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初外出

人口3500人未満の国連加盟国が4カ国もあったので初投稿です

「では…図書館に行くのは小谷と佐々木に任せるがいいか?」


「ええ、しっかりメモってきますんで大丈夫です!地図もエリスさんから貰いましたし…あと部長、いくらエリスさんのお手伝いができるからっていってセクハラ行為だけは絶対にやめてくださいね」


「何を言うか!!!その一線は流石に超えぬ!!!それは誓ってもいいぞ」


「…まぁ吉岡が働いてくれるお陰で図書館までの電車賃と昼食代貰えたわけだしな…丸山、部室の留守番頼むぞ」


「了解です、トイレ以外は籠ってますんでパソコン盗られないようにしっかり見張っておきます」


朝起きても部室が元の世界に戻るなんてことは無かった。

図書館…そこに小谷と佐々木が行って自分達が知っている歴史世界とカオス第二次世界大戦MODの内容の双方と差異があるか歴史書を読んで確認することが決まったのだ。

最初は全員でいこうとしたのだが…。

小谷が何かに気が付いて呟く。


「よくよく考えたら俺達…この時代の…いや、この世界のお金もってないじゃん…」


吉岡がハッとした表情でそのことに気が付いた。

金がなければ何もできない、図書館までのルートは朝食時にエリスに聞いたので問題ないが、出発間際になって金がないことに気が付き、慌てて吉岡はエリスさんに恐縮しながら言った。


「今日一日働きますのでその分の労働賃金を前借できませんでしょうか?」


吉岡は事情を説明した。

図書館まで行きたいのだが、この世界の通貨を持っていない。

図書館には二人が行って歴史書を調べてどのくらい自分達がいた世界と差異があるのか確認したい。

だが、通貨を換金しようにも換金できるものが現状ではないので、吉岡自らが働いてそのお金で二人を図書館に行かせたいと…。

エリスは吉岡の話を聞いて、手を振って答える。


「そんな…吉岡さん達に宿のお仕事をなさっていただかなくてもお金でしたらお支払いしますわ、昨日は素敵な映画を見せてもらいましたし…それに吉岡さんは私が獣人でも嫌な顔せずに接して下さったのですから…」


「いえ、それでも私達はお世話になっている以上、私はエリスさん達のお手伝いがしたいのです。ワガママな事を押し付けているようで大変申し訳ないのですが…お願い致します!この通りです!」


吉岡が頭を下げてエリスに懇願すると、エリスは笑顔で分かりましたわと答え、当番のエディを呼んできて吉岡に10円札を渡した。

当時の10円は現在の価値にして約1万3千円…。

一日働いて1万3千円なら日雇いや短期アルバイトとしてはそれ相応の金額だ。

吉岡はエリスに何度も頭を下げて前借した10円札を握りしめて小谷と佐々木に託す。


「じゃあ行ってきます、夕飯までには戻ってくると思います」


「吉岡、くれぐれもエリスさんや皆に迷惑かけるんじゃねーぞ…愛想尽かれたらおしまいだからな」


「おう、ってか小谷ちょっと怖い顔しながら言うのやめて…マジで怖いから、手は出さない!ホントだから!!!」


小谷と佐々木はそれぞれカバンとリュックサックを持って宿を出た。

二人は初めて宿の外に足を一歩踏み出したのだ。

図書館までの道のりは少し遠い。

エリスが記した地図によれば電車を乗り継いで30分の場所にあるようだ。

小谷がエリスの地図を持って異世界最初の外出となる。


そこに広がるのはアスファルトではなく、石畳で舗装された道路。

道路の両脇を年期の入った古い建物が幾つも連なっている。

その光景は日本…というよりも外国人が見た「日本と中国の建築物がごちゃごちゃ混ぜ合わせたような都市」だ。

瓦で出来たいかにも日本式の建物もあれば、真っ赤で明るい色が特徴的な中国式の建物もある。

ここが横浜だからということもあるかもしれないが、ここは中華街ではない。

だとすれば亜細亜連邦の歴史が深く関わっているのだろうと小谷は直感で感じる。


道路には様々な人種が縦横無尽に蠢いている。

明らかに日本人だとわかる者もいれば、エリスのように獣人であったりトカゲ顔をしたリザードマンが着物を着ながらエルフの少女と笑顔で談話しながら歩いていたり…。

皆、表情は明るく生き生きとしていた。

小谷と佐々木は小声で話し合いながら歩く。


(俺達がいた時よりも皆活気があるな…)


(ですね…それと小谷さん、すでに気になるものが…)


(どうした?)


(走っている車を見てください…いくら横浜とはいえ、史実では戦前でこんなに車が走っている光景なんて無かったですよ)


道路を走っている車…1920年代まで生産されていたフォード社のT型モデルに酷似した車が沢山走っているのだ。この世界では一般乗用車の普及が急速に進んでいるようであった。

史実では高度経済成長期になって一般庶民でも購入できる安価な自動車が普及し始めたので、日本の自動車社会が形成されたのは戦後約20年後のことだ。

そのことを考えてもこの世界はやはり違う世界の日本なのかと佐々木は思い、そのことをすぐに報告した佐々木を小谷は評価したのである。

参考資料

日本円貨幣価値換算計算機(GDP・戦前企業物価指数)(1902-2016)

https://yaruzou.net/historical-prices-1932

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