おためし彼氏
学校の都合で遅れました。
高校嫌や・・・。
憂鬱な午後の授業を終え、放課後へ突入。外からは部活の声が聞こえてくる。
胡桃がこんなにも憂鬱になっているのは、胡桃の視線の先にいる天津黎が憂鬱の元凶。
そして黎の周りにいるのは黎の彼女、瑞姫と瑞姫に付き添う蘭。
更には黎の幼馴染みである歌乃もいる。今は女子三人が黎のノートを見ながら勉強を教えている状況。
あまり学力が高くない黎はこうして放課後、学力のある三人に手伝ってもらっているのが黎の日課にもなっていた。
と、黎が立ち教室を出ていった。どうやら職員室にノートを提出しに行くようだ。
女子三人はそれを見送り、帰る準備に取りかかる。
(今なら黎が一人)
胸の中でそう呟いた胡桃は教室を出て、職員室に向かった。いつもより体が重いのは感じているが、それを振り切った。
胡桃のそんな心情を知らずにノートを職員室に運び終えた黎は部屋を出ると、胡桃が待ち構えるように立っていた。
何も理解していない黎は、気軽な感じで胡桃に話しかける。
「ん?胡桃、どうしたんだ?用事か?」
すると、胡桃は少し照れくさそうに言葉を発した。
「この町を案内してほしいなって思って、できれば二人きりで」
胡桃のその誘いに黎は、あっさりと承認し放課後、黎は胡桃に町を案内させる事となった。
そして、それを影から聞いていた瑞姫と蘭、歌乃は黎と胡桃を後ろから監視する形になった。
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やることを終えた黎は胡桃と学校を出て、雑貨屋に向かった。あらかじめ胡桃には行きたい店を聞いている、そしてその店を黎が案内する事になっている。
黎と胡桃の後をつける瑞姫達に気づく様子の無い二人は他愛も無い会話で盛り上がっていた。
胡桃もさっきまではテンションが低かったが、やはり思い人と話すと気分が晴れるのか、今は憂鬱な気分は消えていた。
「ここが、雑貨屋だな」
学校からさほど遠くない所にあるこの雑貨屋は黎の学校の生徒が良く使う雑貨屋でかなりの種類が置いてある事から女子生徒からは人気が高い店。
店に入ると胡桃は店に並んでいる物をキラキラとした目で眺めていた。
男子がここに来ることはほとんど無いが女子はこういうオシャレな物が好きな事に男である黎にはわからなかった。
「結構種類あるね」
「ここに来れば大体あると思うぞ」
「休みの日にじっくり見よう」
影から監視している瑞姫達が頬を膨らませて、ジト目で見ている事など知らない黎と胡桃はそのまま店を出て、次の場所へ向かった。