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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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61.新たな仲間


 ショッピングモールを出て、待ち合わせ場所へ向かう。
 歩いて数分の距離だ。
 モンスターの気配もないし、すぐに着くだろう。

「ここか……」

 何の問題も無く目的のマンションにたどり着いた。
 あ、そう言えば、詳しい待ち合わせ場所に関しては聞かされてなかったな。
 入口か?それとも、どこかの空き部屋だろうか?
 とりあえず、イチノセさんにメール……あ、もう来てた。
 未読をクリックし、内容を確認する。

『入口に居ます』

 短文で、そう表示されていた。

「え……入口?」

 視線を移すが、そこには誰もいない。
 だが……何か『違和感』がある。

「……くぅーん?」

 モモも首を傾げて入口付近を見つめている。
 うん、なんかおかしいよな。
 なんというか、こう……トリックアートとか、騙し絵を見ている時の様な奇妙な違和感。
 あ、またメールが来た。

『すいません、今『スキル』を解除するので、少し待って下さい』

「?」

 首を傾げると、『視線』を感じた。
 以前、ゴブリン達と戦っていた時に感じたのと同じ視線だ。
 マンションの入り口から感じる。
 良く目を凝らす。
 すると―――。

「えっ?」

 ゆらりと景色が『歪んだ』。
 歪みはすぐに収まり、そこには黒髪の少女が銃を担いで座っていた。

「え、あ……」

 混乱する俺をよそに、彼女は立ち上がり頭を下げる。

「……こうして直接お会いするのは初めてですね。初めまして、一之瀬奈津イチノセ ナツと申します。よろしくお願いします」

 そう言って、少女はぺこりと頭を下げた。

「あ、どうも初めまして。クドウ カズトです」

 俺も頭を下げて自己紹介をする。
 もうお互い知ってるけど、一応形式的な挨拶だ。

「こっちはパーティーメンバーのモモとアカです」

「わん!」
「……(ふるふる)」

 モモも元気よく挨拶をする。
 アカは、服に『擬態』したままなので、多少震える位だ。

 ちなみに、イチノセさんはアカの事についてはもう知っている。
 俺が気絶している間に、モモと一緒に会っていたみたいだ。

「えっと、今のは『スキル』……なんですか?」

「はい。私のジョブは『引き籠り』でして、その時、手に入れたスキルに『認識阻害』と言うスキルがあったんです。自分の存在を他者に認識されにくくするというスキルです。まあ、色々と制約はありますけど」

 淀みなくスラスラとイチノセさんは答えてくれる。
 成程、認識阻害か。便利なスキルだな。
 『引き籠り』っぽいスキルだ。
 それにしても……。

「……」

「……どうしたんですか?」

 じぃっとイチノセさんを見つめていると、彼女は首を傾げて訊ねてくる。
 うん、もうアレだ。
 ストレートに聞こう。

「あの、つかぬ事をお聞きしますが……どうして先程から顔を合わせようとしないんですか?」

 先程から彼女はずっと横を向いている。
 顔立ちが整ってるから、それでも絵になるが、人と話す時の態度ではないだろう。

「……色々と考えたんです」

 はぁとため息をつく一之瀬さん。
 それは少し疲れたような口調だった。

「お恥ずかしい話ですが、私は人見知りの引き籠りです。それも初対面の人と話をするだけで、吐きそうになる程の筋金入りです」

「はぁ……」

 うん、まあ何となくメールのやり取りで分かってたけど。

「そんな私が他人……それも異性とパーティーを組みやっていけるのかと」

「ああ、はい」

「それで思ったんです。メール越しならまともに会話が出来るんだし、顔さえ合せなければ、会話も普通に出来るんじゃないかって……その読みは的中しました」

 そんな読み的中してほしくなかった。
 横見ながら、それ話されると凄い微妙な気分になる。

「くぅーん?」

 モモはいまいちよく分からないと言った感じに首を傾げている。
 うん、モモは分からなくても良いよ。綺麗なままでいて。

「という訳で、これからどうぞ、よろしくお願いします」

 横を見ながら、頭を下げるイチノセさん。

≪イチノセ ナツが仲間になりたそうにアナタを見ています。仲間にしますか?≫

 いや、見てないよ。
 明後日の方向いてるから。

「……」

 ま、まあ、いいか。
 もう決めたことだしな。
 俺はイエスを選択する。

≪申請を受理しました。イチノセ ナツが貴方のパーティーに加わりました≫

 彼女にも天の声が届いたのだろう。
 その横顔はどこかほっとしていた。
 パーティーメンバーの項目を見るとイチノセさんの名前が記されていた。
 どれどれ……。

イチノセ ナツ LV20

「……え?」

 俺はもう一度、画面を見る。


イチノセ ナツ LV20

 ……え、うそ、レベル高っ!?
 このヒト、俺よりも4もレベル高いよ。
 どんだけモンスター狩ってたんだよ!

「あの、イチノセさん、つかぬ事を聞きますが、これだけレベルを上げるのって一体どうやって―――ん?」

 ふと見れば、イチノセさんはぷるぷると震えていた。
 どうしたのかと見ていると、その顔色は次第に真っ青になってゆく。

「ちょ、イチノセさん!どうしたんですか!?」

 思わず駆け寄り、彼女の肩を抱く。
 そして、その顔を見ると―――

「……す、すいません、大丈夫かと思ったんですが……どうやら限界みたいです」

「え?」

 『危機感知』が警鐘を鳴らすが、もう遅かった。
 次の瞬間、

「おげえええええええええええええ」

 リバース。
 彼女のゲロが思いっきり俺にぶっかけられた。
 酸っぱい匂い、そしてめっちゃ気まずい空気が流れる。

「ず……ずみばぜん……」

「あ、はい……」

 こうして、俺とイチノセさんのファーストコンタクトは、出会い頭にゲロをぶっかけられるという中々に衝撃的な物となった。
 ……泣きたい。



 一方その頃―――。
 オークの群れは、現在ホームセンターを離れ、ショッピングモールへ向けて移動していた。
 理由は群れから離れ、一人独断で行動していた一体のオークだ。

「ルーフェンガ帰ッテコナイ」

 天より名を与えられ、赤銅色の肌を持ち、群れの中でも一線を画す実力者だった個体。
 圧倒的強さと独特の価値観から、群れでは浮いた存在となっていたが、それでもその実力を疑う者は一人としていなかった。
 その彼が帰ってこない。
 それは、彼らにとって明らかな異常事態だった。

「探スゾ」

 異を唱える者は誰も居なかった。
 死んではいないだろう。
 だが、何かしらの不測の事態に陥った可能性は高い。

 特にここ数日は雨が多かった。
 ルーフェンは強いが、その分通常のオークよりも弱点が顕著になった個体だ。
 何らかの理由で水を浴び、動けぬ状態にあるやもしれん。
 早く見つけ出さなければ。

「……ヌ?」

 ふと、一体のオークが鼻をひくつかせる。
 続いて他の個体も周囲を見回した。

 ―――囲まれている、と。

「出テコイ」

 オークが叫ぶと、屋根の上に一体のモンスターが姿を現した。
 黒い毛をもつ狼―――シャドウ・ウルフだ。
 他の個体も次々と姿を現す。
 皆、一様に高い所に登り、オークたちを見下ろしていた。
 それがオークたちのプライドを刺激する。

「小賢シイ」

 犬っころ如きが自分達を見下すなど許されるものか。
 ルーフェンが居らずとも、自分達の実力はシャドウ・ウルフより上だ。
 オークたちは即座に武器を構える。

「殺セ」

 掛け声と共に、オークたちは突撃する。
 所詮は犬畜生。
 自分達の敵ではない……筈だった。

 だが、直後。
 オークたちの足元に巨大な『闇』が出現した。

「何ダ!?」

 動揺するオークたち。
 あっという間に『闇』は広がり、オークたちを飲み込んでゆく。
 馬鹿な、とオークたちは思う。
 シャドウ・ウルフの操る『影』にこんな能力はない筈だ。
 これは、もっと別の―――。

「ッ……!?」

 不意に、嫌な気配を感じ、オークたちはそちらを向いた。
 一体いつの間にそこに居たのか。
 彼らの前方、道路の真ん中には一匹の黒狼が居た。
 他のシャドウ・ウルフたちよりも一回り程小さい。
 だが、纏う空気が明らかに違う。
 ―――上位個体。
 それも相当強い。
 オークたちは息をのむ。

「ウォォォオオオン!」

 黒狼の鳴き声と共に、『闇』がさらに広がる。
 必死に抵抗を試みるが、抜け出せない。
 次々とオークたちは『闇』に飲み込まれてゆく。
 オークだけではない。その周囲にある建造物、その全てが『闇』に飲み込まれてゆくではないか。

「グオオオオオオオオオオ―――……」

 その光景を見て、オークはようやくシャドウ・ウルフたちが高い所に居た理由が分かった。
 彼らは自分達を見下ろすためにああしていた訳じゃない。
 この『闇』に飲み込まれない様に、避難していただけなのだ。

 だが、気付いたところでもうどうにもならない。
 飲み込まれる寸前、オークはこの現象を引き起こした黒狼と目が合った。
 その瞳は、まるで虫けらでも見る様だった。
 ここまでか、とオークは己の運命を悟る。

(……ルーフェン、済マナイ……)

 最後に心の中で、どこかに居るであろう同胞に謝罪する。
 そして、十体以上いたオークの群れは全滅した。

≪経験値を獲得しました≫

 頭の中に響く無機質な声。
 それを聞き流し、黒狼は『闇』を消す。
 彼はオークになど興味はなかった。
 ただ、自分達の目的地へ向かう邪魔になりそうだったから排除しただけの事。

「……近イ」

 鼻をひくつかせ、黒狼はある方向を見つめる。
 かすかに感じる匂い。
 それはこの世界がおかしくなってからずっと探していた彼の番いの匂いだ。

「……待ッテイロ」

 そして、再びシャドウ・ウルフの群れは動き出す。
 新たな脅威はすぐそこまで迫っていた。
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