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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います  作者: よっしゃあっ!


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196/274

196.終わりの始まり


 ――異世界人。


 その存在を気にしていなかったと言えば嘘になる。

『質問権』でこの世界は、二つの世界が融合した新たな世界だと明言されていたし、人の姿をしたゾンビや、市役所の地下には明らかに人の手によって作られた遺跡もあった。

 だからモンスターたちが居た世界にも『人間』は居る可能性は十分に考えていた。

 

 でも、それがこうも唐突に現れるとは思わなかった。

 白いローブに捻じれた杖を持ついかにもファンタジー世界の魔術師然とした服装。

 銀色の髪に紅い瞳、おおよそ人間離れした美貌を持つ彼女の容姿はいかにも『異世界人』という表現がしっくり合う。

 唐突に何の前触れもなく姿を現した彼女に俺は動揺を隠せなかった。


「どうしたの? そんなに見つめて?」

「ッ……!」


 じっとこちらを見つめる彼女に、俺は無意識に後退っていた。

 敵意も殺意も微塵も感じないのに、まるで本能が彼女を恐れているかのようだ。

 そんな俺に彼女は苦笑して、

 

「そんなに警戒しないでちょうだい。別に取って食う訳じゃないし」


 ゆっくりと立ち上がり、無警戒にこちらに近づいてくる。

 すると足元の影が広がり、モモとキキが姿を現した。


「わんっ! がるるるる」

「きゅー!」

『……んー? なになにー?』


 更にフードの中で寝ていたシロも目を覚ます。


「あら、可愛いワンちゃんね。見たことない犬種だけど、こっちの世界にはこんな可愛いのがいるのね。それにカーバンクルに、ホワイトドラゴンか……。どっちも超希少種じゃないの。生存個体を見るのは初めてだわ。良い仲間が居るのね」


 彼女はモモたちを興味深そうに見つめる。

 少し前かがみになり、おいでおいでと手招きするが、モモたちは俺のそばから離れようとしない。

 それどころか、逆にますます警戒を強めたようだ。


「むぅ……ちょっとくらい撫でさせてくれてもいいじゃないの」


 めちゃくちゃ残念そうな口調だった。

 もしかしてモフモフが好きなのか?

 そこはちょっとだけシンパシー。

 あれ? もしかしてこの人、割といい人なのでは?


「……くぅーん」

「きゅー……」

「……(ぷるぷる)」

『?』


 呆れたような視線がモモたちから突き刺さる。

 ごめん、冗談だって。

 

「私、昔から動物に嫌われるのよねー……。私は動物めっちゃ好きなのに……」

「そ、そうですか……」

「まあ、いいわ。とりあえずそのワンちゃん達には後で撫でさせてもらうとして……」


 撫でるのは決定なんだ……。


「色々話さなければいけない事があるんだけど、その前に一つだけ確認させて」

「確認……?」

「ええ。貴方は『早熟』の所有者かしら? それとも『共鳴』? もしくは『検索』か『合成』でもいいのだけど?」

「ッ……!?」


 コイツ、『早熟』の存在を知ってるのか?

 それにモモが持ってる『共鳴』の事まで……。


「……その表情だけで十分だわ。持ってるのね。良かった」

「ッ……」

「なんで知ってるのかって顔ね。そりゃ当然よ。『四大スキル』は私が創ったスキルだもの」

「なっ――」


 絶句した。

 スキルを創っただと?

 コイツは一体何を言っているんだ?


奴ら・・に気付かれないよう介入するのは苦労したけどね。こっちの人達が少しでも生き延びられるように、色々手は尽くしたつもりだけど……。今のアナタやこの場所を見るに、少しくらいは報われたのかしら」

「何を……何を言って……」

「それも含めて全部説明するわ。ねえ、アナタ、他に仲間は居るの? 居るなら呼んでも良いわよ。どこか落ち着いて話が出来る場所に――」


 その瞬間だった。

 ゴゥッ! と、上空から巨大な風の塊が彼女に向かって放たれた。


「ん?」


 バチンッと、彼女はそれを腕一本で防ぐ。

 そして上空を見上げ、


「……ドラゴン?」


 上空を見上げると、そこにはソラが居た。

 凄まじい威圧感を放ちながら、目の前の女性を睨み付ける。


『何者ダ? 只ノ人間デハナイナ?』

「その青い鱗……それにさっきの爪撃……ねえ、アンタもしかして――」

『質問ニ答エロ!』


 再びソラは爪撃を放つ。

 先ほどよりも更に威力が上がっている。

 だが目の前の女性は手に持った杖を掲げると、あっさりとソラの攻撃を弾いた。


(何だ、今の……? 弾く直前、杖が一瞬光ったように見えたけど……)


 何らかのスキルによるものなのは間違いない。

 それもあのソラの攻撃を弾くほどの能力。


『カズト! シロヲ連レテ、ココカラ離レテイロ!』

「え? いや、ちょっと待――」


 こっちが何かを言う前に、ソラは爪撃を連発する。

 だがその全てが弾かれ、届かない。

 はぁっと彼女は溜息をつき、


「質問に答えるから、とりあえず攻撃を止めてくれるかしら? てか、私が威力分散させなきゃ、屋上だけでなく、建物の中に居る住民までまとめてぶっ壊れてたわよ。その意味分かってる?」

『ヌ……』

「加減を知らないわね。これだからドラゴンは……。まあ、いいわ。私はリベル。当代の『死王』リベル・レーベンヘルツよ。そういうあなたは、竜王の番いであってるかしら? 彼から聞いてた特徴と一致するのだけど」

『何ダト……?』


 その言葉に、ソラはどこかハッとした様子で、


『……ソウカ。貴様ガ夫ガ話シテイタ人間カ……。貴様モコノ世界ニ来テイタノダナ』

「どういう風に聞いていたのかは気になるけど、そういう事よ。危害を加えるつもりはないわ。話を聞いてもらえるかしら?」

『……』


 ソラは少しだけ何かを考え込むように目を瞬かせた後、俺たちの背後に着地した。

 どうやら矛を収めてくれたらしい。

 えっと……とりあえず、一之瀬さんたちに連絡するか。





 そして場所は変わって会議室。

 俺の他には、一之瀬さん、西野君、六花ちゃん、上杉市長、藤田さん、清水チーフ、十和田さんらがそれぞれ腰かけている。

 何かあればいつでも動けるように、壁際には自衛隊員らが、窓のすぐ外にはソラが、西野君の『影』には大野君がそれぞれ待機している。

 お互いに自己紹介はすでに済ませ、誰もが緊張した面持ちの中、彼女――リベルさんはテーブルに置かれたコーヒーを興味深そうに見つめている。


「ねえ、これってコヒィよね? 色といい香りといい、随分いいものなんじゃない?」

「コヒィ? コーヒーの事か?」

「コーヒー……こっちの世界ではそう発音するのね。頂くわ」


 どうやら彼女のいた世界にも似たような飲み物があるらしい。

 香りをかぎながら、ゆっくりと口に運ぶ様は品があり、非常に絵になる光景だ。

 ほぅと、彼女は満足そうに吐息を漏らす。

 インスタントだが、彼女の口に合ったらしい。

 一口飲んで、カップをテーブルに置くと、上杉市長が口を開いた。


「それで……リベル・レーベンヘルツさん」

「リベルでいいわ」

「そうか。ではリベルさん。アナタは自分の事を『異世界人』と言ったが、それは間違いないのかね?」

「ええ。でも証拠を見せろなんてつまらない質問はやめてね。それはアナタ達がこの世界の人間だと、どうやって証明するのかと言っているのと同じ。お互い無駄は省きたいわ」

「ふむ……では、そうしよう。儂らもお主が異世界人だという前提で話を進める。それでいいのだな?」

「理解が早くて助かるわ」


 あっさりと了承した市長に周囲がざわめく。

 思わず隣に座っていた清水チーフが市長に詰め寄る。


「市長、いいのですか?」

「構わん。重要なのは、彼女が何者なのかではなく、何をしにここへきたかだ。違うかね?」

「ッ……分かりました」


 相変わらずの市長の理解力には驚かされるな。

 この状況もあっさり飲み込めるなんて流石と言うしかない。


「良いわね。話の分かる方は好きよ」

「お褒め頂き光栄だ」

「じゃあ、本題に入りましょう。でも、その前にまず聞かせてほしいのだけど、アナタ達は今のこの世界についてどれだけ知っているのかしら?」


 そこでリベルさんは一旦、俺の方を見た。

 

「この世界の名はカオス・フロンティア。アナタ達の世界と、私のいた世界、その二つが融合した新たな世界――これは知っている?」

「あ、ああ……」


 俺は頷く。


「では何故、この二つの世界は融合したのか? これは知っている?」

「……いや」

「そう。ならそこから話すべきなのでしょうね。教えてあげるわ。何故世界がこうなったのかを。この世界の現状を。――そして、これから貴方達が戦うべき『敵』の存在をね」


 そう言って、彼女は語り始めた。

 俺たちにとっては余りに残酷な、この世界の真実を。


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― 新着の感想 ―
[一言] 死王の言ってる事って合理的に見えて合理的じゃ無いよね。こっちには異世界にいた奴も居るんだし、証明くらい余裕でできると思うけど。
[気になる点] 最終章は何話ぐらいの予定ですか
[一言] ネタバレが最終章の導入というのが、ちょっと不穏な感じ。 回収と決着はつくのだろうか。既知の敵の他に、結構出ていない敵や黒幕いますよね。オレタタは見たくないなぁ。
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