接客は大忙し!?『後編』
あの人のお話!
誰か当ててみよー!
ハーレムライフ来たー!! と思い、サン・チュ達がいる場所に戻ろうとする。
そんなテンションが上がった矢先に敵と言わんばかりにものすごいオーラを放ってる女性がいた。
おいおい。ちょっと待てよ。この人ってもしや……
その瞬間こいつは強敵だと確信した。
この人は既にビールを8杯目、しかも1人。
そう。これは、俺が初めて接客した相手だ……
「後から4人きます!!」
と、満面の笑みを交わしていた彼女。あの顔は失望へと変わっていた。
絶対にやばい人だ……本当に来ると思っていたんだろうな。まぁ、こちらとしてはビール代で儲かるのでいいのだけれど流石に可哀想だ。あれじゃあ、まるで友達とトレカを買いに行った時に、
「パック買おうぜー!」
となり、1人だけ強いカードがでない時よりも悪い。ましてや、貯めてた課金アイテムを友達と遊んだ時に、
「回せよー!」
と、なって嫌々、回したのにも関わらず強くもなくましてやめちゃくちゃ弱いわけでもない面白みのないキャラが出て場の空気がしらけるくらいに可哀想だ。
俺はここであのスキルを使ってみる。
『迷惑客の対処!!』
これは、さっき迷惑客を対処した時に何故か覚えた。使い方は分からないが使ってみよう。
まぁ、勝手に迷惑客扱いされていて、ものすごく可哀想だが、暴れ回られる前に対処はした方がいいとは思う。
「あのー……俺でよかったら話聞きましょうか……?」
彼女は表示を一転させるようにニッコリと笑う。
「私は山崎 剛生。あなたイイ男ね!」
おいおい! ちょっと待て……少し待て。そ、そうだよな、たしか、世界人口の8パーセントは同性愛者がいるって勉強したし……協調性だよな。うん。
「ははは。ありがとうございます」
俺はかなり引きながら声を出す。本当にどうしよう。どうしよう……こんな人に話しかけるんじゃなかった!
「正直な男の子は好・き・よ」
と、彼女は投げキッスをしてくる。
やばいやばい。
とりあえず、状況整理をしようかな……。
「あはは。あなたこそ素敵な女性ですね」
確かに、これは事実なのだ。外見は普通の女性なのだ。
「あら、そう。嬉しい事言ってくれるわね。あなたの事ますます気に入ったわ」
手と唇が俺の口に近ずいてくる。
やばい……! 俺は仕分けスキルを使用する。
しかし、それを避けることは出来なかった。
うっ……
「こ、これはやばい……」
俺の意識は段々と遠のき力が抜けてしまった。
『うおおおおお!』
「お前凄いな!」
「あ、あんたやる時はやるのね……その、ありがと」
「は……?」
「嬉しすぎて頭でもおかしくなったか? バカ野郎」
そうだ、さっき自分でも言ってたじゃないか。ここは本当に異世界だって。
死に戻りかは分からないがなんだか生き返ったのかな。
俺はさっきとほとんど同じ行動を済ませ、さっきの人のところへ向かう。
「あのー。すみません……」
「え……どうしたの? 私といいことでもする?」
「いや、いいです」
こいつはあっち系だからそういう発言はまず避けさせよう。
「もう、正直なんだからぁ!」
「ところで、他の人来ませんね..」
男? は突然泣き出した。
「あの、良ければ話聞きましょうか?」
「私ね実は男なの……」
……知っていても驚きが隠せない。何度見てもどこから見ても女だからだ。
「……」
俺は俯き黙りはなしをきく。
「私ね……365日と365日と243日前までね、付き合ってた彼女がいたの」
ここの人は変な数字の良い方をするな。この複雑な雰囲気の中、笑うのはおかしいので頑張って堪える。
「そうなんですか……」
「でもね、その子。私を騙してたの。お金だけ取られてその子のことが本当に好きだった……だから、絶望して立ち直れなくなった。そんな中で、この女装にハマったの。気持ちを少しでも女性に向けないようにするために……それで」
山崎さんは涙を堪えられずにその場で泣き出してしまった。
やばい、割と辛いな……。
「大変……でしたね」
「それで、あたしみたいな人を構ってくれる人がいるのかなと、思って……」
「それで、そうしてると……」
「貴方が初めてだったのよ……だから、その……嬉しくて、私みたいな人でも構ってくれるんだって」
「あなたは別に何も悪いことなんかしてないじゃないですか?」
「あの子に裏切られる程度の関係で喜んでた自分がもう辛くて……」
「本当に大変でしたね……どうしたらいいんでしょうね」
俺は寄り添うように話を進める。
「私のために……ううっ」
「まずはそれを治していくしか無さそうですね……」
「わかっているんですけど……」
『カルビ名人』
考えがまとまった……俺は話の例えのためにこのスキルを使用してみる。
「そうですね……なら、これはどうでしょう。脂。つまり、活動の原動力は男で治るまで補強します。赤み。つまりは、女性も少しずつ慣れていきます。そうすれば、性なんていう部分は問題でなくなるのではないでしょうか」
……少し思ってないことをでしゃばりすぎたかな。
あと、サン・チュありがとう。お前のおかげで客を元気にできたかもしれないよ。
「……!」
山崎さんは涙を堪え、唾を飲み込む。感動を覚えたような表示をしていた。
「ありがと……少しずつ慣れてみるから。もう大丈夫。あと会計お願いします!」
最後は元気そうな声でその顔は笑顔だった。なんだか、良い事をしたな……俺はそれに答えるように元気な声でこう叫んだ。
「ありがとうございました!! またのご来店お待ちしております!」
なんだかすごい嬉しかったな。人の笑顔を見れて……嬉しかった。こんな異世界も悪くないかもしれないな。
ありったけの感謝を伝えたいのに何故か帰ってこない俺を心配したのかサン・チュがここに来ていた。
「なによ、あんた低能のくせにやるじゃない」
「っせーぞ! でも、ありがとな」
「は? 嬉しくないし!」
俺はその後も受付を難なくこなして今日の仕事が終わった。
「今日はお疲れさん! 給料もその分あげとくからな」
「ありがとうございます!!」
その後、俺が疲れて眠りにつこうと布団に入っていると誰かが扉をノックしてきた。
トントン
うるさいなぁ。布団から出なきゃいけないし……こんな時間に誰だろう。
俺が扉を開けるとそこに立っていたのはサン・チュだった。
「トイレに行けない!!付いてきて!」
彼女は泣きつくように俺にすがってきた。
大人っぽくするのか子供っぽくするのか固定しろよ……低脳ってばかりにするくせには情けなさすぎるだろ。
ていうか、トイレのために起こしに来るとか普通の日常じゃないか!
俺は本音をサン・チュに真顔で伝える。
「いいけどさ。その齢でトイレに1人で行けないって……」
「っさい!!」
その後、俺はトイレに付き添き眠りについた。
コケヒッピー!!
また、鳴き声変わってるな!
俺はいつも通りに準備を済ませ店に出る。
「今日もよろ……」
「よろしくです! 先輩!」
――ついに俺にも後輩が!?
獲得スキル
愛想笑い
協調性
おトイレの付き添い
取得スキル
皿洗いの極意
カルビ名人
迷惑客の対処 愛想笑い 協調性
おトイレの付き添い
んースキルをうまく使いこなして書くのが難しい!