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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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44.メール


 な、なんだ今の天の声……?
 何かいつもと違う内容が聞こえたような……?

≪一定条件を満たしました≫
≪スキル『メール』が獲得可能になりました≫
≪現在未読のメールは一件です≫

 再び頭の中に響く天の声。
 ……メール。
 今、やっぱり、メールって言ったよな?
 聞き間違いじゃなかったよ。

「わん!」

「え、……あっ!」

 モモの声で我に返る。
 そうだった。 とりあえず、身を隠さないと。
 俺とモモは、すぐ近くの壁際に移動する。

 ここならあのマンションから死角になっている。
 俺たちを狙撃する事は出来ない。
 まあ、モンスターを狙い、学生たちを見逃したという事は、少なくとも人を狙っている訳ではない筈だ。それでも、念には念を入れておこう。

 それに狙撃するつもりなら、もうとっくにしてるだろうし。
 ……そう考えると、寒気がするな。
 誰かは知らんが、もし相手がその気だったら、俺もう死んでたって事だ。
 その事実を認識し、冷や汗が出る。
 馬鹿か、俺は……油断し過ぎだ。

「くぅーん」
「……(ぷるぷる)」

 落ち込んでいると、モモとアカが心配してくれた。
 ああ、ゴメンな、二人とも。
 そうだよな、落ち込むんじゃなくて、この反省して次に生かさないとな。

 うっし。気合を入れ直す。
 幾分、冷静になった。
 では、改めて―――メールってどゆこと!?

 今の天の声から察するに、『メール』ってスキルがあるのは確実だけど。

 俺はステータスプレートを開く。
 追加獲得スキルの項目。
 そこには確かに『メール』と表示されていた。
 必要ポイントは1ポイント。他の追加スキルと違って少ないな。
 気になるけど、現在のスキルポイントはゼロだ。
 次のレベルアップまでは獲得できない。

 でも気になる……。

 せめて、今送られてきたメールの内容だけでもチェックできないだろうか?
 そう思っていると、ステータス画面が変化した。
 なんだ?

 変化したステータス画面。
 そこには『メールメニュー』と表示されていた。
 項目に目を通すと、メール作成、受信ボックス、送信ボックス、未読一覧、アドレス帳などがある。
 下の部分には文字を打つための、キーボードらしき部分もある。
 立体的なパソコン画面みたいだ。
 こういう機能もあるのか……。

 項目の中で、『未読』と言う項目が点滅していた。
 そこに触れてみる。

未読メール一件。
宛名『イチノセ ナツ』
件名『初めまして』と表示された。

 ……ホントにメールだよ。
 どうなってんだよ、この世界。何でもありか。
 いや、現実の携帯が使えなくなった代わりに、こういう形で連絡手段が確立されたとか?
 と、とりあえず内容は確認しておいた方が良いよな?

 というか、コイツ、誰だ?
 イチノセ ナツ……?
 知り合いにはそんな名前の奴はいないし、会社関係でもイチノセなんて名字のヤツは居なかった筈だ。
 そもそも、俺の交友関係はそんなに広くない。
 友人だって片手で足りる程の数だし、こんな名前の奴が居れば覚えている筈。
 一体どこで会った?
 俺はメールの本文に目を移す。


突然のメールすいません。私の名前はイチノセナツと申します。
先程の戦闘はご覧になっていましたよね?
あの狙撃やったのは私です。

「……は?」

 思わず声が出た。
 な、何だって……?
 今のが、コイツの仕業?
 疑問符が俺の頭を埋め尽くすが、とりあえず続きを読むことにした。


アナタがそこに隠れて戦闘を見ているのを、私は見てました。
見つけたのは偶然です。
マンションの屋上で、外の様子を見ていたら、生協で食材を漁る学生、そしてアナタとワンちゃんの姿を発見したのです。

本来であれば、その時にこのメールを送ろうと思ったのですが、その前にモンスターが現れました。
見ず知らずの他人とは言え、死なれるのも寝覚めが悪いと思い、ああして行動を起こした次第です。

驚かせてしまい、大変申し訳ありません。
ですが、結果的には彼らの命も助かり、良かったのだと私は思います。

さて、本題に入らせて頂きますが、こうしてメールを差し上げたのは、是非私をアナタとそのワンちゃんのパーティーメンバーに加えて貰いたいと思ったからです。

いきなり何故?とお思いかと思いますが、実は私は以前からアナタの事を知っていました。
覚えていますか?
昨日、アナタが此処から数キロ離れた生協で、ゴフリン数匹を相手に闘っていた時があったでしょう?
あの時、私は遠巻きながら、アナタ方の戦いを見させて頂いてたのです。
雄々しくも緻密に計算された立ち回り、心底感服いたしました。

特にお連れである柴犬が素晴らしい。
強さ、可愛さ、毛並みの良さ、その全てが私の心をつかんで放しません。

その姿を見て、是非私もアナタ方のお力に慣れたらと思ったのです。
急なご連絡で混乱されているとは思いますが、なにとぞご理解、ご検討頂ければ幸いです。
良い返事をお待ちしています。


「……」

 えーっと、なにこれ?
 営業メール?

 要するにパーティー組みませんかというお誘いのメールだと思うんだけど、めっちゃ堅苦しい。
 運営会社から送られてくるお知らせメールみたいだ。

 どうしようか?

「……とりあえず、悪い奴ではなさそうだよな……」

 俺はこの人物が誰か知らない。
 文面も硬い。
 でも、この部分。

『特にお連れである柴犬が素晴らしい。
強さ、可愛さ、毛並みの良さ、その全てが私の心をつかんで放しません。』


 この部分からだけでも、コイツが悪い奴じゃないと判断できる。
 なぜかって?
 モモの可愛さが分かる奴に、悪い奴がいる訳ない。

 まあそれは置いといてだ。
 さて、どうする……?

 まだ罠と言う可能性も捨てきれないし、このままメールを無視するという選択肢もある。
 いや、それは駄目だ。
 なにせコイツは俺の事を知っている。
 昨日のゴブリンとの戦いを見られていたのなら、俺が道具を出し入れする瞬間も見られていたという事だ。
 『アイテムボックス』ないし、それに近いスキルを持っているという事は知られていると考えた方がいい。

 ……もしかして、あの時感じた『視線の主』か?
 なんかあの時誰かに見られていたような気がしたが、それがコイツなら辻褄は合う。
 スキルの事をばらされる可能性がある以上、無視は絶対にマズイ。

 それに、コイツが本当に俺たちとパーティーを組みたいだけという可能性だってある。
 俺が求めていた遠距離攻撃が可能な仲間。
 それも長距離からモンスターを一撃で絶命させられる程の威力。
 仲間になったら、強力な戦力になるのは間違いない。

 まだ信用したわけじゃないが、少なくとも返事だけでもしておいた方がいいだろう。
 『とりあえず検討させてください』とでも言って、時間を稼ごう。
 俺は『返信』の項目をクリックした。

≪スキル『メール』が未収得です。メールの返信は出来ません≫

 頭の中に声が響く。
 おいおい、『メール』スキル取らないと返事できねぇのかよ。
 もしやと思って、他の項目もクリックしてみるが、全て駄目だった。
 どうやら、スキルを習得してない状態で出来るのは、受信したメールの確認だけらしい。

 先ずはレベルアップだな。
 ここから離れて、モンスターを倒してレベルを上げて、即効で『メール』を習得するしかない。

「返事は後回しだな」

 とりあえずこの場を離れよう。
 俺を見つけたって事は、向こうは俺の潜伏や気配遮断を見破っている可能性が高い。
 まだ信用できない上に、攻撃手段が狙撃である以上、不用意に近づくのは危険すぎる。
 俺たちは、あのマンションから死角になる様に慎重に移動し、その場を立ち去った。




 一方、高層マンション屋上にて―――。

「……こんな感じで大丈夫だよね?」

 彼女、一之瀬奈津は、送信したメールの内容を確認していた。
 他人と顔を合わせずに、コンタクトを取るにはどうすればいいのか?
 その答えが、『メール』だった。
 人見知りな彼女でも出来る他人とのコミュニケーション手段。
 このスキルが当たった時、彼女は小躍りする程喜んだ。
 これなら、自分でも大丈夫だ、と。

 スキル『メール』は、自分が出会った相手であれば、誰にでも連絡を取る事が出来る便利なスキルだ。
 一応、人間限定という縛りはあるが、問題ない。

「これで、あのワンちゃんに会える……!」

 その一心で、彼女はメールを送った。
 元々、誰かとパーティーを組みたいとも考えていたし、あのメールに書いた内容は、ほぼ彼女の本心だ。
 クズだ何だ言いながらも、あの男性の事も彼女はきっちり評価していた。
 遠距離特化と、近距離特化。お互いの足りない部分を補える。
 ウィンウィンの関係だ。
 まあ、あくまであの柴犬のおまけではあるが。

 先程、彼らを偶然見つけた時は、まさしく運命を感じた。
 あとは向こうから、オーケーの返事が来るのを待つだけだ。
 どうやら彼女、断られるとは微塵も思っていないらしい。
 完全にゆとりの思考だ。

「……壁に隠れて見えないな。ちゃんと、メール見たのかしら?」

 ここからでは、彼らが隠れた場所は死角になって見えない。
 一応、もう一回送っておくか。
 もしかしたら怪しまれてスルーされているかもしれない。

 こういうのは始めが肝心だ。
 文脈もちょっと硬かったし、もう少し修正して送っておこう。

「……まだ硬いかな?」

 送信する。

「あ……誤字あった。も、もう一回送っておかなきゃ」

 送信。

「……もう少しワンちゃんを褒めた方がいいかな?」

 送信。

「うん、これだ。これならばっちり」

 送信。

「……返事来ないなぁ……」

 送信。

「念のためにもう一回、送っておこうかな」

 送信。

「あ、文章もまた少し変えよう」

 送信。

「それから―――……」

 送信、送信、送信。
 送信、送信、送信、送信。
 送信、送信、送信、送信、送信。

 そして、彼女がメールを送り続けて、一時間後―――。

「あ、ようやく返信が来た」

 よかった。
 四十五回ほど、メールを送ったが、ようやく気づいてもらえたようだ。
 どうやらSPが足りておらず、『メール』スキルを習得できなかったらしい。
 それでレベルを上げてた為、返信が遅れたとの内容が書かれていた。

「ふぅ……よかった」

 「検討させてください、少しお時間を頂けませんか。あとメールはきちんと読んでいます。何度も送らなくても大丈夫です。お願いします、お願いします」と前向きな返信を貰った。
 うん、結果は上々だ。
 分かりました、よろしくお願いしますと返信しておく。

 しかし、なにやら随分と萎縮しこちらの機嫌を窺うような内容だったのは、一体なぜだろうか?
 彼女は首をひねるのだった。
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