくんだよ」

「だから、カロリーはそういうもんじゃないの! たとえば潰すのにものすごく力が必要で、全身の筋肉が一気に筋肉痛になるくらいカロリーを消費することができるなら焼きそばパンのぶんのカロリーも消費できるかもしれないけど、そんなの現実的じゃないの!」

「焼きそばもパンも茶色でしょう? じゃあこの土手の土は何色? 茶色でしょ? ってことは、焼きそばパンは他の食べ物の2倍も自然なんだよ。それに見てこの青のり。まるで土の上に葉っぱが落ちてるみたい。どうよこの自然派の食品。ヘルシー志向だからこそ食べてるんだ」

「もういい。無茶苦茶すぎる」

 この大食漢は昔はシュッとしていてそこそこ顔も良かったのに、今では招き猫の体型にまっしぐら。幼馴染の好で言ってやってるのに聞く耳を持たない。もうため息すら出てこない。

「食べるのをやめたら死んじゃうの?」

「食べるのをやめたら死んじゃうの」

「だったら運動でもしたらどう?」

「代りにしてきて」

 ああ、だめだこの男。私の初恋を返せ。

「なんでそんなに痩せてほしいのさ」

「なんでって言われても」

 あの頃のかっこいい感じに戻って欲しいっていうかなんというか。

「太ってるということは幸せの証なんだよ? 世界には何も食べられなくて苦しんでる子どもたちがいる。それなのに、食べ物にあふれているこの国でわざと食べずに痩せるなんてその子達に失礼でしょ」

「いやいやそれとこれとは関係ないでしょ」

「関係ないと思ってたらだめだよ。世界はつながってるんだから。バタフライ効果って知らないの?」

「なんでもかんでも関係をもたせるんじゃありません」

「じゃあそうやって人の趣味をやめさせようとするのはやめてくれ。君は僕とは関係ないんだから」

「そこは関係あるでしょ」

「じゃあどんな関係?」

「幼馴染」

「それだけ?」

「それだけ」

 幼馴染である以上に初恋の人だったことはあるけど、それは明かしたことはない。今も別に言う必要はない。この体型の人に言い出したいとも思わない。

「そうか、それは残念」

「なにが」

「別に」

 そういって焼きそばパンを頬張る。もうそろそろ昼休みの終わりのチャイムが鳴る時間だ。

「そろそろ戻ろう? 授業始まるよ」

「なぁ、俺が痩せたら俺の事好きになる?」

「は?」

 何だその告白。いや、これは単なる質問かな?

「もしそうなら、俺のダイエットを手伝ってくれてもいいよ。家庭科部だし詳しいでしょ? あ、できれば菓子パンと惣菜パンとカレーとラーメンは続けさせて。他は我慢するから。あ、あと炭酸は飲む」

「無理。それ全部やめるなら考える」

「そうだよな、カレーとかラーメンは潰せないもんな」

「いや潰してもカロリーは減らないって! ほら、教室に帰るよ!」

 本当に重たそうな腰を上げる彼に吹き出しそうになる。

「本当に大きくなったねぇ」

「お母さんかよ」

「お母さんじゃないよ。遅れても知らないよ」

「お母さんみたいだな」

「はいはい」

「まんまお母さんじゃねぇか」

「うるさい! ビールも飲んでないのにビールっ腹のくせに!」

「ビール飲んでないから関係ないよ」

「関係あるの!」

「やれやれ」

 風が吹けば桶屋が儲かる。彼にフィットネスの風が吹けば……関係ないか。

 

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