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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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63.モモの新スキル


 『危機感知』、『敵意感知』が強く反応する。
 シャドウ・ウルフたちの狙いは間違いなく俺たちだろう。
 『無臭』LV4じゃ、まだアイツらの鼻を誤魔化すのに足りなかったようだ。
 アイツらどんだけ嗅覚いいんだよ。

「イチノセさん」

「ひゃ、ひゃい!」

 声をかけられビクッとするイチノセさん。
 現在俺はイチノセさんを背負い、市街地を駆けていた。

「とりあえず急に背負ってすいません!イチノセさんの話を聞いた限りじゃ、多分俺が背負って走った方が早いと思って」

 セクハラじゃありません。これは断じてセクハラじゃありません。

「あ、いや……それは、うん、そうだけどっ!その、から、密着……っ!」

 すんません。ホント、すんません。
 吐きそうかもしれないけど、もう少し我慢して下さい。
 ちなみに振り落さない様に、きちんと『影』で彼女を固定している。
 彼女のステータスじゃ、しがみついてもすぐに振り落されるだろうからな。
 ちゃんと銃も『影』で固定している。
 銃を『アイテムボックス』に入れられなかったって事は、やっぱ『他人の所有物』って俺が認識しているからだろうか?
 欲を言えば、彼女自身をアイテムボックスに入れるか、モモの様に『影』に忍ばせる事が出来ればよかったのだが、贅沢は言ってられない。

「スピード上げますよっ!」

「え、あ―――ひゃぁぁぁああああ!」

 まあ、今の俺のステータスなら、彼女一人を背負いながら走るくらいどうってことない。
 モンスターに追われてなきゃ、背中に当たる柔らかい感触を楽しめたのに……いや、追われてなきゃそもそも背負う事も無かったか。
 卵が先か、ニワトリが先か。ちょっと違うか。
 それにしても―――。

「逃げ切れそうにないな……」

 こちらがスピードを上げようとも、連中は一定の速度で常に距離を保って移動している。
 焦りは感じられない。
 『嗅覚』で追跡可能だからこそ、一定の距離を保ってこっちにプレッシャーを与えてくるような動きだ。
 集団で獲物をマークし、追跡する狩人の如き動き。
 ……厄介だな。
 ホント、何でコイツら、俺たちの事を追って来るんだよ。
 恨まれる筋合いは……うん、まあ色々狩ってたよね。こんちくしょう。

 しかし、どうするか。
 持久戦になればなるほど、こちらが不利だ。
 こうなったら、どこかで迎え撃つか?
 イチノセさんの射撃、それに俺やモモのスキルを生かせる場所……。

「やっぱ、あそこしかないか……」

 ショッピングモールの駐車場。
 あそこでシャドウ・ウルフたちを迎え撃つしかない。
 何かとあそこに縁があるな。
 ……嫌な思い出しかないけど。



 ショッピングモールに到着する。
 周囲を確認し、入口付近に向かう。

「……うっぷ、ここは……ショッピングモール?」

「ええ、ここでアイツらを迎え撃ちます」

 背中から降ろしたイチノセさんは口元を押さえつつこちらを向く。

「……戦うって事ですか?」

「はい」

「……分かりました」

 俺がそう言うと、それまでの青ざめた表情から一転、彼女の顔から一切の感情が消えた。
 雰囲気がガラッと変わる。
 目つきが鋭くなり、全身に纏う空気が冷たくなったように感じた。
 イチノセさんは銃を手に取り、周囲を確認する。

「……クドウさん、さっきの黒いので、私を屋上の方へ運んでもらう事は出来ますか?」

「え……あ、ああ」

 一瞬、あまりの切り替えの早さに面食らってしまう。

「私のスキルなら、屋上から狙い撃った方がいいので。そこから援護射撃します」

「……分かった」

 言われた通り、すぐに俺は『影』を変化させる。
 ショッピングモールは二階部分の一部が吹き抜けの駐車場になっている。
 狙撃には丁度いいだろう。

「あ、イチノセさん。ついでに、こいつも持って行ってください」

「これは……?」

 イチノセさんは受け取った『ソレ』を不思議そうに眺める。
 渡したのはニット帽だ。無論、ただのニット帽じゃない。

「それは分裂したアカが『擬態』したニット帽です。役に立つので被っておいて下さい」

 レベルが上がったことで、アカの『擬態』も性能が増した。
 擬態する物の大きさにもよるが、今のアカは二~三個までなら複数の物に擬態することが可能になったのだ。

「……ありがとうございます」

 ニット帽をかぶった彼女を屋上へ運び、モモが影から現れる。
 正面を向けば、そこにはシャドウ・ウルフの群れが居た。
 ひい、ふう……全部で12匹か。
 多いな。
 でも、今の俺たちなら―――。

「モモ、アカ、イチノセさん……狩るぞ」

「わん!」
「……(ふるふる)」
「ん」

 戦闘開始だ。
 俺とモモの新しいスキル。
 それを見せてやる。

「いくぞ、モモ!」

「わん!」

 まず、俺とモモは双方向へ駆け出した。
 すぐさま『影』を展開し、シャドウ・ウルフたちへ伸ばす。
 当然、向こうも『影』を出して対応するが、予測の範囲内だ。

 同時に、俺は奴らの頭上にありったけの重機や自動車を展開する。
 『影』と『質量』の同時攻撃だ。

「!?」

 シャドウ・ウルフたちは驚いた表情を浮かべる。
 一昨日戦った個体と、コイツらが同程度ならば、重機の質量には耐えきれない筈。 
 俺たちの『影』の攻撃を防いで、逃げれば重機は躱せる。
 だが、突然現れた重機は、奴らの動きを一瞬硬直させた。
 ズンッ‼という音と共に、逃げ遅れた数体のシャドウ・ウルフが押し潰された。

≪経験値を獲得しました≫

 よし、上手くいった。
 俺は内心ガッツポーズをする。
 だがまだ油断はできない。
 重機を逃れたシャドウ・ウルフたちが飛び出してくる。

「モモ!今だ!」

 俺はモモへ合図を送る。同時に服を叩き、アカへも合図。
 モモは頷き、すぅっと息を吸った。
 そして―――

「ワォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!」

 モモが『吠えた』。
 その叫びは、物理的な破壊を伴って周囲へと波及する。
 ビリビリと大気を震わせるほどの、超ド級の咆哮。

「「「~~~~ッ!?」」」

 その『叫び』を聞いて、シャドウ・ウルフたちは身をのけぞらせる。
 これがモモの習得した新しい『スキル』。
 かつて俺たちを絶望の淵へ追い込んだ怪物ハイ・オークの雄叫び。
 その魔石を喰らった事で、モモはその力を会得したのだ。

 動きが止まるシャドウ・ウルフ。
 その隙を逃す俺たちではない。
 その頭上へ重機を放つ。

≪経験を獲得しました≫
≪経験値が一定に達しました≫
≪クドウ カズトのLVが16から17に上がりました≫

 レベルが上がった。
 だが敵はまだ残っている。
 すると、何体かのシャドウ・ウルフが頭を打ち抜かれた。

「ナイス、イチノセさん」

 どうやら彼女も、モモが作った隙を見逃さなかったようだ。
 『叫び』の影響は受けなかったようだな。計算通りだ。
 モモの『叫び』は周囲に否応なく影響する。
 彼女にアカの擬態したニット帽を渡したのもこれが理由だ。
 ある程度の距離を保ち、擬態したアカに頭を守らせれば彼女への影響は殆どなくなる。

 ……ホントは事前に説明したかったけど、時間が無かったしな。
 あとで謝らないと。

 だが、これで残るシャドウ・ウルフは数体。
 良いペースだ。
 流れは確実にコッチ側にある。
 このままイケるか?
 そう思った次の瞬間―――ぞわりと、寒気がした。

「ッ……!」

 『危機感知』、『敵意感知』が警鐘を鳴らす。
 反射的に俺はその場から飛びのいた。

 その判断は正しかった。
 俺の居た場所。
 そこには『闇』が広がっていた。

「……なんだ、ありゃ?」

 『影』じゃない。
 それは全てを飲み込む底なしの『闇』に見えた。
 水たまりほどの大きさの『闇』はどんどん広がり、ごぽりと音を立てて中から何かが這い出てくる。

 現れたのは、一匹の黒狼だった。
 シャドウ・ウルフよりも一回りほど小さい。
 だが纏う威圧感は、他の奴らの比ではない。

「おいおい……勘弁しろよ」

 間違いない。
 コイツ、上位個体だ。
 シャドウ・ウルフの上位種、ダーク・ウルフってところか……。
 こんな奴まで居るなんてな。
 奴が現れただけで、それまで優勢だった空気が一転したように錯覚する。
 それだけの脅威。

「……ハイ・オーククラスか?」

 冷や汗を浮かべながら、俺は目の前の敵を見据える。
 どうして昨日の今日でこんな厄介そうな奴が現れるんだよ。

「グルル……」

 向こうはヤル気満々らしく、低く唸り声をあげながら俺を睨み付けている。
 しかも今まで姿を現さなかったのは、おそらく俺たちの力を観察していたからだろう。
 仲間をぶつけ、俺たちの力を計り、そして勝てると踏んだからこそ、コイツは現れた。

 なんて厄介な相手だ。
 モンスターのくせに、相当知恵が回る。
 今までの戦術は通用しないと思って、戦った方がいいな。
 でもな、俺たちの力を全部見た気でいるなら、それは大きな間違いだ。
 こっちにもまだ『切り札』は残ってるんだよ。

 そう、新しいスキル―――『忍術』がな。
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