俺、召喚される
「やった!成功したわ!」
そんな声が聞こえ目を開けると、そこには毎日見ていた下校風景ではなく、まるでお姫様が住むような豪華な部屋が目の前に広がっていた。
「うぇ、なんだ?ここ」
あたりを見てみると、さっきの声の主らしき人を発見し、そして固まった。俺の目の前に立っていた人物が、今までに出会ったことのない程の美少女だったからだ。
光を発しているのかと錯覚してしまうほど、輝きを放つ金色の髪。目は澄んだ青で、街を歩けば誰もが振り返る容姿と言えるだろう。
そんな美しい女性が俺をじーっと見ている。な、なんだか照れるな。いったい彼女は俺を見てどんなことを考えて━━
「チェンジで」
「………え?」
「なんか思ってたのと違う」
チェンジ?なんとなく残念がられてる気がするんだけど、気のせいか?
ていうかちょっ待て。謎の光。知らないうちに変わってた視界。目の前に会ったことのない金髪美少女。これってもしかして異世界召喚って奴か!?ということはもしかして俺勇者に選ばれちゃった!?確信はないけど、この状況はどう見ても間違いないだろう!やっと俺にも普通じゃない人生が巡って来たぜ!!
「心配なされるなお嬢さん。俺が来たからには大船に乗ったつもりで━━」
「声まで普通とかホントダメね」
「………は?」
「で、貴方名前は?」
「あ、えと、華道院 麗慈といいます。いや、レイジ=カドウインになるのか?」
「なんで名前はちょっとかっこいいのよ。そこはありふれた名前でいなさいよ。ホントつまんないわね」
「…………」
え、何、これって異世界転移じゃないの?普通はもっと喜ばれたり、何かを懇願されたりするんじゃないの?なんていうか、その………
「なんか思ってたのと違う」
「こっちのセリフよ。さっきも言ったけど」
なんかまた文句言われてるけどとりあえず置いとこう。まずは状況確認だ。あまり聞きたくないが、目の前の金髪美少女に聞くしかない。
「あのー、付かぬ事をお聞きしますが、何故僕がここにいるか知っておられますか?」
「そんなの私が召喚魔法を使ったからに決まってるじゃない」
「つまり貴方が僕を呼び寄せたってことですよね?」
「貴方なんかお呼びじゃないわよ」
あれ〜?なんか話が噛み合わなんだけど。ていうかいちいち文句言わないと会話できないのかコイツ。
「なんで召喚魔法を使ったんですか?」
「私の旦那様を呼び寄せる為よ」
「そ、それってつまり俺━━」
「なわけないでしょ。思い上がりも甚だしいわ」
「なんでだよ!!!」
ついに俺は爆発した。
「お前が魔法使って俺を呼んだんだろ!?なのになんでこんな冷たい態度取られないといけないんだよ!!」
「そんなの私の期待を裏切ったからじゃない
」
「知るかよそんなもん!勝手すぎんだろ!」
「王族なんて勝手なものよ」
「自覚あんなら変えろよ!」
「嫌よ。だって私は第二王女ですもの(ドヤァ)」
「ドヤ顔やめろ!!」
お、落ち着け俺。話が脱線してる。 一旦冷静になって状況をまとめよう。
目の前の女は魔法を使って旦那となる男を呼び出したかった。そして呼び出されたのが俺。だが、俺が彼女の御めがねにかなわったようでボロクソに言われている………あれ?なんかさらにムカついてきたんだけど。
まぁつまりはだ。
「とっとと俺のいた世界に返してくれ。俺じゃ姫さんのご要望には添えないみたいだからな」
勇者召喚とか大それたものじゃないし、簡単に帰れるだろう。旦那が欲しいとかいうめちゃくちゃ個人的な理由だしな。
「そんなの言われるまでもないわ。すぐにクーリングオフするわよ」
「商品扱いしてんじゃねぇよ!」
ていうかこっちにもクーリングオフってあんの!?
「私は魔法の天才なのよ。クーリングオフなんてちゃちゃっと━━」
すると突然、金髪少女は俺にもたれかかってきた。
「おぅッ!?」
我ながら気持ち悪い声をあげてしまった。しかし性格が悪いとはいえ、見た目は美少女。俺の灰色の人生が色あせた瞬間だった。これだけでも異世界に来た甲斐があったぜ!しかもコイツなかなか着痩せするタイプ…………
「ん?」
金髪少女がなかなか動かない。そもそもなんで倒れてきたんだ?
「おい。そろそろ離れろって。色々当たってんぞ…………おい!起きろ!おい!!」
さっきまで俺をバカにしていた金髪少女は気を失っていた。